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これからのCOVID-19の政策決定は冷静に

ウェストミンスター橋を渡る人々。この前にCOVID-19のオミクロン変異株出現に伴う新たな対策が発表された。2021年11月28日、英国ロンドンで撮影。(ロイター)
ウェストミンスター橋を渡る人々。この前にCOVID-19のオミクロン変異株出現に伴う新たな対策が発表された。2021年11月28日、英国ロンドンで撮影。(ロイター)
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19 Dec 2021 03:12:11 GMT9
19 Dec 2021 03:12:11 GMT9

必要だが、嫌われることを言うのが優れたコラムニストというものだ。これから話すことに過敏に反応する人は多いだろう。私がいかに冷酷で、COVID-19の流行の犠牲者を思いやらず、ウイルスを軽視しているかを言い立てるかもしれない。しかしそれは空騒ぎであり何の意味もない。真実に迫れるなら安い代償である。

その真実とは、COVID-19の大流行、新世紀初のグローバルで歴史に残る政治的リスクによって露呈した最大の問題は西側の指導者と国民が根本的に非論理的で日常のリスクがいつも(この危機が起こるまで)どのように制御されてきたかを理解できていないことだ。世代が入れ替わる前に大学の歴史の授業で次のような質問が出てくるのは間違いないと思う。「1918~20年のスペイン風邪、1957~58年のアジア風邪、1968~69年の香港風邪が大流行したときとは違い、COVID-19のパンデミックでは世界じゅうで一斉に何年間もパニック状態の封鎖が行われたのはなぜか」

問題の一部は、西側の指導者が、選出されたわけではない医療専門家に政府の支配権を委ねたことだ。大恐慌の歴史的危機に際してフランクリン・D・ルーズベルト氏がとった措置と対比すると示唆的である。ルーズベルト氏は誰にも意思決定を一切任せることなく、経済学者、ソーシャルワーカー、政治顧問、彼が進めた数々のプログラムの実行担当者など、危機のあらゆる側面に関連するチームを呼び、彼らの話を聞き、愛想よく感謝し、そして全員をそれぞれの仕事に送り出した。世界恐慌のさまざまな側面について全員から意見を聞いて初めて、FDRは各人の考えを取り入れながらより完成度の高い政策を実現するため全方位的に動き出したのだ。

COVID-19危機の間、政策決定の上でそのようなバランス感覚は悲しいことにどこにも存在しなかった。代わりに私たちはウイルス学者をまるでオリンポス山から降りてきたかのように扱い、その言葉を待っている。当然のことながら、選んだ職業上、医師は医療には極度に慎重になる。それは理解できることであり、彼らの使命である。各方面が消耗したのは、緊急事態における医療的側面が圧倒的すぎて、他のすべての声がかき消されたからだ。

そのようなアプローチは代償が大きすぎる。自殺、配偶者虐待、児童虐待、アルコール依存症、麻薬中毒、十代の自傷行為の割合はすべて急上昇している。子どもたちの教育がかなり遅れているという不都合な秘密は誰もが知っている。それはあまりに明白だからだ。今日の子どもたちの世代が、現実的な政治的議論のなされないまま、高齢者のために厄介な犠牲を払ったと言っても過言ではないだろう。今後数十年の間、警告を聞き入れなかった社会が払い続ける代償である。

だがまたしても、決して実現し得ない理想郷レベルの安全を望む人々が、結果がどうなろうと世界を閉鎖し続ける最新の根拠として新たなオミクロン変異株に飛びついた。残った私たちが、放棄された論理の力を活用してその動きを止めるべき時が来た。

当初、はるか昔の2020年3月、都市封鎖は(私の見解では)西側の医療制度の圧迫と死亡率の上昇を防ぎ、うまくいけば死亡者を減らせる手段として考え出された。これを、今のパンデミックを判断するための1つの基準としよう。

この危機の中で、私たちはウイルス学者をまるでオリンポス山から降りてきたかのように扱い、その言葉を待っている。

ジョン・C・ハルズマン博士

この当初の基準と照らし合わせて、オミクロン株は世界を滅ぼすと言えるだろうか。現時点までにオミクロン株で死亡した人はほとんどいない。今週、英国が新変異株による初の死者が出たことを発表した。そのとおり。人口6,700万人の国で1人が死亡した。オミクロン株が原因で入院した人もほとんどいない。報告されている入院者数は十数人程度だ。一方、来週の時点で、英国におけるCOVID-19感染者数の大半はオミクロン株の患者になる。大量死や医療制度の崩壊につながる兆候は見られない。では具体的に何が問題なのか。

オミクロン株の状況から、新しい流行の波が出現するたびに、COVID-19がより伝染しやすく、かつ軽症化しているように見えることが分かる。20世紀のスペイン風邪、アジア風邪、香港風邪の歴史と同じだ。このことはチャールズ・ダーウィン氏の教えと完全に一致している。寄生虫ウイルスが生き延びるためにはワクチンを乗り越えなければならないが(オミクロン株にはその実例が出ているようだ)、宿主を殺してはならないのだ。したがってオミクロン株は、世界全体としては矛盾するようだが良い知らせということになる。COVID-19は、ウイルスの一般的な歴史に則って軽症化し、かつ伝染しやすく変わってきている。言い換えれば、普通のインフルエンザの単なる別型のようなものだ。人類が共生すべき病気が一つ増えただけである。

では、これからはCOVID-19で大騒ぎするのをやめて、次世代がまともな未来を享受するチャンスを奪うことなく、目の前で起きている事実を評価できるようになるだろうか。もしそうするならば、このような大胆で論理的な思考が必要な時期は過去になったと言える。

  • ジョン・C・ハルズマン氏は世界有数の政治リスクコンサルティング会社ジョン・C・ハルズマン・エンタープライズの社長兼執行パートナーを務める。ロンドン市の新聞City A.M.のシニアコラムニストでもある。問い合わせ先はsubstack.com
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