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レバノンの未来にヒズボラの出る幕はない

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19 Aug 2020 05:08:53 GMT9
19 Aug 2020 05:08:53 GMT9

私は本来この記事を書く立場ではない。私の父ラフィク・ハリリが書くべきものなのだ。父は首相としてレバノンを市民戦争の混乱の中から導き出し、国を再建した。しかし15年前、ヒズボラのテロリストらが彼を暗殺した。彼らは8月4日の大爆発が起きたベイルート港を管理する当人たちだ。

レバノン国民は再び想像を絶するような喪失感と絶望を味わっている。悲惨な死、痛ましいけが人、大爆発による街の全壊ぶりは全世界からの注目を集  めた。 

一体何が、どのようにして起きたのかを見極めるための独立的な調査を要求する人々に私が加わった時には、別の調査が終了しようとしている。8月18日(火)、レバノン特別裁判所が何年もの月日をかけた調査結果を発表し、私の父と21人の人々を殺害した2005年の爆弾テロの仕掛け人たちに対する判決を行った。

こうした出来事を合わせ考えれば、レバノンはヒズボラ無しで国を建て直していく必要があるということを一層強く痛感させられる。実際レバノンは、この腐敗したテロリスト組織による継続的な関与がある限り、国民が必要とするような国家には決してなり得ないだろう。

大爆発から1週間が経った今、レバノン市民は立ち上がって一つの共通する声を上げている。変化を要求しているのだ。失敗だらけで機能障害に陥っている現在の政治制度を非難し、軍の指揮官や汚職に満ちた有力者たち、無力で行動力のない政府、そしてそんな彼ら全員を好き勝手にさせている現行制度を糾弾している。さらに、ヒズボラがベイルートとレバノンの統治に果たしている役割を排除するよう要求している。テロリスト組織や軍部の親玉たちには国を起こすことなどできないのだ。彼らにできるのは国を破壊することだけだ。

現政権は本物の民主主義を求める人々をなだめすかそうと、議会選挙の前倒しをしようとしているが、国民を甘く見ているようだ。

レバノン経済の落ち込みはとどまるところを知らない。投資は皆無、食品価格は高騰、そして崩壊寸前の貨幣価値のために預貯金が水の泡と化している。コロナウィルスのパンデミックによる影響がそれに輪をかけ、レバノン国民は財政上・ 人道上の壊滅的状況の渦中にある。重要なのは、レバノンにおける宗教の中心的役割を考えた時、こうした世相観はいずれかの信仰や懺悔にのみ見られるものではないということだ。これは全てのレバノン人が日々直面している共通の問題なのだ。国民の抗議運動が、分裂した国家から一つの統一国家を形成する力を秘めた統一要因となっている。

ベイルート港での大爆発の前でさえ、多くの支持者を持つ一部の指導者たちが力を合わせて有害なる現政権を改革しようという意欲を示していたし、国の発展を促進するためにはレバノンは中東において中立的立場をとるべきだという共通の信念を抱いていた。これは前向きな第一歩であり、国民の声が一部の指導者たちには届き、尊重されていることを表している。 

我々はヒズボラと対峙し、彼らの継続的な破壊行為や不正と袂を別つ必要がある

バハー・ハリリ

レバノンの問題を解決する上で中核的な位置を占めている問題は、何十年にもわたる政治的裏操作を排斥することだ。それが派閥主義を温存し、対立関係を凝り固まらせているように見える。今こそレバノンは本物の民主主義国となって、議員党派の事前操作といった制度に終止符を打つ時だ。議員党派は単に宗教上のグループにのみ基づいており、レバノン国民にとって重要な問題とはなんの関係もない。新たな選挙法を制定することによってこの政治腐敗のサイクルが断ち切られ、再生された市民社会によって国民の声が確実に民主主義の発展に寄与するようになるはずだ。

レバノンが近代国家として再建する自信と信念をもって前進するなら、それこそが我々の進むべき道だと私は確信する。

簡単にはいかないだろう。私自身、全ての問いに対する答えを持っているとは言わない。しかし、「ヒズボラ無しの政府を作るなど、あまりにも厄介で無理な話だ」言う人々は間違っている。我々はヒズボラに対峙し、彼らの継続的な破壊行為や不正と袂を別つ必要がある。

我々だけの力ではこれは成し得ない。経済を復興し、国を変革するための新たな非派閥主義による民主的アプローチを行うには、レバノン国民は国際的な支援を必要とする。それには国際通貨基金との積極的な取引や、大爆発の責任を負う者たちへのさらなる制裁が必要であり、さらにレバノン臨時駐留国連軍(UNIFIL)の権限を拡大することで困難なプロセスにおける我が国の安定と安全を維持されることができる。改革に向けた国際社会からのこのような支援がなければ、レバノンは宗教と派閥闘争のはざまで身動きが取れなくなるリスクを抱えている。そうなれば中東の不安定状態に拍車をかけることとなり、いずれは完全に国際社会から見放されることになろう。

私は、レバノンを再び豊かで中立的な民主国家とするための純粋な憲法改革と国家の刷新について、国際社会からの支持を求める一方、世界中の人々に対して、ヒズボラとのいかなる関与も今後拒絶していくよう声を大にして訴えたいと思う。

レバノン国民は過去1週間にわたって、自分たちは平和と安定を望み必要としているのだということを示してきた。残る唯一の疑問は、国際社会が我々の変革に援助の手を差し延べてくれるかどうか、それともレバノン国民は再びヒズボラによる現行の腐敗した派閥主義のもとで苦しみ続けることになるのかどうか、ということだ。

  • バハー・ハリリ はレバノンのラフィク・ハリリ前首相の長男

 

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