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強力な地域同盟こそ中東の平和と繁栄の鍵

アブダビ、アラブ首長国連邦、2019年1月3日。(ロイター)
アブダビ、アラブ首長国連邦、2019年1月3日。(ロイター)
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06 Nov 2020 09:11:50 GMT9
06 Nov 2020 09:11:50 GMT9

多くの人々は、中東は石油とエネルギーの供給のためにのみ重要であり、再生可能エネルギーの台頭と米国がエネルギーを自給自足するようになった事実を考えると、世界の舞台においてこの地域の重要性や意義は低下していると言う。しかし私の考えは異なる。

第一に、石油の時代はまだ終わっておらず、世界の人口が増え続けるにつれて、石油の需要は依然として存在するだろう。しかし、もっと重要なのは、広大な中東は世界にとって単なるエネルギー源では済まないということだ。実際、中東と湾岸地域は、他の国々にとって重要な多くの事柄の中心にある。たとえば、航空路から海路まで、グローバルな輸送ネットワークの交差点にあることが挙げられる。この地域は、資金の流れと人口移動の中心にある。また既に知られているように、多くの宗教的および文化的要因はこの地域の意義と重要性を増している。

これらすべての結果として、この地域は常に紛争の中心であり、世界的な影響力をめぐる戦いの場となっている。それにもかかわらず、米国と中国による大国間の競争から技術的大企業の出現へと、世界で大きな変化が起こっていることは否定できない。そのような大企業はAmazon、Alphabet、Facebookなどであり、データの管理を通じて経済的、社会的、政治決定に直接的な影響力と支配力を持っている。

コロナウイルス(COVID-19)の流行により、各国は今まで以上に緊急にこれらの構造変化と向き合っているようだ。この状況が続く中で、大中東には対立地帯であり続けるのではなく、これらの変化を制御し影響を与える歴史的な機会があると私は強く信じている。

実際、世界の安定に対するこの地域の重要性を考えると、この場所に安定を構築することが必要不可欠だ。特に、ミドルパワー(大国ではないが、ある程度の国際的影響力を持っている国)が統率力と協力を高めようとしているからである。

また、他の地域が繁栄を築き成長を遂げる一方で、私たちは紛争の火を消すために戦いながら、危機からまた別の危機に遭い続けている場合ではないことも明らかだ。大中東はもっと価値のある場所であり、新しい役割と新しい目標を目指すべきである。地政学的な安定が得られれば、中東が解き放たれる可能性は非常に高い。

中東の安定を実現するには、以下のような分野で多くの重要な進展が必要となる。まず、地域の共通の利益を保護できる、最先端の強力で安定した政治、安全保障、軍事基盤の構築。困難な地域紛争を解決するメカニズムを持ちつつ、外部からの干渉に対する抑止力としても機能する同盟。そして、アラブ諸国を超えて中央アジアから北アフリカまで、大中東の他の主要国を含む安全性を促進するインフラストラクチャだ。

シンクタンクは、この大中東構想がとるべき形の例としてNATOを提示している。それは地域の政治安全保障同盟の礎石となり、そのメンバー間の強力な相互関係とパートナーシップを促進する必要がある。したがって、それはアラブ諸国に限定すべきではなく、安定、協力、そして実りある相互関係を求める大中東のすべての国を含むべきだ。また、この地域の安定と繁栄を支援し、良好な国際的バランスの維持を支えようとするグローバルパートナーと協力することもできるだろう。

そのような機関を設立するための鍵は、創設の原則として、他国の内政に対する非介入的立場を受け入れるよう促すことだ。このインフラの目的は、他国の安全を脅かすことではなく、他国がどのように行動しようと、抑止を通じて地域の安定と安全を守ることでなければならない。

大中東同盟は、文化交流、貿易、国境を越えた投資の機会を生む強力な枠組みを提供するものでなければならない。

カレド・アボウ・ザー

目的の不明確さやメンバー間の分裂によって無意味あるいは無力になってしまった、以前の機関が犯した過ちや経験した問題から、この新しい同盟とインフラストラクチャは学ぶ必要がある。これは、アラブ諸国がある問題から次の問題へと関心を一致させては分岐させている時に、本質的に直面している問題である。

この地域で問題が起こると、それはいつも「アラブの問題」と言われる。私たちは世界中からこの地域への干渉を目の当たりにしているが、にもかかわらず混乱が勃発すると、自主性と提案が妨害された主要なアラブ諸国に責任が課せられる。これは、例えば、イスラエルとパレスチナの和平プロセスの場合だ。アラブ和平イニシアティブは、ハマスの援助を受けたイランによって破壊された。レバノンの場合、あらゆる解決策がテヘランの覇権的な考えによって妨げられている。そして今、リビアにおけるトルコへの干渉もそれに当てはまる。

これらの「干渉力」は分裂による恩恵を受けているため、このような地域的な意見の不一致を引き起こす。したがって、地域同盟を構築する上での主な難しさは、各参加国の利益の完璧な調整と、問題に対して提案された解決策についての完全な合意が要求されることにある。この摩擦は、EUやNATOなどの既存の国際機関で見られる。メンバーが共通の方針に同意できなくなった結果、他の国が不和を利用して行動することが依然として可能なため、彼らは同様の問題に直面している。

ある専門家は最近、トルコとイランがアラブ諸国やヨーロッパ、米国、さらには中国などの他の国際大国への信頼を失い、これがトルコとイランの行動を説明していると示唆した。しかし私は、これらの国々は派閥のイデオロギー的なビジョンに隠れた覇権の道たどることを選んだと信じているので、その考えには同意しない。彼らは、積極的な相互関係の構築を目指すのではなく、他国の情勢に干渉するという否定的な戦略を選択した。

米国とアラブ諸国からの多くのアプローチにもかかわらず、この二国は一貫して宥和政策を拒否し、覇権への集中を維持してきた。段階的緩和が繰り返し求められているにもかかわらず、常に同じ選択をしてきた。私の見解では、主な原因は強力な地域抑止力がないことだ。これは、私が説明したインフラストラクチャによって生み出されるものである。それでも、反対を主張するだけでは明るい未来を築くことはできないので、いかなる同盟もより広い目標とより大きなビジョンを持つべきである。私たちは何に賛成し、何を創り、何を守りたいのかを伝える必要がある。

大中東同盟は、文化交流、貿易、国境を越えた投資の機会を生む強力な枠組みを提供するものでなければならない。このような関係性を築き、それを守っていかない限り、この地域をより良いものに変えることはできない。

カレド・アボウ・ザーは、メディアおよびテクノロジー企業であるユーラビアのCEO。アルワタン・アルアラビの編集者でもある。

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