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日本でベテラン議員が影から表へ

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20 Sep 2020 12:09:08 GMT9
20 Sep 2020 12:09:08 GMT9

日本の新たな首相に指名された菅義偉氏に関する世界的なメディアの報道の慌ただしさには共通の糸で繋がっているようにも見える。同氏はベテランの政治家で自分が脚光を浴びるよりも安倍晋三首相の陰に控えているのを好むと評されている。多くの場合、同国の政治階級は世襲的な固定化があり、脚光を浴びる立場の者も決まっている。菅氏は安倍内閣において首席補佐官や政府報道官に相当する役職である官房長官を務め、安倍内閣の8年間という史上最長の在任期間において公の顔となった。

同氏が自由民主党内で権力の頂点に登りつめたのは世襲によるものではなく、同氏の前任者である安倍首相自身も含めたほとんどの日本の政治エリートが元首相や大臣、国会議員の一族であることとは様相が異なる。世襲議員ではない人物が国会の頂点の座に着くのは同氏が約30年ぶりのことである。

マスコミとは闘う姿勢の関係ではあるのだが、菅氏は自身の「外様」なストーリーとたたき上げの経歴で自分の魅力を高めるとともに重点政策の一部、かなり内政に偏っているが、その事前説明を行うべくマスコミに働きかけている。やはり、公共投資の増額と財政緩和及び構造改革の組み合わの「アベノミクス」が比較的成功したとは言え、長きに渡る不況で傷ついた日本経済は、コロナウイルスの流行によるデフレの脅威に再びさらされているのだ。

さらに、安倍政権は10年に渡り低迷した成長から大いに必要とされたダイナミズムを国内に吹き込んだにもかかわらず、日本の人口高齢化という時計の針がすでに進んでいるもう一つの時限爆弾に手を付けることができていない。同国の20%以上が65歳を超えており、2030年までにはそれが1/3にまで上昇する可能性がある。人口構成は菅氏にとって懸案事項の一つであり、同氏もまた人口の40%近くが65歳を超える秋田県出身だ。

それゆえ菅氏の重点政策が、生産性向上、規制緩和、多額の補助金を受けている農業セクターへの競争原理の導入、通信業界への料金引き下げ圧力などといった同氏が過去に手掛けてきた仕事の延長線にあることは驚きに当たらない。同氏はまた、外国からの出稼ぎ労働者に門戸を開いたり観光客を増やすことを通じて国内消費を活性化したり労働生産性の低下を補うことに関心を示している。

最後に、地方銀行の統廃合推進とは別に、旧態依然とした官僚的な日本政府をデジタルな未来の世界に進化させることにも菅氏は強い意欲を示している。今年東京で開催予定だったオリンピックを断念せざるを得なくなったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するお粗末な初期対応によるところが大きい。

従って同氏のリーダーシップに対する最初のテストはパンデミックへの対応であろう。今のところ同国の一日あたりの感染者数は減少傾向にある。この維持はかなり簡単なことであり、もし菅氏が各省庁の間の連携を改善するという目標を達成できれば、減少傾向を加速させることも可能かもしれない。これは2021年にスケジュールが延期されたオリンピックの開催が世論に受け入れられれば成功したと言え、直後の総選挙への追い風となるだろう。

次期菅政権のメッセージを総括すると、リスクと前例のない課題をいくつも抱え不安定さを増している時代にあっては安定性と継続性が必要であり、派閥主義をなくしていくことで柔軟な対応ができるということだ。

ハフェド・アルガウェル

しかし、日本の中央銀行が景気減速の影響を軽減するために他国よりも多くのことをしているにも関わらず、アベノミクスを通じて成長を追い続けてきた経済が8%も縮小したということは菅氏にとって大きな頭痛の種となるだろう。日銀には打てる手があまり残されておらず、さらなる金利引き下げ、といっても既にマイナス金利なわけだが、そういった手段はいずれも有害無益になるのではないかというあからさまな懸念がある。

あくまでも量的・質的緩和を継続するということは、経済にとって大規模な景気刺激策が本当に必要となったときに施策の効果を限定的なものにしてしまうことになる。ますます継続が現実的でないことが明白になってきているアベノミクスをそれでも菅氏が続けるのか、それとも待望される経済改革に向けた別の道のりへと進むのかは、この手の課題次第だろう。

現状維持内閣 ― 安倍前首相の弟である岸信夫氏を防衛大臣に指名した点が唯一の目立った違い、と呼ばれる程にあくまでも安倍政権の政策を継続する意向を公言している中、そうした高い目標の達成を同氏がどのように望むのかは今後に注目だ。

批判的な人物は同氏の指名を、野党が無力であり自民党のリーダーシップが揺るがないと高をくくった党内のプレゼント交換だとして酷評している。他にも菅氏には、自民党内でどの派閥にも属していないため党内不和や対立状態に陥るのではないかと懸念がある。

確かに次期菅政権のメッセージを総括すると、リスクと前例のない課題をいくつも抱え不安定さを増している時代にあっては安定性と継続性が必要であり、派閥主義をなくしていくことで柔軟性を持たせることができるということだ。しかし国内の問題を別にしたとしても、米中関係でバランスに気を配らなければならないという微妙な舵取りが必要な立場にある。

新首相は外交政策にはあまり関心がないが、第二次世界大戦前に朝鮮半島で起きた残虐行為に対する補償を東京が拒否したことに対して高まっている韓国内の反日感情については率直な不快感をみせている。もし菅氏が多くのアナリストの期待通りの「安倍2.0」であるならば、北京との関係を悪化させることなく昔からの同盟国であるオーストラリア、インド、米国との関係を強化することに注力してきた安倍路線が継続されるとみて間違いないだろう。

日本はまだ中国本土に大きな関心を持っており、ほとんどの国がワシントンの要請に応じて、または単に自国の自己保存のために中国との関係を断ち切る可能性が高いであろうパンデミック後の世界で、北京に決定的な影響力を与えることになる。

安倍氏の弟の指名も気になる点だ。「敵国」領土にある発射場を攻撃可能な兵器を日本は購入・開発するべきかという自民党内の論争を根気よく続けていくという戦略的な動きなのかもしれない。国民の大半が反戦論者の日本にとっては異例ともいうべき大胆かつ攻撃的な一歩であるが、北朝鮮は依然として脅威であり、最近のワシントンと平壌の間の仲間意識でも東京は安心できてはいない。とは言え、岸氏は防衛関係をほとんど経験しておらず、同氏の起用は単に前任者とのつながりを維持するためだけの菅氏のやり方なのかもしれない。

菅氏は現首相の残りの任期を引き継ぐことになるので、当面の間はパンデミック対策のための応急処置や一時しのぎの手段以外に大きな政策転換が行われる可能性は低いと思われる。何十年にもわたる権謀術数の経験は、同氏が官房長官を務める上で確かに役にたっていた。

しかし権力の手綱を握ることは、自民党内の派閥争いを取りなすことや政府の首席報道官として前面に立つこととは全く別物だ。今や全ての視線が菅氏に向いていると言っても過言ではなく、同氏がいかに影の存在から抜け出しスポットライトの下で通用するか今後が注目だ。

ハフェド・アルガウェル氏はジョンホプキンス大学高等国際関係大学院外交政策研究所の非常任シニアフェローだ。同氏は国際経済コンサルタント企業Maxwell Stamp及び地政学リスクアドバイザリー企業Oxford Analyticaでもシニアアドバイザーを務めており、また、ワシントンDCの戦略アドバイザリーソリューション国際グループのメンバーでもある。同氏は世界銀行グループ取締役会のアドバイザーを務めた経歴も持つ。Twitter: @HafedAlGhwell

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