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グレート・ロックダウン中に不可欠な読書

ジッダ旧市街の人気のない通り。王国はコロナウイルス大流行の影響を最小化することを目指す改革を導入した。(AFP)
ジッダ旧市街の人気のない通り。王国はコロナウイルス大流行の影響を最小化することを目指す改革を導入した。(AFP)
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07 May 2020 02:05:06 GMT9
07 May 2020 02:05:06 GMT9

グレート・ロックダウン中にあなたは何を読んでいるだろうか?私はジョン・メイナード・ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』にもう一度挑戦している。

私は最初、本当に思い出したくもない何年も前の学部生だったころ、この分厚い学術書を読み進めるのに苦労した。それは深夜の読書にぴったりの本だった。なぜなら、この大物経済学者の著作物は平易な内容ではなかったからだ。たいてい数ページあれば、深い眠りにつくのに十分役立った。

しかし苦労して読み進めると十分な内容が頭に残り、学位の取得に役立った。最後のテストの問題の1つが次のようなものだった時の私の喜びを想像してみてほしい:「J.M.ケインズは一般理論によって経済学的思考にどのような革命をもたらしたか」

ケインズは一般的に、全く新しい考え方によって1930年代の世界大恐慌から世界を救ったことで高い評価を得てきた。人々、そして政府はその考え方を使って不況から抜け出すことができた。一般理論の最も記憶に残るただ1つの重要な点は、「乗数効果」だった。これは、政府が使う1ドル、または1リヤルは、経済に指数関数的な影響を与える可能性があるという考え方である。

1ドルの購買力は個人に生存・生活のための手段をもたらすが、その1ドルが使われる時、生産チェーンの他の全ての人々にも経済的な栄養をもたらす。一般理論によれば、労働者に賃金を払って地面に穴を掘らせ、埋め戻させることは、不況時には意味のあることだった。なぜなら彼らが後にその賃金を使うことで、価値のある経済的な行為となるからだ。

ケインズ以前の古典的な経済学者たちは、財政規律の考え方に執着していた。所有しているものだけを使うことができると彼らは言い、政府がはるか以前から戦争や限定的な公共事業のようなことに資金を出すためにお金を借りていて、返すのを忘れることすらあるという事実を都合よく無視していた。

ケインズの理論は全てを一変し、教育や医療サービス、不可欠な公共インフラなどのさまざまな分野の至るところで国が資金を拠出する時代の先導役を務めた。

話はフランクリン・D・ルーズベルトに飛ぶ。1930年代の大恐慌時代に米国大統領を務めたルーズベルトは、ケインズの初期の著書『繁栄の方法』から少しばかりのケインズ理論を学び、1936年に『一般理論』が出版された際にはその1冊が送られた。それが恐慌に対処するためのニューディール政策でルーズベルトが使った議論を裏付け、拡大した。

1930年代の終わり頃までには世界は不況から抜け出そうとしており、雇用と支出が再び増加し始めていた。しかし当時の国の歳出の多くが、時代が進むにつれますます避けられなくなっているように見えた世界大戦のための軍事支出に向けられていたことを無視すべきではない。

各国政府が経済を厳格な財政規律の硬直した枠組みの中で、市場の力の「見えざる手」に従う自己調整に任せることは、もう二度とないだろう。1970年代に新たな考え方のマネタリスト学派が現れたことでケインズ理論が時代遅れになった時でさえ、マクロ経済を管理するために開発されたこのツールを完全に諦める経済政策立案者は非常に少なかった。

世界的な金融危機の際にはケインズの手法が再び本格的に流行し、政府は「量的緩和」の形で危機にお金を投入した。これが今日もまだ続いており、2009年の不況後の回復期につながったことはほぼ間違いない。特に中国は景気拡大に対し積極的に支出し、主に米国の金融および不動産分野が引き起こした問題を解決した。

パンデミック危機においては、ほとんどの政府がケインズの取扱説明書に再び手を伸ばし、財政的手段と通貨的手段を組み合わせることで(IMFの名付けた)グレート・ロックダウンの経済的影響に対処した。

困難な時期を乗り切ろうとしている現実の企業に対する支援など、財政措置に重点を置く方法が最も効果的と見なされているが、通貨的手段を通して金融システムを支えることの重要性は過小評価されるべきではない。

米国の2兆ドルの「バズーカ砲」は一般理論の古典的な実例であり、G20諸国によるパンデミックに対処するための合計5兆ドルと推定される支出の一部だった。

パンデミックによってもたらされた困難な課題は前例のないものであるが、幸いなことに、それらの課題に対処するための十分に試行を重ねた方法が存在する。読書を楽しもう。

  • フランク・ケインはドバイに拠点を置く受賞歴のあるビジネスジャーナリストである。
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