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期待感にじむパレスチナのための新たな一案

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29 May 2022 12:05:08 GMT9
29 May 2022 12:05:08 GMT9

パレスチナ人テレビジャーナリストのシリーン・アブアクラさんが殺害され、イスラエル警察がその葬儀を襲撃した惨事を受け、パレスチナ、およびイスラエルによる占領の問題が一時的にふたたびスポットライトを取り戻したらしく映る。

パレスチナは、二国家共存の解決策に照らし数十年にわたる占領を終わらせるべく取り組んできた。この取り組みには世界から法的な支持も人々の支持も得てきているように思う。ただ履行のための実効的なメカニズムに恵まれていない。パレスチナ人が大義を実現する上で国連は依然として主だった舞台ではあるけれども、目下のところなかなかうまく行っていない。

が、パレスチナ人さえその気があれば国連を巻き込んだ絶好の機会は利用可能かもしれない。米国の哲学者であり紛争解決のスペシャリストでもあるジェローム・M・シーガル教授の新著『パレスチナからのオリーブの枝(The Olive Branch from Palestine)』は、何十年と凍結状態だった国連機構を解凍させる機縁となる可能性がある。

シーガル氏の著書では、パレスチナが承認し、おそらくはノルウェーとドイツということになるが、どこかの名声の高い加盟国が提出する国連総会決議案を提唱している。これは、国連パレスチナ特別委員会(UNSCOP)をふたたび設ける、というものだ。初代のUNSCOPからは1947年のパレスチナ分割決議案が生まれ、これをもとにイスラエル人とパレスチナ人双方が独立宣言をおこなった。新たな第2特別委(UNSCOP-2)で提起したいとするのは、紛争と主張の応酬の終結計画だ。これは、二国家共存の解決策、パレスチナ人の民族自決権、そしてパレスチナ難民に対する最大限ふさわしい敬意が基盤にある。シーガル氏は、ビル・クリントン氏が描いた絵のようではあるが、エルサレムを共有する独立したパレスチナ国家の樹立を提案したい考えだ。さらに最も重要なこととして、同氏は難民問題への新たなアプローチも勧告したいとし、著書でそうした考えを展開している。

初代のUNSCOPはパレスチナ側が1947年にボイコットしたわけだが、UNSCOP-2については、シーガル氏はイスラエル側がボイコットするだろうとみている。その場合パレスチナ側が条件面で実質的な影響力をもつということになるため悪くない、と同氏は考えている。とはいえUNSCOP-2であっても初代のUNSCOP同様、国連安保理の常任理事国は一国も入ることはないだろう。第二特別委は国連総会へ案を提出することになる。するとイスラエルとパレスチナに3カ月間の交渉が要請され、和平プランを前向きなものにするなんらかの合意について協議される。そのあとで両者がそれぞれ住民投票で案を諮るという流れになる。パレスチナ側ではこの投票には在外パレスチナ人もふくめたあらゆる難民も参加することになる。パレスチナ側の住民投票は国連が管理してくれるはずだ。

難民に関するこうした案は、シーガル氏がUNSCOP-2でぜひ検討してもらいたいとしているものだが、基本は、土地交換を通じてパレスチナ人の土地の所有権を100%認めるとしたジョン・ケリー氏の案だ。しかしながら、トランプ=クシュナー案のような砂漠地帯との土地交換などではなく、シーガル氏の提案するのは、1948年に放棄されたおよそ50の村落をパレスチナ国家へ併合すること、残る350の村落に居住するパレスチナ難民が自分の住む村落で起きることに拒否権をもつこと、イスラエル領に残るパレスチナの村落に、イスラエルからすみかを追われたナクバ(大惨事)記念館を設ける展望、といったものだ。同氏はまた、紛争終結計画の決着の一環として、パレスチナ難民への補償金4,000億ドルも求めるとする。

シーガル氏は難民に関する案を国連パレスチナ第2特別委員会でぜひ検討してほしいとする。この案のもとは、土地交換を通じてパレスチナ人の土地の所有権を100%認めるとしたジョン・ケリー氏の案だ。

ダオウド・クタブ

住民投票を終えれば、そしてその結果は確実に尊重されることが望ましいが、次は国連事務総長の出番となり、パレスチナ人民からイスラエル人民への恒久平和の申し出としてこの案をイスラエル大統領に正式に示すことになる。

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領は2021年9月に国連に対して、イスラエルが占領地から撤退しないのであればパレスチナも進路を変更することになる、と告げている。その進路がどこを向くことになるのかについてはしかし、アッバース氏はうやむやにしている。

シーガル氏が示した案というのは要するに、現実の外交でたどれる道に実在する進路を表したものだ。アッバース氏は頭の中だけでこれにコミットはしたが、革新的な方法で問題を前へ進めようとするにあたってはほとんど何もしていない。解放へ向けた戦略が不足しているようなプランなら、プランそのものは画餅にすぎなかろう。そうした戦略には、パレスチナ人の真の統合、そしてそこに組み込まれる新たな案や新たな人というものを可能にするプロセスが必須だ。人をその気にさせるような、十分に考え抜かれた、実際的で実行可能なプランがないかぎり、アイデアひとつで進路など変更できはしないはずである。

本気で支持したいとも思えないようなプランにパレスチナ以外の世界が口先だけ賛成している間に、パレスチナ人の占領下の生活は未来永劫続く――などと思っていただきたくない。世界から色よい返事が来るとすればそれは、真剣さが伝わり、実効性があり、機能する、そうした案というものだ。

目も当てられない結論ではあるが、パレスチナ指導部は新たな、そして創造的な案をもはや消尽してしまっているのだ。シーガル氏のプランはよさそうではある。が、いま求められているのは革新的な案ばかりではない。必要なのは、ほとんどのパレスチナ人とパレスチナの友らが支持するに足る、人民の統合であり、新たな血であり、解放へ向けた統一的な国民的戦略なのだ。

  • ダオウド・クタブ氏は受賞歴のあるパレスチナ人ジャーナリスト。エルサレム出身。ツイッター:@daoudkuttab
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