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アウン大統領・ナスララ師・バジル氏こそレバノンから出ていくべきだ

首都ベイルートの東、バーブダにある大統領官邸にて、テレビインタビューに応じるレバノンのミシェル・アウン大統領。(ファイル / AFP通信)
首都ベイルートの東、バーブダにある大統領官邸にて、テレビインタビューに応じるレバノンのミシェル・アウン大統領。(ファイル / AFP通信)
バリア・アラマディン
18 Nov 2019 03:11:54 GMT9

先週のミシェル・アウン大統領へのインタビューからすると、現状認識が全くできておらず救いようがない。終いにはレバノンの惨めな現状に不満を抱く国民すべてに対し「国外移住すればよい」という恥知らずなセリフを吐いたのだ。このため国民の大統領に対する怒りが爆発した。反政府抗議活動開始からひと月となるが、週ごとにその勢い・エネルギー・士気は高まっている。

モハメド・サファディ前財務大臣に次期政権の組閣が任されたが、レバノンの宗派別のポスト割り当て制度に起因する、外国の操り人形的体質が消えたと思う者は誰もいなかった(結局サファディ前財務大臣は新首相就任を辞退した)。75歳の元財務大臣は腐敗した政治エリートの最たる例だと非難する声が、抗議デモで上がった。「モハメド・サファディを新首相に選ぶとは、政治家たちが思考停止している証拠です」とあるデモ参加者が述べた。

現在の危機を解決するには、スンニ派から首相を選ぶという選択肢はあり得ない。宗派ごとにポストを割り当てるというシステムは芯まで腐っており、完全に廃止しなければならない。サード・ハリリ前首相は民衆の怒りの大きさを理解できる数少ない政治家の一人だ。だからテクノクラートだけで組閣された場合のみ協力すると断言している。ハリリ前首相は国民的な合意形成と治安回復を実現すべく尽力した。しかし結局は深い傷に絆創膏を当てる程度の効果しかなかった。

2005年に亡命先のフランスから帰国し安易にシリア・イランの手先と和解した後、アウンは大統領としてヒズボラが支配するレバノン政府の一員となり、イランの覇権にキリスト教徒が対抗する場を設けるという点では成功した。

84歳のアウン大統領は、レバノンの現状を全く把握できていない。アウン大統領の義理の息子ゲブラン・バジル氏は、政府をまとめ反政府活動の勢いを弱める黒幕の役割を果たしている。伝えられるところによるとヒズボラ指導者のハッサン・ナスララ師と面会し、アウン大統領から自分に権力を移譲する下準備さえも行っていたようだ。

しかし、バジル氏はアウン大統領以上に嫌われている。この記事では書けないほど侮辱的なシュプレヒコールがデモ隊から浴びせられていたのがその証拠だ。以前「自由愛国運動」を支持していたキリスト教徒の間ですら、イランがレバノンを乗っ取るのにアウン大統領とバジル氏が手を貸したという認識がある。

今週末イラン全土で、ガソリン価格急騰や依然として続くイラクへの内政干渉に対するうっぷんの爆発により突然抗議活動が始まったが、ナスララ師はこの点を重く受け止めた方がよい。将来的にイランが崩壊したらナスララ師の権力基盤は消えてしまうのだ。最近までヒズボラは盤石だと思われていた。しかし大規模抗議活動が毎日続くなか、ナスララ師は新たな現実に適応せざるを得ない状況へと追い込まれている。

少数の権力者と外国勢力が甘い汁を吸う政治体制が故に、一般国民の声は完全に無視されてきた。

バリア・アラムディン

すでにイランの反政府デモには、レバノンやイラクの抗議活動との共通点が多く見られる。元々は経済的不満が原因だったのが、急速に「独裁者の死」を求める声に変わりつつある。イラクやレバノンの抗議活動家同士が直接連絡を取ろうとしているのを見ると、市民側が共有するする怒りを活用する方法が見えてくる。嫌われ者のイスラム宗教指導者「アヤトラ」たちが牛耳る政治体制に終止符を打つことを、彼らは最終的には目指している。

レバノンでは宗派割り当てと派閥争いにより各コミュニティー間の対立があおられ、フランス・アメリカ・中東諸国といった外国勢力が手先を使って国を操るようになった。しかしシリアやイラクの場合と同様、レバノンにおけるアラブ諸国の影響力は近年完全に弱まっている。

外国勢力の中でも一番目立つのは、ヒズボラという手先を使ってレバノンを完全に掌握し、同時にアウン大統領のような操り人形に政治体制全体を牛耳らせたイラン政府の動きだ。各宗派に政治権力を配分しバランスを取る政治体制だったのが、少数の権力者と外国勢力が甘い汁を吸う結果へと至り、一般人の声は完全に無視されている。アウン大統領とバジル氏の関係はレバノン政治の封建的体質をさらに彷彿とさせるものがある。内戦が起こる前からずっと少数の同じ一族が権力を独占しているのだ。誰が見てもこの状態は民主主義ではない。

内戦によりレバノン人の国民意識は打ち砕かれた。ここ最近の抗議活動では、レバノン国民としての団結・宗派割り当て制度の廃止・国家主権の回復を求める声が大きくなっている。

今回の反政府抗議活動で初の犠牲者となったアラア・アブ・ファクル氏が死後、レバノンの国民意識の象徴となった。ファクル氏の顔が大きな壁のある場所やSNSでくまなく見られるようになった。さらに彼が住んでいた地域の学校とベイルート・アメリカン大学が、残された子供たちに無償で教育を提供すると宣言している。

イラン、レバノン、イラクのいずれにおいても、国民の投票結果が内閣の組閣や政策にきちんと反映される仕組みにならなければ、民主主義など成立しない。宗派ごとに分断されたり外国勢力に操られるのではなく、国民の主たる忠誠心と帰属意識が祖国全体に向かなければ、国民国家など成立しない。

独立したテクノクラートを閣僚に指名することに対するアウン大統領の「どこにそんな人がいますかね?月にいるとでも?」というふざけた返答は、経験豊富で学歴があり愛国心を持つ人材の宝庫に対する大統領の偏狭な無関心を表すものだ。腐敗した政治エリートたちが退陣した後、レバノンを導くのはテクノクラートたちだからだ。

レバノンでは長期に渡り慢性的に危機が続き縁故主義が幅を利かせてきたため、最良の人材が不安定で根無し草的な国外脱出という手段を取らざるを得ない状態が続いている。これから権力を握る者たちは愛国心の強い国民を軽視し国外移住を促すのではなく、最高度の人材がエネルギー・富・専門的知識を祖国に投げ打とうと思えるだけのインセンティブを与えるべきなのだ。

抗議活動参加者たちが勇気を持って信念を固持し最後まであきらめなければ、私利私欲ではなくレバノン全体の幸福を追求する新しい指導者たちが誕生する。この条件が満たされた場合、レバノンは素晴らしい国になる可能性がある。

ナスララ師、アウン大統領、バシル氏などがこういった国民の声を疎ましく思うのであれば、好きな所に移住すればよい。

  • バリア・アラムディンは、受賞歴のあるジャーナリスト兼アナウンサーで中東と英国の放送局で働いている。「メディア・サービス・シンジケート」で編集を担当し、多数の国家元首に対するインタビュー経験あり。
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