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安定化に向かう世界の原油市場

(Reuters/File Photo)
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14 Aug 2020 05:08:04 GMT9
14 Aug 2020 05:08:04 GMT9

フランク・ケイン

OPECが世界の原油市場の今年の回復ペース見通しをわずかに引き下げたというニュースは、悲観論者を歓喜させたが、世界のエネルギー市場の予測に及ぼす影響はほとんどなさそうだ。

需要は急速に回復しており、(感染の再拡大や「第2波」がなければ)年末までにはほぼ通常の状態に近づき、経済活動が再開される来年にはさらに改善する見通しだ。時間のかかるプロセスではあるが、正しい方向に向かいつつあるのは確かだ。

OPECの月次報告は、2020年の需要見通しを日量906万バレル減と、前月時点の895万バレル減からわずかに下方修正したが、その差は丸め誤差のレベルにすぎない。

共同閣僚監視委員会(JMMC)の会合を来週に控えたOPEC諸国や非OPEC同盟国の生産量や思惑に影響を与える可能性は低い。

こうした会合は、4月に970万バレルという歴史的な減産が合意されて以降、非常に重要な役割を担うようになっている。米国のFRBや英国のイングランド銀行の月例会合と同様に、市場を評価し政策の実行に必要な調整を加える手段になっている。

JMMCは、わずか11万バレルの誤差よりもはるかに重要な数値によって安心感を与えられる可能性がある。米国の在庫が大きく減少していること、洋上待機の原油量の減少、およびアジアの需要の回復基調などが今年の原油市場の回復を真に決定する要因だが、これらの指標はすべて改善傾向にある。

世界の原油市場が安定化に向かっているということがメッセージであり、最も重要な要因が、サウジアラビアとロシアが主導するOPECプラスの動きだ。

フランク・ケイン

最近になって米国や欧州でその兆候が見られるように、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染がこの秋に再拡大した場合は、世界経済に再度の打撃が加わるリスクがあるというOPECの指摘はもっともだ。

しかし、各国首脳は春先に比べより状況を把握しているとみられ、経済活動全体が再び抑制される可能性は低いだろう。

国際エネルギー機関(IEA)の月次報告によると、最近の新型コロナの感染状況が第2波の到来を告げるものなのか、それとも単なる感染者の増減なのかは依然不透明だという。人類はコロナとの共存という新たなフェイズに入ったようだ。

エネルギー市場の一部のセクターはウイルス感染の影響をうけやすい。大きな比重を占めるガソリン市場はそのひとつだ。感染拡大がドライバーの消費に影響を与える可能性があり、州や地域によって感染状況が異なる米国では特に顕著だ。

需要面で大きく影響を受けるのは航空燃料分野も同様だ。IEAによると、航空旅行の見通しはさらに悪化し、7月の世界全体の飛行距離は前年比で67%減少したという。この分野でもコロナとの共存フェイズは、今後数か月、場合によっては数年先まで続くのかもしれない。

JMMCがより重視しているのが供給サイドであり、関連数値は明らかに改善している。米国エネルギー情報局は、2020年の世界全体の供給過剰量の見通しを日量108万バレルと、前回の170万バレルから大幅に上方修正している。4月の2000万バレル以上という数値からは比較にならないほどの改善だ。

世界の原油市場が安定化に向かっているということがメッセージであり、最も重要な要因が、サウジアラビアとロシアが主導するOPECプラスの動きだ。4月の大幅減産後、予定通り8月上旬から日量約100万バレルの増産が行われているが、この増産による市場価格への影響は限定的だ。ブレント原油は依然1バレル45ドルを上回っている。

OPECプラスの新しい目標生産量の合意順守率は全体で97%に達しており、過去に例がないレベルに達している。当初の目標を達成できなかったイラクやナイジェリアなどの国々までもが、目標生産量を順守することで得られるメリットを理解し、当初の過剰生産分を埋め合わせる詳細計画に合意している点は大きな意味を持つ。

*フランクケインは、ドバイを拠点とする受賞歴のあるビジネスジャーナリストです。 Twitter:@frankkanedubai

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