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アル・ウラーは観光に力を入れるサウジアラビアを象徴する

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20 Nov 2021 03:11:54 GMT9
20 Nov 2021 03:11:54 GMT9

最近光栄なことに私はサウジアラビアの北東部に位置する神秘的な古代都市アル・ウラーを訪れる機会をもった。ジェッダから飛行機を使ってわずか1時間15分で行くことができるこの小さな街の美しさを探究し、興奮を覚えた。アル・ウラーは観光産業に力を入れるサウジ王国が目指す経済の多角化の成功例だ。

今アル・ウラーは国内外からの観光客が訪れたい場所として注目されている。訪問に最良の季節は日中の気候が穏やかで夕方に少し寒さがある冬だ。アル・ウラーには今から4ヶ月間エンターテインメントに溢れる季節が到来した。鏡張りのマラヤ・ホールでは砂漠の夜を明るく照らすイベントが目白押しで、サウジ国内だけでなく中東や世界各国のスターが数多く登場する予定だ。マラヤ・ホールは砂丘や山岳地帯、そして空が続く周囲360度の景色を見渡せるレストランが屋上にある壮大な建物だ。

別の晩に砂漠の夜空の下で魅惑的な時間を過ごしたいのであれば、焚き火ができる美しい場所がいくつかある。優しい音楽が流れる中アラビアコーヒーや伝統的な食事が提供され静寂と安らぎが堪能できるエレファント・ロックの傍もそのひとつだ。

だがサウジアラビアで最初にユネスコ世界遺産に登録され、息を飲むように美しく豊かな歴史を持つヘグラが最も心が奪われる場所だ。山に囲まれた墓跡は良く保存されており、掘り込まれたファサード、優雅な形で露出するサンドストーン、手付かずで残る紀元1世紀頃のナバテア王国の集落跡や遺跡など、見所はたくさんある。ここはアラビア半島南部とエジプト、そしてその先の世界とを結び古代重要であった有名な交易路の交差点に位置するオアシスであり、周辺地域にはいまだに知られていない古い街が点在する。

アル・ウラーは紀元前1世紀にキャラバンの交易を支配していた古代王国ダダンとリヒャンの首都であった都市だ。迷宮のような狭い路地や家屋内、考古学遺跡などを巡り歩くと、まるでその時代のお香の匂いや賑わいを経験できるかのようだ。紀元前20万年からイスラム期にいたるまでの人類の歴史の痕跡に触れられるアル・ウラーの探訪は魅力に溢れる時の旅となるものだ。

もうひとつ是非訪れたい場所はシャラーン自然保護区の美しい渓谷だ。ここを訪れる人はガゼル・アイベックス・ダチョウ・アラビアヒョウといった野生動物の足跡を追い、山々がおりなす様々な形や色を見つめ、洞窟や刻まれた古代文字といった秘宝を発見することができる。この美しい自然の中心ではリゾート開発が進んでいる。

サウジアラビアで最初にユネスコ世界遺産に登録され、息を飲むように美しく豊かな歴史を持つヘグラは最も心が奪われる場所である。

マハ・アキール

アル・ウラーにいる間に私は毎年開催されているデーツ・フェスティバルに参加した。アル・ウラーはデーツ産地としても有名で、フェスティバルには様々な種類のデーツや柑橘類が並ぶ。デーツや高い栄養価と薬効成分を持つモリンガペレグリナの植物から作った食べ物やスキンケア製品を売っていた若い女性の企業家には感銘を受けた。アル・ウラーにはモリンガの品質維持・研究・開発を行うセンターが設立されており、これはユニークな地域産業となる可能性を秘めている。

また女子の学校教育が正式に始まった1960年代にアル・ウラーで開校したサウジアラビアで最も古い公立女学校を訪れる機会もあった。同校の建物は昨年改装され、多種多様な高品質の工芸品を作る手工職人向けの研修センターとなっている。英国の基金ターコイズマウンテンと提携している研修センターの構想は、すでに特定のイベント用の特殊アイテム製作の受注を受けるなど成功を収めている。またアル・ウラーでは言語センターの設立も計画されている。このような社会開発計画は地域にとって持続可能な経済を創り上げるものだ。

またアル・ウラーでは映画製作産業も盛況であり、公開が予定されるジェラルド・バトラー主演のアクション・スリラー映画『カンダハール』などの撮影地として選ばれている。アル・ウラー行きの飛行機で私の隣に座っていたのはこうした映画のプロデューサーのひとりで、彼はこの地域の多様で雄大な土地柄が大変気に入った様子だった。現地にタレントが揃い機材が整備されるようになれば、製作費用が抑えられ製作過程の管理も容易になるため、この地の潜在能力は高い、と彼は述べていた。

アル・ウラーでは観光ガイドならびにパックツアーや専門サービスを提供するツアー業者が不足しており、また当地に来るためのフライトの選択肢やホテルの部屋の価格帯の選択肢も限られ、これらには改善の余地がある。

先週アル・ウラー王立委員会は地域の文化価値を高めるためユネスコと5年間の戦略的提携契約を結び、サウジアラビアが目指す持続可能な発展へ向けた新たな一歩を刻んだ。

観光産業の発展には経済的利益が多く望めるだけではなく、国を代表する観光地への訪問を奨励することの最大の利点は、その地の生態系の多様性や豊かな歴史、サウジアラビアのそれぞれの地域が持つ酔うような文化を知ることにある。人々と知り合い交流し、現地の文化に触れることは国家に対する主観や印象を創り上げるうえで大きな役割を担う。これは持続性の高いソフト・パワーのひとつであり、文化交流外交の手立てのひとつでもある。.

聖地メッカとメディナを持つサウジアラビアは長年世界中からイスラム教徒が集う土地となってきた。両聖地の聖なるモスクは共に多大な資金を掛けて開発・拡張され、サウジアラビアはそれらの忠実な保護者であり続け、巡礼者に対する奉仕や世話について熟知している。これらの献身性や経験を糧に今サウジアラビアはその活気の溢れる都市、特に世界都市への変貌真っ只中にある首都リヤドや、渓谷地帯もしくは山頂にあるユニークで異国情緒に溢れる小さな街に世界中の観光客を招いている。その一方でNEOMや紅海プロジェクトといった新しい都市が最新のテクノロジーやイノベーションを駆使して建設されている。

  • マハ・アキールはジェッダを本拠として活動するサウジアラビア人作家である。ツイッター: @MahaAkeel1
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