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リビアの暗黒状態に光明が射す

2021年2月5日、代表者たちがジュネーブ近郊で開催されたリビア政治対話フォーラムの会議において、新たな暫定政府を選出する投票に出席する。(AFP)
2021年2月5日、代表者たちがジュネーブ近郊で開催されたリビア政治対話フォーラムの会議において、新たな暫定政府を選出する投票に出席する。(AFP)
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07 Feb 2021 12:02:02 GMT9
07 Feb 2021 12:02:02 GMT9

リビアがカダフィ政権後の移行期における新たな段階に入った。ミスラタ出身の裕福なビジネスマン、アブドゥル・ハミド・ドベイバー(61)を暫定首相とする暫定統一政府の選出が行われたのだ。さらに、東リビア出身のムハンマド・ユネス・メンフィが3者連立大統領評議会の議長を務め、同評議会にはリビア南部のトゥアレグ族出身のムサ・アル=コニと、リビア西部のズワラ市出身のアブドゥラー・アル=ラフィも含まれている。

この動きは、激烈な市民戦争によって分断されている国家へ安定をもたらす大きな第一歩のように思われるが、そうは簡単にいかないかもしれない。

第一に、スイスにおける会談で75人のリビア人候補たちを招いてのフォーラムにより、これら4名が選出されたわけだが、得票数は極めて僅差であり、そのプロセスも和解調停の結果としてではなく、国連主導による選出プロセスによる決議であった。第二に、リビアの政情不安には何も変わるところがなく、様々な世界の列強国は、対立しあっている各派閥をそれぞれ今後も支援し続ける。第三に、評議会はリビアの国家協定を制定するのにたった21日間しか猶予がない。リビアの二大武装勢力、カリファ・ハフタル率いる東部政府とファイズ・アル=シラージュ率いる国民合意政府は、危なっかしい停戦状態の中で今なお睨み合いを続けている。

この状況を理解するには2011年までさかのぼる必要がある。その年、長年独裁制を引いていたムアンマル・カダフィが NATOを後ろ盾とする部隊によって退陣に追い込まれた。それ以来、アフリア最大の原油埋蔵量を誇るこの広大な多部族国家は、混乱と市民戦争に明け暮れて1日たりとも平和で穏やかな日を迎えたことがない。

すべての部族的、宗教的、軍事的派閥が互いに勢力争いをしてきた。2016年にバラク・オバマ元米国大統領は、カダフィ失墜後のこのような状況を回避すべくリビアの体制を整えておくのを怠ったことが、自身の任期における「最大の失敗」であったと認めている。

それはたしかにそうかもしれないが、日々そのツケを払わされているのはリビアの一般市民たちだ。国連の難民局によると、130万人の人々が人道上の援助を必要としており、20万人以上が自国内で住む家を失っており、4万3千人以上が国外亡命希望者として登録しているという。これらは公式調査のみの数字にすぎない。すべての難民が地中海を渡ってヨーロッパへ入ろうと必死になっており、それが欧州連合への圧力となっている。この現状は多大な人類の苦難であり、彼らは世界の列強国たちの地政学的な思惑に踊らされて行き場を失っているのだ。

ハフタルはロシア、エジプト、アラブ首長国連邦、ヨルダン、フランスから支援されており、一方アル=シラージュは国連、イタリア、トルコ、カタール、他欧米数カ国から支援されている。ロシアとトルコは傭兵を派遣し、他の諸国は武器を送っている。

すべての人々が停戦状態の継続を望んでおり、暫定統一政権が年末の大統領選挙を成功させることを願ってはいるものの、多くの障害が立ちはだかっている。

コーネリア・マイヤー

昨年10月以降、危うげながらも国連を仲介とする停戦が続いている。それによってリビアは石油タップの再開にこぎつけた。それ自体リビアにとっては良いことであったが、サウジアラビアとロシアを中心とする産油国同盟OPEC プラスが導入した厳しい産油体制に課題を投げかけることとなった。OPEC プラスはコロナウィルス危機の期間中、石油市場を再均衡させることが必要だった。しかし、リビアの困難を極める内情を鑑み、OPEC はリビアに対しては生産削減を免除した。

すべての人々が停戦状態の継続を望んでおり、暫定統一政権が年末の大統領選挙を成功させることを願ってはいるものの、多くの障害が立ちはだかっている。

まず、ハフタルとアル=シラージュが勢力を割譲する必要があるが、これは特にハフタルにとって難しいことになる可能性がある。ハフタルは軍の絶対的指導者としての自分の名声にこだわっているからだ。

次に、部族的および党派的な対立がいつまた再燃するかもしれない。2016年にダーイシュがスルトを来襲したこと、そして2018年と2019年にはテロリストらがトリポリやその他の地区を100回にわたって攻撃したことを誰も忘れることはできまい。ダーイシュはリビアから近隣のマリ、ニジェール、あるいはブルキナファソへ後退しているかもしれないが、ダーイシュも他の過激派グループもその活動を停止しているわけではなく、隙あらばリビア国内のあらゆる脆弱さにつけこむであろうことが予測される。

海外の列強国はしばらくの間はおとなしくしているかもしれない。カタールと他の湾岸諸国との和解は良い兆候であり、サウジアラビアや他の諸国がトルコと非公式の対話を行っているという事実も良い兆候だ。それでも、特にロシアとトルコにとっては、リビアは地域における影響力を示す上で極めて重要な意味を持つ。

ヨーロッパは幾つかの理由により、リビア国内に平和が訪れることを虎視眈々と待ち受けている。彼らはリビアの隣国であり、欧州連合は今なお移民の流入問題にやっきとなっている。移民の多くがリビア沿岸から地中海を越えてやって来ている。ヨーロッパはリビアの石油と天然ガスの輸出から恩恵を受けてもいるが、とりわけ石油については、ハフタル対シ ラージュのこう着状態が高まる中、生産中止となっているのだ。

世界は概ねリビアや他の北アフリカ諸国内の地政学的緊張関係が沈静化することを望んでいる。湾岸諸国以外の拡大中東地域は武力抗争が一触即発状態にある。炭化水素の輸出国および難民流入の源としてのリビアの重要性を加味すると、我々は皆、暫定大統領評議会と12月の大統領選挙が成功することを望んでいることに間違いない。また、リビア国民自身の窮状についても決して忘れないようにしたい。彼らには、ひたすら耐え忍ぶしかなかった過去10年よりもずっと平和で豊かな10年を迎える資格がある。

コーネリア・マイヤーは投資銀行と投資業界に30年の経験を持つ博士号レベルの経済学者。彼女はビジネスコンサルティングのメイヤーリソースの会長兼CEO を務める。ツイッター:@MeyerResources

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