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サウジアラビアと日本のエネルギー転換におけるブルーアンモニアの役割

サウジアラビア、ジュバイル駅のブルーアンモニア運搬装置.(アラムコ)
サウジアラビア、ジュバイル駅のブルーアンモニア運搬装置.(アラムコ)
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23 Feb 2021 05:02:17 GMT9
23 Feb 2021 05:02:17 GMT9

カーラ・チャラワー

世界初となるブルーアンモニアの輸送が2020年9月27日、サウジアラビアから日本へ向けて行われた。ゼロカーボンで発電を行う発電所で使用され、エネルギーシステムにおける水素のさらなる活用に道が開かれる見込みだ。

サウジと日本によるこのコラボレーションは、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)と石油会社のサウジアラムコが、サウジ基礎産業公社(SABIC)と提携し実施した試験プロジェクトの一環だ。

同コラボレーションは、両国にとって重要な意味を持つ。日本は、水素利用で世界のリーダーになることを目指している。一方で世界最大の石油生産国であるサウジアラビアは、そのエネルギー資源を多角化し、クリーン電力で世界的な力としての台頭を望んでいるのだ。

パリ協定において、日本は2030年までに温室効果ガス排出量を、2013年の水準から26%削減すると誓約した。また、クリーンなエネルギー生産のために「水素利用で世界を牽引する」ことも計画している。水素は、アンモニアに含まれている。

「ブルーアンモニアは、環境と経済のバランスを持続させるという日本のゼロカーボン排出目標にとって欠かすことはできません。日本の発電量の10%を、3,000万トンのブルーアンモニアで生成することができます。既存の発電所でブルーアンモニアを混焼することから始め、最終的には、ブルーアンモニア100%の専焼に移行することができるでしょう。」と、IEEJ理事長兼CEOの豊田正和氏はプレスリリースで述べた。

アラブニュース・ジャパンとの過去のインタビューで、豊田氏は日本が現在エネルギー輸入に大きく依存しており、それを占めているのは主に化石燃料、特に石油であると解説した。この傾向は、2011年の福島原発事故によって日本の原子力発電所が閉鎖した後、さらに強くなった。日本は、エネルギーの割合を変えていくことを余儀なくされたのだ。それは原子力発電に代わり、天然ガス、石油、再生可能エネルギーの消費が高まっていくことにつながった。

「現時点では、エネルギーの大きな割合を化石燃料に依存しています。それが福島原発事故の結果なのです。」豊田氏は述べた。

日本は、太陽発電など他の持続可能なエネルギー資源の代わりにアンモニアの使用に関心を持っている。それは十分な日光や風力が得られないためである、と彼は解説した。

「中東と違って日本の日差しは比較的弱く、北ヨーロッパのような安定した風力もありません。大変強い台風はありますが、風車を活用することは残念ながらできません。そのため電力資源としてのアンモニア事業は、日本政府にとって重要なのです。」豊田氏は述べた。

プロジェクトは、サウジアラビアにとっても重大事だ。既存の不安定なエネルギーモデルへのソリューションを構築する中で、その基盤として持続可能エネルギーを重視していることを紹介するためだ。王国は、エネルギー生産の多角化を目的として、発展戦略の中心でエネルギー転換を行ってきた。これには石油燃料から水素ベースの、ローカーボンエネルギー資源への段階的な移行が含まれる。さらには、この事業はエネルギーセクターにおいて大きな投資機会を開き、同時に王国の輸出品ポートフォリオへ、潜在的に重要な追加品を作り出している。

アンモニアは、水素原子3つとそれに結合した窒素原子1つを含む化合物だ。ブルーアンモニアはブルー水素の原料で、これは化石燃料資源から作られる燃料の1種である。しかし排出されたカーボンは回収され、保管される。

アンモニアが化石燃料に対して持つ利点は、それが火力発電所で燃焼された時に二酸化炭素(CO2)を排出しないことだ。そして輸送も簡単である。そのため、「手頃で信頼性の高いローカーボンエネルギーの未来に、有意義な貢献をする可能性」を持っている、とサウジアラムコは述べている。

「アンモニアは、水素の輸送媒体として大変優秀です。便利で実用性の高い液体の形状を持ち、純粋な水素と比較して、より扱いやすい圧力や温度で輸送できるからです。輸送費用を抑えられることは、アンモニアの圧倒的な強みです。」サウジアラムコは述べた。

サウジアラムコとSABICによる40トンのブルーアンモニアの生産には、既存の設備が利用された。ブルーアンモニアのサプライチェーンは、サウジアラムコの石油とガス生産施設から始まっている。炭化水素は、サウジアラビア東部にある国内最大の工業都市、ジュバイルでブルーアンモニアへと加工される。

サウジと日本のブルーアンモニア供給ネットワークデモンストレーションは、アンモニアからの二酸化炭素の直接大気放出を減らすために、異なる2つの経路を採用した。カーボン回収および有効利用(CCU:Carbon Capture and Utilization)と、原油増進回収法(EOR:Enhanced Oil Recovery)だ。

ブルーアンモニア・サプライチェーン・デモンストレーションの概要(アラムコ)

カーボン回収および有効利用では、アンモニア工場で生産された二酸化炭素の一部がSABICのイブン・スィーナー・メタノール工場へ輸送される。これには、既存の二酸化炭素パイプラインを利用する。アンモニアを生産するのは、ジュバイルで5つのアンモニア工場を運営しておよそ360万トンの年間総生産力を持つ、SABICの関連会社であるサウジアラビア肥料会社(SAFCO)だ。IEEJが公表するブルーアンモニア・サプライチェーンのデモンストレーションによれば、上記の輸送が完了すると、二酸化炭素はメタノールを合成するための原材料として使われる。

原油増進回収法のため二酸化炭素はSABIC施設(SAFCO)で回収され、ISOタンカーでの輸送用に液化される。この二酸化炭素は、サウジアラビアの天然ガス液化(NGL)工場、ハウイヤに到着する。そこでカラム分画が軽質炭化水素の混合ストリームを加工し、純粋な分画へと分解する。

2015年、二酸化炭素の回収システムがハウイヤNGL工場で建設され、設置された。そして工場からウスマニヤまでの、85kmの二酸化炭素パイプラインも建設された。最初に運転が可能になって以来、ウスマニヤの二酸化炭素・原油増進回収(CO2-EOR)実証設備(サウジアラムコが所有し運営する)は着実な前進を維持している。ハウイヤNGL工場から石油増進運用のために輸送されている二酸化炭素回収量は、年間およそ80万トンだ。

ジュバイルから運ばれる二酸化炭素をEOR施設へつながる二酸化炭素パイプラインへ注入するために、サウジアラムコは二酸化炭素を気化し、搬送するシステムを構築する必要があった。まず、赤い隔離弁が手動で開かれる。すると気化器を通過したISOタンク内の液状二酸化炭素は、気体状態へと戻る。その後、気化器から放出された二酸化炭素ガスはコンプレッサー部へ送られ、EOR施設へ到着する。そして圧力下で石油貯留槽へ注入され、石油のモビリティを高めるために活用されるのだ。

これは、貯留槽へ注入された二酸化炭素の一部を永久的に保管する一方で、より多くの石油回収を可能にする。IEEJのブルーアンモニア・サプライチェーンのデモンストレーションによれば、炭化水素を使って、アンモニアと二酸化炭素が生産される。そして二酸化炭素を回収し活用して、生産されるのがブルーアンモニアだ。

IEEJの研究チームを代表している三菱商事は、日揮ホールディングス、三菱重工エンジニアリング、三菱造船、そして宇部興産と提携し、輸送ロジスティクスを管理するためにSABICと協力した。

ブルーアンモニアのプロジェクトでは、行程中に回収された50トンの二酸化炭素に輸送課題が圧倒された、とサウジアラムコは声明で述べた。うち30トンは、SABICのイブン・スィーナー・メタノール工場で使用された。残り20トンは原油増進回収のためにウスマニヤの油田へ輸送され、注入された。

ブルーアンモニアはその後、3つの生産現場で発電に使われるため日本へ輸送された。石炭と混焼された相生市の工場、天然ガスと混焼された2MWの横浜の工場、そして郡山にある、50kWのマイクロガスタービン施設だ。

「この輸送は世界でも初めての試みです。アラムコにとっては、二酸化炭素排出が少ない水素とアンモニアの信頼でき手頃な原料として、炭化水素を紹介する重要な機会を意味するものです。」サウジメディアによれば、サウジアラムコの最高技術責任者であるアーマド・アルコワイター氏は上記の通り発表した。

SABICのエネルギー効率化とカーボン管理を担当する副社長、ファハド・アルシェレヒー氏は次のように述べた。「SABICでは既存設備を、二酸化炭素回収を伴う水素およびアンモニア生産のために経済的に活用することができます。統合型の石油化学施設と連動したサプライチェーンでの我々の実績は、ブルーアンモニアを世界へ提供する上で重要な役割を担うことでしょう。」

サウジと日本のブルーアンモニア供給ネットワークには、水素へ、そしてアンモニアへの炭化水素の変換、そして関連して排出される二酸化炭素の回収を含む、完成されたバリューチェーンが取り込まれた。

日本は現在、水素エネルギー社会推進の最前線に立っている。2017年には、未来の低炭素社会についての国としてのビジョンと、そのビジョン達成に水素が担う役割についての要点を述べた水素戦略を、世界でも最初の国の1つとして発表した。

戦略には、商業規模の国際的な統合型水素サプライチェーン開発目標が含まれている。2030年までに年間30万トンの水素を1Nm3当たり30円で、長期目標として年間10トンを輸入する、というものだ。

水素は、海外化石燃料へのエネルギー依存の削減、そして炭素ゼロ工業の創出を通じた温室効果ガス(GHG)排出量の削減でも、日本を支援することが期待されている。

気候変動の緊急性がより明らかになり、エネルギー行列が進化する中で、アンモニアは新しいエネルギー社会の創生を促進している。サウジと日本の試験プロジェクトはその一例だ。アンモニアは、安定し持続可能な方法によって、世界で増大するエネルギー需要への供給に役立つことができるのだ。

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