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今や女性にも科学で公正な機会を保証する時

アブダビのカリファ大学である学生が、同大学の流体・低速空気力学実験室で実験を行う。(カリファ大学)
アブダビのカリファ大学である学生が、同大学の流体・低速空気力学実験室で実験を行う。(カリファ大学)
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26 Feb 2021 03:02:38 GMT9
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マハ・アキール

私が学校にいた時、重力、原子、相対性理論の重要性は把握しており、1つの科目として、物理学の重要性については十分承知していたが、それでも物理学は好きではなかった。その一方で、私は理科実験室でカエルを解剖したり、化学物質を混ぜ合わせたりして、生物や化学は楽しんでいた。また、数学、代数学、幾何学も得意だった。

ある時、私は科学分野の研究を目指すか、父が望んでいたように、医師になろうかと考えていたが、血を見ても動じてはならない医学の分野は、耐えられそうにないと思った。そして、科学か数学のどちらかで学位を取得した親族の女性たちは、女性の雇用機会が限られているために、卒業後に教員なったり、仕事に就かないで自宅にいたりしていた。また多くの女性たちも結婚や出産の後、医学部を中退したり、その他の科学分野の研究を離れたり、例えこうした仕事に就いていたとしても、離職したりしていた。全体的に見れば、人文科学、ビジネス、芸術の分野と比較して、科学分野に進む女性たちの数は少ない。

しかし、この10年の間に、薬学や医学に加えて、コンピューター・サイエンスや工学分野の大学がたくさん開設されたので、女性たちにとって状況はずいぶん変わってきている。とりわけ、女性のエンパワーメントとジェンダーの平等を、主要目標の1つとして挙げているサウジビジョン2030により、女性の雇用機会も増えている。

しかし、世界中の女性たちが、科学・技術・工学・数学(STEM)分野の教育を受け、キャリアに就いている間に、多くの障壁にまだ直面している。

2月11日、私たちは科学における女性と女児の国際デーを迎えた。以前の年とは異なり、今回私たちは生活の中で、科学や医学が果たしている重要な役割を直に感じることになった。新型コロナウイルスのパンデミックが発生したことにより、科学者や医療従事者はこのウイルスと闘い、ウイルスに関する私たちの知識を向上させ、ウイルスに対する検査やワクチン接種の技術を開発し、その間にもずっと感染者を治療し、看護しているのだ。そして、女性の科学者や医師は、こうした取り組みの最前線にいる。ファイザー社とBioNTech社のワクチンを開発したのは、ある科学者夫婦のチームだった。

そうは言うものの、新型コロナウイルスが女性たちの家庭生活や雇用に悪影響を与えているのと同じくらい、コロナは女性科学者に、とりわけキャリアの浅い段階の女性科学者たちにも多大な悪影響を及ぼしている。ユネスコ(UNESCO)によると、コロナは科学分野における既存のジェンダー・ギャップを拡大させる原因となり、科学界の体制に潜むジェンダー格差を明らかにするだろうという。現在、世界中の研究者のうち、女性研究者は30パーセント未満だ。

2014年から2016年までのUNESCOのデータによると、高等教育を受けている全世界の女子学生のうちで、STEM関連分野を専攻しているのは、わずか35パーセントにすぎないという。世界的に言っても、女子学生の学位課程への登録者率は、とりわけ情報通信技術(3パーセント)、自然科学、数学、統計学(5パーセント)、工学、生産工学、建設工学(8パーセント)で低くなっている。

UNESCOが科学における女性と女児を支援するために、新たなポリシー、イニシアティブ、メカニズムを求めている。そうするためには、STEM分野でキャリア追求する女性たちを阻む要因を、私たちは理解する必要がある。こうした要因の中には、性差別、社会通念、女児が受ける教育の質に影響を与えるような誤った大人の期待、女児に学ばせている学科などが挙げられる。とりわけSTEM分野でのキャリアが、成長や持続可能な開発をはじめとし、イノベーションやソーシャル・ウェル・ビーイングを促進する「将来有望な仕事」とよく言われるようになっている時代に、このようなジェンダー格差は、あらゆる国々で深刻な問題だ。コンピュータや小型機器を使う私たちの日常生活や活動に加えて、食料安全保障、気候変動、クリーンエネルギー、医療、水、衛生の問題に対処する折、科学者たちが主要な役割を果たすことになる。STEM教育とそのキャリアに参画し、この分野に参画し続けるように、女児や女性たちを促すことは必要不可欠なのだ。

統計値によると、STEM分野の学位課程に登録する女子学生の人数は徐々に増加しているが、だからといって、高レベルでの決定や意思決定をする役割の中で、女性の存在感が増しているようにはなっていないことが明らかになっている。最近の調査によると、STEM分野で博士号を取得した学生のうち、41パーセントが女性だという。このような女性たちの中で、大学で終身在職権を持つ女性は、わずか28パーセントしかいない。女性研究者たちが占めている割合に比例しないこうした比率の低さは、地域的・国家的レベルでも存在する。中央・東ヨーロッパ、アラブ世界、ラテンアメリカ・カリブ海、中央アジアのような地域で、研究者のうちの39パーセントから48.5パーセントは、女性が占めている。北アメリカ、西ヨーロッパ、サハラ以南のアフリカ、太平洋、東南アジアで、この比率は23.1パーセントから32.9パーセントとなっている。

面白いことに、多くのアラブ・イスラム教諸国は、スイス、ドイツ、イギリス、ノルウェーのような北の先進国、グローバル・ノースの多くの欧米諸国よりもはるかに上手くいっている。これは大いに勇気を与え、安心させられることであり、女性への教育投資が、社会経済の変質という点で、大きな効果を生じさせられるということだ。

UNESCOによると、アラブ諸国ではSTEM分野の学部卒業生の57パーセントが女性だという。女性たちは自然科学、医学、歯科学、薬学の分野で、ヨルダン人学生の64パーセントを占めており、湾岸諸国では工学部の学生の60パーセント(これと比較すると、アメリカとヨーロッパでは、わずか30パーセント)を占めている。このような数字に関わらず、STEM分野の学部卒業生が、高度な技能を有する労働力や、高いベルの意思決定者になる機会は、女性がドロップアウトせざるを得ないさまざまな原因により損なわれることになる。アラブ諸国では、科学者の中で女性が占める平均比率は17パーセントとなっている。このような高等教育と学究的環境の根強い問題は、「水漏れパイプ」と呼ばれている。この言葉は、自らの教育とキャリアの階段を上がっている間に、能力のある女性たちが科学研究ら去ってしまい、その数は同様に去って行く男性たちの数よりも割合的にかなり高く、不均衡が生じていることを示す言葉だ。全世界的に、情報技術産業の管理者の中で、女性はわずか16パーセントだけであり、CEOとなると3パーセントで、最高財政責任者は20パーセントだ。

イスラム協力機構(OIC)が昨年開催したあるウェビナーに参加した専門家たちによると、この女性たちのドロップアウト率には、さまざまな理由があり、ワーク・ライフ・バランスに関する葛藤、同僚との好ましくない敵対的環境、ジェンダーによる差別、とりわけ自分の専門分野の仕事で、キャリアアップを図れる機会が比較的少ないこと、そして、ロールモデルや信頼のおける相談相手が存在しないことなどだという。

STEM教育とそのキャリアに参画し、この分野に参画し続けるように女児や女性たちを促すことは必要不可欠なのだ。

マハ・アキール

OICウェビナーの参加者たちは、国の政策を強化し、質の高いインクルーシブ教育に投資し、経済成長戦略の原動力として、科学、技術、イノベーションの大きな可能性に投資することで、女児と女性がSTEM分野の教育に参画するように促すことを推奨した。参加者たちはまた、女児たちに対して、STEM分野の重要性に対する適応度や認識度を高め、社会の主流から取り残されたり、不利な条件に置かれたりしている女児や女性たちに、訓練プログラムを実施し、彼女たちが就くことが可能なさまざまな職業やプロジェクトに組み入れていくことも推奨していた。また、この分野で功績を立てた女性に光を当て、昇進させ、報酬を与えることも大切だ。この結果として、OICはウェブサイトとソーシャルメディアで、加盟国内の女性科学者を称賛するプラットフォームを先週立ち上げました。

恐らく私にもっと勇気と支援があって、STEM分野で学ぶことの将来性を認識しているならば、私は違うキャリアを進んでいただろうに。

  • マハ・アキールは、ジェッダを拠点としたジャーナリストです。Twitter: @MahaAkeel1
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