
日曜日に発生したイラクのムスタファ・アル・カディミ首相の暗殺未遂事件は遺憾であり、容認できないことであるが……完全に予測可能なことであった。
10月の国会選挙でのイラン系の民兵組織や政党の大局的な敗北以来、テヘランの工作員がいつも通りに反応することは明らかだった。つまり投票で勝てなかった相手を殺そうとするということである。
イランやその密告者を暗殺未遂で有罪にできる「動かぬ証拠」はまだないが、この地を転覆させるためにイランが作り上げてきた鋳型から出てきたものであることは明白である。「アルマゲドン」という考えに従わない者や、イラン政府の宗教的傭兵にこびへつらおうとしない者は誰であれ、抹殺の対象としてマークされる。カディミ氏の命が狙われる前に、何人もの活動家(シーア派もスンニ派もいた)がイラクにおけるイランの干渉行為を終わらせることを呼びかけていたが、殺害された。
イラクの人々はイランのゲームプランを見透かしており、非常に良く理解していた。イランがこの地で策を弄していて、イラク人の血を流していることをイラク人は知っている。だからこそイランの領事館や公館が一般のイラク人によって放火されているのだ。ここ数年イラクにおけるイランの影響力に反対する民衆運動が盛り上がりを見せている。2019年10月にデモを始めた平和的な抗議者をイランのエージェントが少なくとも1,000人虐殺したからである。それが反イラン感情と反イラン運動をさらに助長することとなったのだ。今年の選挙結果で、これまでで最大の総合的な証拠が得られた。今やイランは一般のイラク人から、外国の占領軍だと見なされているのである。
カディミ氏の暗殺未遂が親イランのアサイブ・アフル・ハック(AAH)のカイス・アル・カザリ氏から脅迫を受けたほんの数時間後に発生したことは誰にとっても驚くには値しないことだった。イランの覇権を脅かす者や気まぐれに従わない者に対する、イランの支援を受けた民兵の典型的な脅迫行動である。イラクの真の主権を取り戻すことがカディミ氏の第1の目的であり、今もそうあり続けている。カディミ氏は国家の誇りに訴えてきた。首相在任中、カディミ氏は民兵に対して明確に対抗する姿勢を取り、「国家の内部における国家」の勃興を許してはならないと繰り返し語ってきた。イランの計略を支持させようとする威嚇や脅しに屈することを、カディミ氏は自分自身に許していないのである。
ラフィーク・ハリーリ氏は善人であり、あらゆる正しいことを行った。彼の殺害以降、レバノンは希望を全て失った。カディミ氏も善人であり、あらゆる正しいことを行っている。カディミ氏がいればイラクには実際にチャンスがある。
ファイサル・J・アッバス
カディミ氏はアラブ世界におけるイラクの自然な同盟諸国との交流の道を開いた。カディミ氏は、特にサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などのイラク周辺のアラブ諸国との緊密な絆を模索するという高潔で勇敢な立場を取った。見返りとして、サウジアラビアとUAEはカディミ氏に対し、イラクがアラブ世界で卓越した地位を取り戻すための全面的な支援を行った。これは当然ながら、イランの宗教的指導者に対する警告となった。イランの宗教的指導者は、イラクが苦境や政治的不安定の泥沼に嵌ることを望んでいる。弱いイラクこそ、彼らの求めているものなのである。イランの宗教的指導者は改革派や穏健派の成功を望んでいないのだ。
カディミ氏は日曜、爆発物を積んだ3体のドローンに狙われた。そのうち2体は迎撃されず、カディミ氏がもう1人のラフィーク・ハリーリ氏になってしまう可能性が高かった。ラフィーク・ハリーリ氏は自国のために成功と主権への独立した道を描く大胆さを持つレバノンの首相だったが、そのためイランから資金援助を受けているヒズボラの工作員によって爆殺されてしまった。イランがレバノンに何をしてきたかに目を向けてみよう。かつては繁栄していたレバノンを経済的にどうにもならない状態にし、ドラッグやドローンやテロを輸出するような国際社会の除け者にされてしまった。レバノンは武装民兵組織が政府を掌握し、国民を人質にする国になっている。まさにイランはこのような鋳型に全てのアラブ諸国を嵌め込もうとしているのである。
国際社会、特に米国のバイデン政権は、イランの邪悪なゲームプランに早く目を覚まさなければならない。世界はこの怪物をなだめようとすることをやめなければならない。必要とされているのは言葉だけの非難ではなく、実体のある断固とした行動である。これは米国大統領への包み隠さぬ警告に違いない。この連中は米国政府が取引を結ぼうなどと考えるべき相手ではないのである。
そのような無謀な行動には罰が与えられるのだということを示す明確なメッセージや効果的な制裁がなければ、イランやその民兵組織はこの地域の不安定化を続け、平和や寛容や穏健が根付く可能性を根絶するだろう。今こそ、はっきりとした姿勢を示し、悪質な干渉はここで終わりであることを、今すぐ終わりになるのだということを、イランに知らしめる時である。
ラフィーク・ハリーリ氏は善人であり、あらゆる正しいことを行った。彼の殺害以来、レバノンは希望を全て失った。カディミ氏も善人であり、あらゆる正しいことを行っている。カディミ氏がいればイラクには実際にチャンスがある。しかしながら、彼の命を狙うイラン政府の邪悪な工作員の手から毎回逃れられるよう世界から祈りと期待を捧げられる以上の価値が、カディミ氏にはあるのである。