Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

医療のヒーローたちを称賛する

フランスのパリ近郊のヌイイ=シュル=セーヌのアンブロワーズ・パレ診療所の蘇生集中治療サービスで医師と看護師が患者の治療に当たっている。2020年3月27日。(EPA)
フランスのパリ近郊のヌイイ=シュル=セーヌのアンブロワーズ・パレ診療所の蘇生集中治療サービスで医師と看護師が患者の治療に当たっている。2020年3月27日。(EPA)
Short Url:
29 Mar 2020 06:03:31 GMT9
29 Mar 2020 06:03:31 GMT9

1人のサウジの看護師がシフトから自宅に帰って、泣き崩れる。子どもを抱きしめてあげることができないからだ。幼い子どもには間違いなくそれが必要であるのに。これは世界の医療従事者がコロナウイルスとの戦いの中で現在捧げている肉体的かつ感情的な犠牲行為の一例だ。イランからイタリアまでのソーシャルメディア上のさまざまな投稿の中で、医者その他の医療スタッフたちが自分の目の当たりにした死を嘆き、人々に家に留まるよう求めている。

https://twitter.com/arabnews/status/1242695457261977600?s=20

一方ドバイでは、「フィットネスインフルエンサー」のセミア・アザイズ(Instagram上の名前はThe Trendy Frenchie)が、ソーシャルディスシングと自己隔離に関する公式の情報をあざ笑っていた。そしてビデオを投稿して、41,000人のフォロワーに対して自分自身や他人の健康リスクに関する警告を無視して外に出て走るよう促した。「どうして家にいるんですか?」と彼女は言う。「やりたいことは何でもしましょう。」UAE当局もやりたいことをすることにして、彼女を逮捕した。同様に無感情に、スポーツウェア大企業のReebokも彼女を見捨てた。

クウェートでは、ファッションインフルエンサーのフォウズ・アル・ファハドが、家庭用「コロナウイルス検査」キットを宣伝したことで送検された。彼女の主張ではキットは95%の正確さでウイルスを検知できるとのことだった。だがこの機器で検査を行うにはかなりの困難があった。実際には存在しなかったのだから。

この10年ほどで私たちにはどうやらソーシャルメディア上の有名人に注目する習慣が身についてしまったようだ。その根拠は彼女たちの顔が美しかったり、あるいは彼女たちが見事なシックスパックを持っていたりすることでしかない。だが、世界一の免疫学者の1人であり1984年から米国の国立アレルギー感染症研究所の所長をつとめているアンソニー・ファウシのような医師による医療情報を毎日入手することができるというのに、The Trendy Frenchieの考えを知る必要が本当にあるのだろうか? こだわるのは殺人的に魅力的なルックスだけにして、殺人ウイルスは専門家に任せておいてもらいたい。

「政府だけではコロナウイルスを打ち破ることができない今、企業の社会的責任がかつてなく必要とされている」

ファイサル・アッバス

また、Reebokなどの企業にはむやみにリップグロスを持っているインフルエンサーを見限る以外にもすべきことがあるのではないだろうか。今こそマーケティング予算を(製造生産ラインの全体をではないとしても)活用して、保護具を求めている前線の医療従事者を支援すべきだ。医者たちにはそれが切実に必要なのだから。企業の社会的責任は単なる企業の目論見書上の善意の約束ではない。政府だけではコロナウイルスを打ち破ることができない今、企業の社会的責任がかつてなく現実に必要とされている。

Arab Newsでは自分たちの役割を果たすために、この困難な時期に希望を広げてくれる寛大な行為や嬉しいニュースをお知らせする日刊の特集記事を開始した。

私たちはファッションの伝説的人物ジョルジョ・アルマーニを称賛する。彼はイタリアの病院に200万ユーロを寄付し、自らの工場を改造して使い捨ての医療用作業着を作っている。私たちはEmiratiのビジネスマン、ハラフ・アル・ハブトゥールを称賛する。彼は50台の救急車と医療設備を備えたビルを寄付し、新しいウイルス研究所に資金提供して保険当局を支援している。サウジアラビアでは、アブドゥル・ラティーフ・ジャミル、ブパ・アラビア、バンク・サウジ・フランシなどの寛大さを称賛する。レバノンでは、30億リラを地元の病院のためのTVの募金活動に寄付した人々を称賛する。多額の銀行口座を持つビジネスマンやスターから、豚の貯金箱やポケットマネーしかない子どもたちまでが募金に協力した。英国では、拡大された国民保健サービスのために働くことを志願した50万人の英国人を称賛する。

医療従事者には、2つのことを言いたい。感謝と謝罪を。生命を危険にさらし、愛する家族から自らを引き離し、そして途方もなく長時間にわたって働いて、可能な限り多くの人々を救ってくれていることに感謝したい。そして長年にわたってあなたたちに与えられるべきだった支援を提供することができなかったすべての人々に代わって謝罪する。私たちは2015年にビル・ゲイツが警告した時にも、明白なはずのことを理解できなかった。2011年の『コンテイジョン』を観ても真剣に考えることができなかった。そして私たちは、インターネットにはピアノを弾く鍵盤猫のYoutubeビデオ以外にも提供できるものがあることに気づくことができなかった。

  • ファイサル・J・アッバスはArab Newsの編集長

Twitter: @FaisalJAbbas

特に人気
オススメ

return to top