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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、反対押し切り司法改革を推進

先週、委員会が司法制度改革案を承認したことを受けて、クネセトの外で10万人規模のデモが開かれた。(AP)
先週、委員会が司法制度改革案を承認したことを受けて、クネセトの外で10万人規模のデモが開かれた。(AP)
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20 Feb 2023 09:02:55 GMT9
20 Feb 2023 09:02:55 GMT9
  • 国会が第一回の票決に向けて準備をする中、数千人のデモ隊が議会の外で、司法改革案に反対する集会を先週に続き2週連続で行う見通しだ

イスラエル・テルアビブ: 月曜日、イスラエル政府は物議を醸している司法制度改革に向けて前進した。大規模な抗議活動、軍や企業の有力者からの警告、アメリカによる制止など、前例のない反発とは裏腹だ。

国会が第一回の票決に向けて準備を進める中、数千人のデモ隊が国会(クネセト)の外で、司法改革案に反対する集会を先週に続き2週連続で開く見通しだ。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相とその盟友である超宗教的・超国家主義的な議員らは、改革案が、法律の制定や意思決定に対して裁判所と政府の法律顧問に過度の発言力を与えている制度を修正するためのものだと主張している。

批判派は、改革案がイスラエルにおける三権分立制度を根底から覆し、権力を首相の手に集中させるものだとしている。

また、ネタニヤフ首相が一連の汚職容疑をめぐり裁判中であり、改革案に関して利益相反があると指摘する。

司法改革をめぐる対立により、イスラエルは同国史上において最大の国家的危機の一つに陥った。また、国民の間では、国家のあり方と国家を導くべき価値観をめぐり、溝が深まった。

法案の可決には三読会を経る必要があり、月曜日に予定されている法案の一部に対する今回の票決は、第一読会で行われる。

このプロセスには数か月かかると予想されるが、今回の票決は、連立政権が法案成立を急いでいる表れであり、多くの人々に不誠実な行為と見られている。

イスラエルで象徴的役割を担う大統領は、法案成立への動きを停止し、野党との妥協点を探るよう政府に要求している。急成長を見せるハイテク産業の有力者らは、司法を弱体化させれば投資家が離れてしまうと警告している。

イスラエルでは毎週、テルアビブなどの都市で数万人規模の抗議活動が行なわれている。

先週は、委員会が法案を承認したことを受けて、クネセトの外で10万人規模のデモが開かれた。

これは、都市で行われた抗議活動としては、ここ数年で最大のものだった。

改革案を受けて、これまで鳴りを潜めていた公安当局者が発言を行い、内戦の可能性があるとまでした。

感情の高まりの表れとして、60〜70代の退役軍人のグループが戦争記念地から退役戦車を盗み出し、イスラエルの独立宣言が書かれた幕を覆いかぶせるが、警察により取り押さえられた。

改革案には、イスラエルの主要同盟国であるアメリカまで、異例の警告を発した。

トム・ナイデス駐イスラエル米国大使は週末、ポッドキャストで、イスラエルは法案に「ブレーキをかける」べきで、イスラエルの民主的制度を保全するための改革に向けて合意を目指すべきだと述べた。

大使の発言に対し、ネタニヤフ首相の盟友らからは、イスラエルに対する内政干渉だとの反発が起こった。

首相は日曜日に閣議で、イスラエルの民主主義が脅かされているとの指摘を退けた。「イスラエルは強く活気のある民主主義国家であり、今後もそうあり続けるだろう」と述べた。

イスラエルは長年、自国の民主主義を謳ってきたが、批判派は、ヨルダン川西岸地区の占領と自国のマイノリティであるパレスチナ人への扱いがその反例だとしている。

イスラエル国内のパレスチナ人市民は、マイノリティとして今回の司法改革で最も多くを失うことになるものの、その多くが抗議活動への参加を見送っている。

理由の一部としては、国内での差別や、同じくパレスチナ人が住むヨルダン川西岸地区に対するイスラエルの55年にわたる占領が挙げられる。

ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植者らはイスラエル国内の選挙に投票でき、一般にイスラエルの法律で保護されているが、同地区のパレスチナ人は軍事支配下にあり、選挙権を持たない。

月曜日の議会投票では、裁判官に対する政府の任命権拡大の是非が問われる 。

現在、裁判官選考委員会は政治家、裁判官、弁護士で構成されており、支持派はこの制度により合意形成が促進されるとしている。

新制度では、連立政権の議員らが裁判官の選任を掌握する。批判派は、裁判官の任命が政府や首相への忠誠心に基づいてなされるようになることを懸念している。

テルアビブより北方にあるライヒマン大学Rubinstein Center for Constitutional Challengesの共同ディレクターであるヤニブ・ロズナイ氏は、「これは一大事です」と述べた。「もし裁判所を掌握されたら、万事休すです。政権にはどんな変更も思うがままになります」

第二の変更点では、最高裁がいわゆる「基本法」を覆すことを禁止する。イスラエルには憲法がなく、基本法がその代わりになっている。

批判派によれば、議員は任意の法律を基本法とすることができるようになり、異論のある法律に対する司法の監視が失われる。

改革案では他にも、国会に対し、最高裁の判決を覆す権限と、政府の法律顧問の任命権が与えられる。

政府の法律顧問は、現行制度では専門職の公務員だが、批判派は、新制度によって政府省庁が政治化されるという。

批判派は他にも、改革によってネタニヤフ首相が法的苦境を免れる道ができることを恐れている。

ネタニヤフ首相は汚職疑惑を否定し、自身は偏った司法制度による迫害の犠牲者だと主張している。

イスラエルの司法長官は、ネタニヤフ首相の法的問題が利益相反を引き起こすとして、改革へのいかなる関与も禁じている。改革の陣頭指揮は、首相に代わって、側近の司法大臣が執っている。

日曜日、ネタニヤフ首相は自身に対する制限について「明らかに馬鹿げている」と発言した。

最近の世論調査では、ネタニヤフ首相の支持者を含め、イスラエル国民の大多数が、法案の制定を中止し、合意を踏まえた前進を支持しているという。

AP

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