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先週の石油価格下落の理由

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16 Jun 2020 06:06:12 GMT9
16 Jun 2020 06:06:12 GMT9

良いこともいつかは終わる。石油の反騰は、ウエスト・テキサス・インターミディエイトが一時マイナス価格に突入した4月の壊滅的な週から、先週の半ばまで続いた。6月5日、ブレントは短期的に1バレル$42を突破し、3月初旬以来の高値に達した。

石油輸出国機構(OPEC)加盟13ヶ国とロシアを筆頭とする同盟10ヶ国から成るOPEC+は、5月1日時点で970万バレル/日(bpd)の減産に合意することでその役割を果たした。そして減産が右肩下がりの軌道に戻る前に、7月も追加で減産を延長することを決めた。サウジアラビアとロシアは、イラクやナイジェリアなどの動きが遅い国から、減産を守るだけでなく、実行しなかった割当量を第3四半期中に埋め合わせることの約束も引き出すことに成功した。

水曜に$41.70に達したブレントは月曜の朝までに欧州で$37.40まで下落した。その後小幅反発し、欧州時間の日中に1バレル$38.60まで戻した。

経済の再開や旅行制限の緩和など、特に欧州においてファンダメンタルズはまだ強気サイドにある。弱気サイドに関しては、米エネルギー情報局によれば原油在庫が6月5日までの週に570万バレル増加し、戦略備蓄を除いて5億3,800万バレルに達した。これは記録的な量であり、10億バレルの世界的な過剰在庫と密接に関連する。同時に、リビヤの生産がどのような状況に向かうかをめぐっては見通しが不透明である。また、石油価格が上昇すれば、比較的コストのかかるシェール生産が意外に早く操業を開始するかもしれないという危険性についても懸念が残る。

より重要なこととして、石油取引は世界中の市場でリスク忌避のセンチメントへと歪んだ。米国の各指数は週の半ば以降に約7%下落し、コロナウイルス感染症(COVID-19)の第二波に対する懸念が市場の悲観的な見通しを後押ししている。カリフォルニアやテキサスでは感染例が増加した。中国では北京で新たな流行が確認され、インドでは感染が広がった。ブラジルでは急激なペースで新たな感染者が記録されている。

連邦準備制度のジェローム・パウエル議長は米国経済に関してどちらかというと悲観的な見通しを持っており、センチメントの改善には役立っていない。彼はV字回復ではなくU字回復を予測しており、失業率は今年末まで9%前後にとどまると見ている。

同時に彼は、パンデミックの遺産として経済に永久に残る傷について懸念していると述べ、低所得層や少数民族に関する雇用見通しの格差を強調した。

さらに、ジョージ・フロイトがミネソタ州の警官のせいで死亡してから20日以上も続く暴力的なデモ運動も、この世界最大の経済の公平な回復に対する自信を浸透させるにはほとんど役に立たなかった。市場の緊張感を測るよい手段である価格変動指数VIXは、6月9日~11日の間に27.6から42.9へ上昇した。

ところで、これらの数字は何を物語るのだろうか?1つは、我々がまだ森から抜け出していないということである。世界中で大量の過剰在庫が存在する限り、OPEC+やその他の全ての生産国の協力が必要となる。それでもなお、彼らの行動は均衡のための1つの要素に過ぎない。

多くは需要の回復にかかっている。現在の見通しはバラ色ではない。国際エネルギー機関とOPECの予測からは、2020年中に860~910万bpdの生産縮小が期待される。この2つの機関が月間報告を公表すれば、さらに多くのことが分かるだろう。

しかし結局のところ、需要は石油市場専門家や経済評論家の手の中にあるのではなく、現実の経済活動によって決定される。言い換えれば、全ては景気回復の形とスピード、およびCOVID-19の新たな波によって再びロックダウンを余儀なくされるかどうかに依存している。新たなロックダウンは経済に対する自信に極端な影響を与える可能性がある。最近BPの資産が175億ドルと評価されたことは、石油市場の長期的な見通しがいかに不透明であるかということの証明である。

唯一分かっているのは、それらのパラメータの可視性は限られているということである。そのため、供給サイドの行動が重要になる。供給が懸念されている限り、サウジのエネルギー大臣アブドゥル・アズィーズ・ビン・サルマン王子とロシアのエネルギー大臣アレクサンドル・ノヴァクが巧みに議長を務めるOPEC+共同閣僚監視委員会の今週の会合に、多くのことがかかっている。

  • コーネリア・マイヤーはビジネスコンサルタント、マクロエコノミスト、およびエネルギー専門家。Twitter: @MeyerResources
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