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イラク政府は米国とイランの間の選択に迫られている —— 国民は既に選択済みだ

米国のドナルド・トランプ大統領は2020年8月20日にイラクのムスタファ・アル=カディミ首相を米国ワシントンのホワイトハウスの執務室に迎え入れた。(ロイター)
米国のドナルド・トランプ大統領は2020年8月20日にイラクのムスタファ・アル=カディミ首相を米国ワシントンのホワイトハウスの執務室に迎え入れた。(ロイター)
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27 Aug 2020 11:08:28 GMT9
27 Aug 2020 11:08:28 GMT9

米国がバグダッドに知って欲しいと望んでいる3つのことは次の通り。イランはワシントンが重きを置いている国であり、米国の存在に関してダーイシュの動きはバグダッドの動きよりも大きい。また、ホワイトハウスは、イランとダーイシュの両方をバグダッドを犠牲にして処理する態勢であり、バグダッドがテヘラン支持の姿勢を取り続けるならば、損害を与えてもよい態勢をとっている。

私はなぜイラクではなく、バグダッドの名を口にしているのだろうか。それは、バグダッドが他の国々とうまくいっていないからであり、権力の中心であり、さらには、国民の80%が、その腐敗と親テヘラン派態勢が新たな選挙によってなくなることを望んでいるからだ。自由で公正、よい頃合いの選挙 —— 今と同じだ。選挙はテヘランの同意とテヘランと結びつきのある政党の利益がなければ行われない予定である。イラク国民は選挙を要求している。

ムスタファ・アル=カディミ首相の先週の訪米では、両国から多数の約束事の申し出があった。約束するのは簡単だが、だからと言って、行き先が有望とは限らない。「期待の持てる」説明が意味するのは、ワシントンで明らかになったことの実現可能性が極めて高いということだ — しかし話の内容およびアル=カディミ首相が一時的に同意したことは、彼がイラク国民議会に納得させることのできないものだろう。同議会の主導権を握っているのはテヘラン支持派の軍服を着た民兵指導者なのだ。

ダーイシュとの戦いに注力するための約束が交わされた。米国の約束は以下の通りだ。イラクの自衛が可能になれば、米国はイラクから撤退する。イラク経済を支援する。イラク民兵の脅威とアル=カディミ首相が彼らを相手にする能力がないことについて少なくとも公の場では言及しない。

すべてはワシントンの社交辞令と決まりごとだったが、伝えていることは明らかだ —— イラクが米国との強力な絆によって恩恵を得ること、あるいは、バグダッドが引き続き何もしなければ、セキュリティの低下が続き、独立したポスト・ダーイシュ・イラクの様相を呈することになって、たちまち見捨てられるということだ。

テヘランにつながりのある民兵は優位に立っており、米国が撤退したイラク・シリア間の国境沿いにダーイシュが再び組織されている。民兵は米国がイラクに引き渡した基地を乗っ取っている。ワシントンのほとんどの分析家が、イラクはこれまでにないくらいによくなっていると主張しているが、これは、実際に注意を払っていなければ容易にできる主張だ。

米国はダーイシュがいるかぎり、また、民兵がその地域の脅威であり続ける限り、イラクにとどまるだろう。米国はスンニ派とクルド人の支援をより多く受けている地域に移動している —— バグダッドを信頼しておらず、イランの民兵と対立している地域だ。これはヌーリー・アリ=マーリキー氏とハディ・アル=アミリ氏が信じていることであり、民兵が信じていることであり、彼らが懸念すべきことである。バグダッドには選択肢がある —— イラクは米国、NATO、アラブの周辺国との絆が強ければ、シリアやイエメン、レバノンのようになり得るし、この地域屈指の最強の経済大国になり得るのだ。

セキュリティの低下は、米国がアル=カディミ首相の訪米中に提案した経済的インセンティブを不可能にするだろう。バグダッドに向けた効果的なメッセージは、「イランから手を引けばどうなるかを考えてみろ、バグダッドがしていることをイランに語らせることをやめなければ何を失うかを考えてみろ」というものだ。

米国企業はイラクで、同国をイランのエネルギーから遠ざけ、依存を強いるようなことをする態勢にある。これが現実になれば、米国レートの5倍の費用がかかる。これらの契約は単独で締結されているものではない。そのような契約が力添えとなって米国が動き、イランに対するスナップバック制裁を持ち出して、イラクがイランのガスや電気を使用することのできる免責事項を終わらせることになるだろう。

ここでもまたワイルドカード —— ダーイシュの復活とイランの民兵 —— がイラクへの国際的な投資を挫くことになりかねない。民兵とイラク治安部隊が提案された契約に重きを置いていないために、民兵が米国に関わる免責付きのものを何でも攻撃し、ダーイシュの小グループが以前に一掃された領土で活動している間は、提案された契約は実行されないだろう。

イラク政府は国民を民兵から保護することには関心がなく、米国やNATOの軍を民兵の攻撃から守る意思や能力がない。また、政府における民兵の敵対者を保護する能力もない。アル=カディミ首相はこれらの経済的事業に取り組む米国人をどのようにして民兵の武力から保護するのだろうか。民兵は、未だテヘランの下で動いているイラク政府から資金を提供され、装備を提供されているのだ。

ワシントンは、国連が来月、イランに対してスナップバック制裁を科すべきだと信じている。安全保障理事会の理事国の中で、イランが核協定に基づく義務を果たさない場合に、ひとつの常任理事国(この場合は米国)がスナップバック制裁を科そうとするのを止められる国はない。国際原子力機関はテヘランが協定に違反していると明言し、イランも協定に違反する意思を表明した。つまり、現実問題として、米国がスナップバック制裁の引き金を引くのを止める選択肢はないということだ。

スナップバックが意味するのは、2015年の核協定の結果として解除されていたすべての制裁をイランに科すというものである。つまり、イランにとってイラクがさらに重要になるということだ。また、バグダッドがパーリア体制との結びつきを断ち切らなければならなくなることも意味する。もはや免責はなく、カーブアウトはない。イラクの違反が罰せられないならば、米国が国連の取り決めや自ら科した制裁に違反するだろうからだ。

イラクは米国との強力な絆によって恩恵を得ることができるが、そうでなく、バグダッドが引き続き何もしない場合は、たちまち見捨てられる可能性がある。

マイケル・プリージェント

また、テヘランと結びつきのある民兵は、バグダッドが米国の第二の制裁の下に罰せられなければ、イラク政府から支払いを受けることができないということになる。さらに、テヘランに結びつきのある政党はイラクの国会にとどまることができなくなるという意味でもある。テヘランの政党や民兵が優位にあるイラクでは米国は事業ができない。それは深刻なことであり、現在機能しているすべてのものを変えている。

イランとバグダッド は、トランプ政権が終わるまで待つことができると考えているかもしれないが、スナップバック制裁は大統領選の前に実施され、両者に傷を負わせるだろう。テヘラン政権は来るべき痛みについての発言権がなく、一方、バグダッドはテヘランの支配力にもかかわらず、発言権がある。バグダッドがイランとの主従関係に距離を置くことを選択するなら、経済的影響を受けないだろう。この経済的影響は11月の米国大統領選に先立ち、政権に大きな打撃を与えることになる。バグダッドがイランを選ぶ場合、バグダッドの人々がこの中毒性の政権から離れることを主張しているにもかかわらず、生命線としてイラクを必要とし、イラクの運命を決定づけることになる。 これは抗議運動が武力革命になるまで続く。

マイケル・プリージェントは元情報部員で、ハドソン研究所上級研究員である。

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