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新しい静かなるインティファーダ、イスラエルのアパルトヘイトの脅威に

年配のパレスチナ人が2021年10月2日、イスラエルによるヨルダン川西岸地区ヘブロンでの土地没収に抗議した。(AFP)
年配のパレスチナ人が2021年10月2日、イスラエルによるヨルダン川西岸地区ヘブロンでの土地没収に抗議した。(AFP)
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26 May 2022 10:05:11 GMT9
26 May 2022 10:05:11 GMT9

イスラエルとパレスチナ人との間の暴力が増大し、イスラエルを圧倒する勢いとなっている。しかし、多くの主要なニュースメディアやイスラエル政府はその脅威を過小評価し、自然消滅するのを望んでいるように見える。

3度目のインティファーダ(住民蜂起)勃発の可能性が浮上する中、イスラエルにとっては、心配すべきことが数多くある。イスラエルがパレスチナ人の土地を奪い、ユダヤ人のみの入植地の建設を続けていることにより、暴力の連鎖が拡大し、平和を蝕んでいる。インティファーダが発生するのは、そうした占領地だけではないとみられる。イスラエル軍は、同国内のパレスチナ市民による暴力事件が2倍に増えると見込んでおり、暴力の可能性に備えて軍事訓練を続けている。

イスラエル政府が静かなるインティファーダの兆しを感じ取る中、パレスチナ人は必要に迫られて、自らを防御する動きを見せている。一方で同国政府は、パレスチナ人の町や村への暴力的な侵入を命じている。これは活動家をターゲットにしているとみられる。イスラエルのナフタリ・ベネット首相は、イスラエル国防軍(IDF)に対し、“テロリスト”を根絶やしにするよう指示した。イスラエル政府はこのテロリストという語について、人権や公民権を要求し、イスラエルのアパルトヘイト政策を終わらせるよう訴えるあらゆる人物を表現するために使用している。

イスラエルのアパルトヘイト(人種隔離政策)は、次の点で独特なものだ。人種差別(レイシズム)を和らげた形式を反映しており、批判の効力を弱めるべく、その差別には“口実”のひねりが加えられている。例えば、イスラエルはニュースを検閲しており、そのいじめがあまりに酷いため、ほとんどのイスラエル人ジャーナリスト、そして彼らを雇う西側の放送局は自らを検閲している。それでも、イスラエル占領地では、パレスチナ人ジャーナリストたちがそうした検閲に抗い、同国の暴力をより十分に報道しようと試みている。

おそらくそのような理由から、イスラエルの狙撃兵が今月、キリスト教信者のパレスチナ系ジャーナリストであるシリーン・アブアクラ氏を殺害したのだろう。私たちは、完全な真実を知ることはないかもしれない。なぜなら、イスラエルが典型的なアパルトヘイトのテクニックを駆使して、その真実のための論争を終わらせようとしているからだ。イスラエルは今、わざと時間を稼ぎ、メディアを調査から遠ざけているのだ。この間、パレスチナ人は国際刑事裁判所に対し、この銃殺事件を戦争犯罪として裁くことを求めて提訴した。

イスラエルのアパルトヘイトは、ユダヤ市民と非ユダヤ市民を分ける差別政策に依存している。イスラエルや西側のメディアは滅多に探ろうとしないが、キリスト教とイスラム教のパレスチナ人を明確に差別する65以上の法律が存在している。

重装備の暴力的IDFや、罰せられないことを確信し、ますます攻撃的になっている武装したイスラエル人入植者に対し、パレスチナ人が怒り、進んで対峙しようとする理由は、数多くある。パレスチナ人に対する暴力で訴追されたイスラエルのユダヤ人を最後に耳にしたのは、いつだっただろうか? それは、メディアがネタを葬ることができないと悟り、そのネタを公表することによって、イスラエルの非難されるべき政策を考慮すれば当然とされる怒りが、呼び覚まされた時だけなのだ。

この新しい静かなるインティファーダが完全に表面化するのを止められる唯一の当事者は、イスラエル自身である。ある時点でイスラエルのユダヤ人は、目を覚まし、狭い地域に暴力を閉じ込めている状態では生きられないと実感する必要がある。

長年にわたり、イスラエル人は理解していた。IDFが分離壁(親イスラエル派はこれをより攻撃性の薄い“フェンス”と言っている)の反対側への暴力を続けることができれば、彼らは、結果がどうあれ、盗んだビーチ、家、食料を享受できるということを。しかし、政府の不正と人種差別の結果は、積み重なっている。いつか近いうちに、パレスチナ人は、彼らが直面する差別政策に追い詰められ、我慢の限界を迎えるだろう。そして、平和プロセスの失敗を気に掛けることも、もはやなくなるだろう。平和への希望が断ち切られれば、暴力こそが、イスラエルの残忍な圧制を止める唯一の方法になってしまうのだ。

私たちは既に、イスラエル人、パレスチナ人の死者数のバランスが取れ始めていることに気づいている。かつては、パレスチナ人に殺されたイスラエル人の数は、イスラエル兵や過激派の武装入植者に殺されたパレスチナ人に比べてずっと少なかったのだ。しかし、今回の静かなるインティファーダにおいては、その状況は変化してきている。双方の死者数が近づいてきているのだ。それでも、当然のようにイスラエルと西側のメディアは一般的に、イスラエル人に対する暴力には大騒ぎする一方で、パレスチナ人に対する暴力にはささやく程度の報道しかしない。

この新しい静かなるインティファーダが完全に表面化するのを止められる唯一の当事者は、イスラエル自身である。

レイ・ハナニア 

さらに悪いことには、人口爆発により力を増している占領地の入植者たちが、ハラムシャリーフに照準を合わせてきている。彼らは、エルサレム聖地の新神殿において過激主義の構想を実行に移し、その支配力を確固たるものにすることを望んでいる。

イスラエルは、今にも爆発しそうな火薬庫だ。次のインティファーダがイスラエルそのものに及んだ場合、私たちはついに、危険な力学に変化が生じるのを目にするかもしれない。その力学とは、えせ民主主義の基盤となっているものだ。

イスラエル人は、この将来に注意を払っているだろうか? あるいは、静かなるインティファーダを食い止めるため、現行の体制が彼らに対し、より残忍になり、挑発されたパレスチナ人にさらなる暴力を加えることを許すと見込んでいるのだろうか?私たちは、成り行きを見守らなくてはならない。

  • レイ・ハナニア氏は、受賞歴のある元シカゴ・シティ・ホールの政治記者であり、コラムニスト。彼の個人ウェブサイトwww.Hanania.comを通して連絡を取ることが可能。Twitter:@RayHanania
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