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中東のパワーバランスは不安定な状態が続く

シリア北東部にある、軍事基地に転用されているカーミシュリーの空港の中で歩哨に立つロシア部隊。(AFP通信/資料写真)
シリア北東部にある、軍事基地に転用されているカーミシュリーの空港の中で歩哨に立つロシア部隊。(AFP通信/資料写真)
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06 Apr 2020 09:04:13 GMT9
06 Apr 2020 09:04:13 GMT9

ヤサル・ヤキス

アメリカがシリアに留まるべきかどうかに関して、アメリカの政権内の勢力の隔たりは、解消していないようだ。今後しばらくは、このような状況が続くかもしれない。この不確実な状況に終止符が打たれれば、この地域の他の重要なプレイヤーが何をするのか、想像しやすくなるだろうが、11月のアメリカ大統領選挙までは、状況は引き続き流動的となるだろう。

現在の状況を示すものを考慮すると、ドナルド・トランプ大統領はシリア北東部については決断をしたようだ。彼はこの地域から撤退し、クルド人戦闘員にこの地域の油田を守る使命を与えることを決断している。従って、油田の問題も、クルド人の保護も、解決されたように思える。

シリア南東部の地域、タンフに関しては、アメリカ政府は恐らく部隊をここに引き続き駐留させるだろう。ここは、イランからバグダッドとダマスカスを経由してレバノンへと至るヒズボラの供給ルートだからだ。イラクにおいてアメリカが引き続き存在感を示し続けるのかどうかに関して不安が高まる中、アメリカ政府がこの回廊を通じた供給の流れを阻止できるかどうか、判断するのは難しい。過去には、この地域においてロシアとアメリカ軍の間で小規模な衝突が起きている。シリアでロシアとイランがあからさまな協力を行っているため、ロシアがどの程度アメリカの存在感をここから排除しようとするのかはわからないが、この地域におけるイランの利益を最終的に無視し、アメリカ政府と合意を結ぶ可能性はある。

イドリブでは、アメリカとロシアが共通の政策で合意する希望はほとんどない。この県に関して、アメリカは新たな姿勢を取っている。この地域のアルカイダと繋がりのある最大のテロ組織、タハリール・アル=シャームを公然とは非難しないという論法を利用し始めているのだ。この態度が変わらなければ、新しい政策に行き着くかもしれない:つまり、アメリカ政府がトルコを挑発してトルコとシリア間の衝突をエスカレートさせることになるかもしれない。これは同国とロシアの間の対立につながるだろう。

イドリブの新たな現象として、中国の関与がある。間接的であるとはいえ、中国政府は、シリアのトルキスタン・イスラム党(TIP)の存在感の高まりを受けて、衝突の当事者にならざるを得なくなった。これはパキスタンとアフガニスタンに拠点を置く組織の支部だ。シリアにおける戦闘員の数の推計は4,000人から7,000人程度だ。家族や子ども兵を含めれば、この数字ははるかに多くなる。同組織はジスル・アッシュグールの地域、そのほとんどが、ダーイシュの脅威から逃れたキリスト教徒やアラウィ―派の家族の空き家に住み着いている。この党の最終目標は、中国の新疆ウイグル自治区を中国政府の管理から解放する目的でここへと戻る前に、シリアで戦闘経験を積むことだ。

シリアにおけるアメリカ、ロシア、中国の間の競争の結果がどのようなものになるのかを判断するのは難しい。

ヤサル・ヤキス

中国はもちろん、同国に対するこのような直接的脅威に無関心な態度を続けるわけではないだろう。2017年には、中国はシリア政府と一緒に戦うために、シリアに部隊を派遣する予定だったと報じられた。中国は事態の展開を注視し、シリアを支援しているが、これはTIPの活動と、シリア政府が危機後の一帯一路構想の重要なパートナーになり得るという両方の理由によるものだ。さらに、中国は財政的にも、建設の専門知識の面においても、シリアの復興の最も重要な貢献国にもなりうる。

シリアにおけるアメリカ、ロシア、中国の間の競争の結果がどのようなものになるのかを判断するのは難しい。アメリカの国益は中国のものともロシアのものとも異なる。そのため、これらの2ヶ国は、シリアという舞台では、アメリカ政府とは激しく対立する可能性がある。

地中海東岸は、大きな海底油田とガスの埋蔵量が見つかったことで、競争が繰り広げられるまた別の地域となっている。ロシアは、シリアの海底油田の探査は恐らく同国の国営企業が行うことになるため、この競争のかなりの部分に関わることになるだろう。ロシア政府は地中海東岸のその他の沿岸国の探査にも興味を示している。このような介入は恐らく、西洋企業との協力または合弁事業の形で行われることになるだろう。

同様の競争はリビアの陸上・海底の石油やガスの埋蔵を巡っても発生するだろう。地中海東岸とは異なり、リビアでの競争は、同国で既に双方の勢力間で戦闘が発生しているので、代理戦争という形になるだろう。

トルコは、海事裁判管轄域で石油やガスの埋蔵が発見される可能性があるため、地中海東岸における交渉当事国になるかもしれない。しかし、シリアやリビア(ではなおさら)では、トルコにはゲームチェンジャーとしての役割を担うすべはないのだ。

*ヤサル・ヤキスはトルコの元外務大臣で与党公正発展党の結党時からの党員。ツイッター:@yakis_yasar

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