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作家がイスラエルをボイコット、パレスチナに対する文化的ジェノサイドに対し

サリー・ルーニー氏、カリフォルニア州パサデナ、2020年1月17日。(Getty Images)
サリー・ルーニー氏、カリフォルニア州パサデナ、2020年1月17日。(Getty Images)
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19 Oct 2021 08:10:24 GMT9
19 Oct 2021 08:10:24 GMT9

数々の賞を受賞したアイルランドの作家、サリー・ルーニー氏が「イスラエルの出版社には、私のベストセラー小説『Beautiful World, Where Are You(美しい世界、あなたはどこ?)』の翻訳権を売りません」と宣言した後、SNS上で親イスラエル派ユーザーたちが、すぐさま攻撃を開始した。

当然ながら非難のコメントには、イスラエルを公然と非難したり、抑圧されたパレスチナ人への共感を示したりする人々に対して向けられる、典型的な悪口が含まれていた。

ルーニー氏の称賛に値する行動は「人種差別」または「反ユダヤ主義」とは全く無縁のものだった。というより、パレスチナ人によるイスラエルへの「ボイコット、投資撤収、制裁」運動(BDS運動)への支持表明と見なされた。BDS運動を支援する動きは、植民地主義や人種差別に反対する、政治的言論に端を発するものだ。

イスラエル政府と密接な関係があるモーダン出版から著書を出版しないと決めたのは、倫理的に許されないと判断したからだ、とルーニー氏は明言している。

10月12日の声明で「アパルトヘイトに明確に反対せず、国連が規定したパレスチナ人の権利を擁護しないイスラエルの企業と新たな契約を交わすのは、現状では間違っていると強く思います」とルーニー氏は述べた。

実際、ルーニー氏が問題にしているのはヘブライ語そのものではない。「私の新作小説のヘブライ語への翻訳権は、まだ販売可能です。BDS運動の組織的ボイコット指針に沿った形で翻訳権を販売する方法があれば、喜んで堂々とお売りします」と述べている。

イスラエルの各種法人、特にパレスチナの軍事占領を直接支援し恩恵を受けている組織と、いかなる形でも文化的関係を持つことを倫理的な観点から拒んだのは、ルーニー氏が最初ではない。ルーニー氏のスタンスは、他の知識人・ミュージシャン・芸能人・作家・科学者たちが取った立場と同じようなものだ。イスラエルと関わりを持たない文化人の数は増加の一途をたどっており、ロジャー・ウォーターズ、アリス・ウォーカー、故スティーブン・ホーキング各氏などがいる。

BDS運動はこの点を明確にしており、共同創設者のオマール・バルグーティ氏は「パレスチナによるボイコットの対象は、各種法人のみを対象としています。これらの団体はイスラエル政府による、国際法違反やパレスチナ人の権利侵害を、計画・正当化・ごまかし・永続させることに深く関与しているからです」と述べている。

もちろん、まだ納得していない人々もいる。BDS運動を批判する面々は、反ユダヤ主義と、人種差別やアパルトヘイトの経済的・政治的・文化的な温床そのものを弱め孤立化させることを意図した正当な政治的言論を、意図的に混同させているからだ。反シオニズムの立場をとるユダヤ人が数多く、BDS運動をサポートし支援しているという事実があるのに、批判する面々は自らの誤った論理を再考しようとしない。

ルーニー氏に対する「最も礼儀正しい」非難の1つを、ギティット・レヴィパズ氏が執筆し、アメリカのオンラインメディア「ザ・フォワード」が掲載した。控えめに言っても、レヴィパズ氏の論理は不可解だ。同氏は、ルーニー氏が自著のヘブライ語への翻訳を拒否することで「国籍を理由として、特定の読者層を」を排除したと示唆した。

政治倫理と国籍を混同するという罪を犯しているが、これはレヴィパズ氏だけの話ではない。イスラエルのシオニストたちは、当然ながら同じことをしている。シオニストのイデオロギー、ユダヤ教、そしてこの場合ヘブライ語は、同じ意味で使われることが多い。結果として、シオニズムは現代に作られたイデオロギーなのに、「反ユダヤ主義」の定義には反シオニズムが含まれるかのように拡大解釈されてきている。イスラエルは自国をユダヤ人とシオニストの国家と定義しているので、イスラエルの政策に対する批判が反ユダヤ主義と評されることは多い。

この論争の最も興味深い側面の1つに、1948年の建国以来、イスラエル政府がヘブライ語を、抑圧するための言語として使用していることがある。パレスチナ人からすると、パレスチナのどこであれ、文化・文学・社会的共存などを語り合うのに、ヘブライ語を使うことは稀だ。

代わりに、境界封鎖や家屋の破壊などのイスラエル軍による軍令のすべて、軍事法廷での審問手続きはもちろん、サッカースタジアムで流れる人種差別的な反パレスチナの歌ですら、ヘブライ語が使われている。パレスチナ人が現代ヘブライ語を、多様性を認める、あるいは無害な、日常のコミュニケーション方法の1つと見なさない場合、パレスチナ人にはヘブライ語の使用を免除しなければならない。

BDS運動を批判する面々は、反ユダヤ主義と、人種差別やアパルトヘイトの経済的・政治的・文化的な温床そのものを弱め孤立化させることを意図した正当な政治的言論を、意図的に混同させている。

ラムジー・バロウド

こういったヘブライ語に対する認識は、日々の経験による結果だけではない。歴代のイスラエル政府は、アラビア語の地位を低下させヘブライ語の地位を向上させる法律を、何年にもわたって成立させている。70年以上の間、文化と言語の抹殺と共にパレスチナ人の民族浄化が進んでいる。歴史的な町・村・通りのアラビア語名称のヘブライ語化から、古代パレスチナの墓地・オリーブ園・モスク・教会の破壊にまで至っている。イスラエルの最重要政治課題の1つに、パレスチナの文化破壊がある。

2018年にユダヤ人国家法が制定され、ヘブライ語はイスラエルの公用語に昇格し、アラビア語は「特別な地位」に格下げされた。パレスチナ人を政治のみならず文化的にも支配することを唯一の目的とした、過酷で中央集権的なイスラエル政府の作戦の集大成だった。

これらすべてを考慮すると、イスラエルの代弁者たちの偽善は疑いの余地がない。親イスラエル論者たちは、イスラエルがパレスチナ人の文化や言語を破壊・葬り去ろうとすると、歓迎するか少なくとも沈黙する。しかし、象徴的な行動とはいえ、著名な作家や芸能人が占領されて虐げられているパレスチナ人と連帯しようとすると、非難の声を上げる。

パレスチナのBDS運動は道義的使命を自覚しているため、イスラエル政府や公的機関の戦術を真似ることはできない。BDS運動は、世界中の民族にパレスチナ人に対する道義的責任を訴えることにより、イスラエル政府に圧力をかけることを目的としている。

BDS運動は、イスラエル人個人を対象としたものではない。いかなる状況においても、ユダヤ人だからヘブライ語だからという理由だけで、ユダヤ人個人をボイコット対象とすることはない。一方で、イスラエル政府は相変わらずパレスチナ人を民族として標的にし、パレスチナ人の言語を格下げし、制度を解体し、文化を組織的に破壊している。当然ながら、イスラエル政府の行為は文化的ジェノサイドと言われており、これを阻止することが人類の道義的責任である。

  • ラムジー・バロード氏は、20年以上に渡り中東に関する執筆活動を続けている。執筆するコラムは国際的に同時配給され、メディア・コンサルタントを務める。複数の著書があり、PalestineChronicle.comを創設した。Twitter:@RamzyBaroud
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