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イランの中国をめぐる賭けは悪い結果に終わるだろう

中国の王毅外相とイランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相。北京の釣魚台国賓館にて。2019年12月31日。(Reuters)
中国の王毅外相とイランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相。北京の釣魚台国賓館にて。2019年12月31日。(Reuters)
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19 Jul 2020 12:07:25 GMT9
19 Jul 2020 12:07:25 GMT9

アメリカの劇作家ウィルソン・マイズナーが、うまいこと述べている。「賭け事とは、何かを得ようとして何も得ないための、もっとも確実な方法だ」と。世界を驚かせたイランの中国との正式な提携が、現代における最大の戦略的賭けの1つになることは、ほぼ疑いがない。結局は、マイズナーが正しいことがまたも証明されるであろうことも、ほぼ確実だ。これは、イランに地政学的に何の利ももたらさない賭けである。

協定の実際の内容とその意味するところとを見る前に、中国・イランの協定をめぐってすでにわきおこっている、陳腐で危険な中道左派のウィルソン主義説明をやめることが、まず必要である。米国がイランとの核合意から離脱したことと、米国によって課された厳しい制裁のために、イランは中国との協定に追い込まれたのだと、外交政策にかかわる者の多くが言っている。イランには、他に選択肢がなかったのだ、と。

これは、現代世界のナンセンスの最悪の部類に属する。自分たちには責任のないひどい決断をすることを、第三者が誰かに強いた。これは、悪い親たちが、甘やかされた子どもについて言うことである。―彼らは、無理に悪いことをさせられた、だから彼らの責任ではない。制裁を解除させ国際社会に復帰するために、イランがすべきことは、中東における権力の戦略的バランスを変えようという、何十年にもわたる野望をあきらめることだけである。しかし、もちろん、イランがそうすることはないだろう。

実に、イラン政府は、核開発計画の開始とイエメン、シリア、イラクでのたびたびの軍事行動の両方を通じ、拡張主義的な地域外交を絶え間なく追求してきた。イランの指導者たちは、外交を重要視するが故に、拡張主義の炎を保つためには、終わりのない経済的苦難を国民に押しつけることをいとわないというのが、現実なのである。これは他の誰でもなく、イランのエリート層の責任である。

今、経済的に、そして外交的に窮地に追い込まれたイランは、まさに、地域の支配者となるという色あせた夢を追い続けるために、勝ち目のない手札をとり、中国を地域の戦略ゲームに完全に巻き込むという、一か八かの賭けに出たのである。

ニューヨーク・タイムズが入手した、7月11日に流出した最終的な協定案は、気が滅入るものである。まず第一に、イランは、中国に石油を割引価格で提供することに同意した。次に、中国は、イランの石油、ガス、石油化学施設の主要な開発者となる。第三に、中国は、金融、農業、インフラストラクチャー、電気通信市場において投資を行うことになっている。第四には、この2国は軍事的なつながりを大幅に強化する。この協定が成立するためには、イラン議会での合意がまだ必要だが、最高指導者のアリー・ハメネイはすでにこれに賛意を示している。

これらの全てをあわせると、この2大国の正式な同盟を意味するといっても言い過ぎではなかろう。どちらの国にとっても、このような同盟は初めてである。

この協定の影響は、政治的なリスクについて言えば、深刻である。まず第一に、イランに、動揺する経済を支える生命線を投げ与えた。この協定によって、イランは、25年間で4000億ドルの投資を中国から受けることになると見積もられている。次に、これは、イランの革命体制を孤立させようという、米国と地域での同盟国による今まで成功していた努力を損なう。第三に、共同軍事演習、調査や武器開発における協力強化、2国間の情報共有などを可能にし、イラン軍を増強する。そして、第四に、石油の75パーセントを海外から輸入している世界最大の原油輸入国である中国と、重大だが荒廃しつつあるイランのエネルギー産業とを、直接に結びつける。これらは、明らかに途方もない報酬である。もし、中国と同盟を組むというイランの賭けが本当にうまく行けばであるが。

イランは、勝ち目のない手札をとり、中国を地域の戦略ゲームに完全に巻き込むという、一か八かの賭けに出たのである。

ジョン・C. ハルズマン博士

しかし、この賭けには2つの大きな欠点がある。第1に、スリランカやパキスタンなどの諸国が経験したように、中国と事を進めるのは、マフィアと事を進めるようなものである。全てうまくいく、ただし、あなたが支払える限りは、である。さもなければ、中国は自分たちに支払われるべきだと感じるものをただ奪うだけである。スリランカの場合、予測できたことだが借金を返せなくなったとき、その代償は、主要な港であるハンバントタを中国に取られることだった。イラン政府の経済的な無能さの前科を考え、同じようなことをここでも探してみよう。中国はホルムズ海峡のすぐ近くのジャースクで、港湾施設に投資し、これを建設する見込みである。もしイランの支払いに滞りが出たら、この港も、中国がもつ世界中の港の一環に加えられるだけだろう。

最後に、国際関係において全ての行動は、いつでも同等の反発する動きを引き起こす。新しい同盟は、古い同盟の活性化を呼び起こす。過去数年間にわたり、イランに戦略的に打撃を与えるのに成功していることを考えると、米国と地域での同盟国が言いなりになるというのはなさそうだ。むしろ、中国・イラン協定は、アメリカ政府からは、その通りのものとして受けとられるだろう。つまり、この2大国はアメリカの敵であり、対抗する必要があることの確証として。イランの大きな賭けは、ほとんどの賭けと同じように、結局は失敗に終わる可能性が高い。

  • ジョン・C. ハルズマン博士 は、著名なグローバル・リスク・コンサルティング会社のJohn C. Hulsman Enterprisesの社長、経営パートナーである。彼は、ロンドン・シティの新聞City AMのシニアコラムニストでもある。連絡先はwww.chartwellspeakers.com.
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