
中東大手の国際的な英字新聞であるアラブニュースは、2017年にオンライン市場調査会社YouGovと提携関係を結び、信頼度の高い統計の入手が困難な地域において、国際事象に関する地域的な見解を明らかにする様々なアンケートを企画・実施してきた。
「変化しつつある地域の声」として、この地域の世論を探り、地域内外の読者に対してアラブ世界に関する信頼度の高い情報源となるべくジャーナリズムの使命を果たし、英語を話す世界中の人々に中東・北アフリカに関する見識を提供することは、我々に課せられた義務であると考えている。
本日は、YouGovとの最新の共同調査結果を報告しようと思う。ウクライナ紛争に関するアラブ市民の意識調査だ。結果は、はるか中東・北アフリカ地域(NENA)にまで影響を及ぼすことになる欧州東側で起きているこの大惨事について、啓発的な洞察を与えてくれた。
この非人道的な紛争に対し、アラブ世界は無関心であることが判明した。回答者の66%が、今回の紛争ではどちら側にもつかないとし、どちらかを選んだ回答者はほぼ均等に分かれ、18%がウクライナ支持、16%がロシア支持であった。
おそらく最も目を引くのは、調査対象14ヵ国すべてにおいて、欧米に対する不信感の高さが浮き彫りになったことだ。調査した7835人のほぼ4分の1(24%)が、紛争の非はNATOにあるとし、1割以上(13%)がジョー・バイデン大統領の責任だと答えた。ロシアを非難したのはわずか16%であった。
これは一因として、ロシアが自国のアラビア語ニュースチャンネルに多額の投資をし、大規模なオンライン広報活動に力を入れてきたせいもあるだろう。2月24日にいわゆる「特別軍事作戦」が開始される前から、無数のSNSプラットフォーム上で、ロシアはNATOの拡大主義に反応して自衛行動をとっているに過ぎないと主張する情報が、アラビア語を含む数ヵ国語で大量に流されていた。
しかしながら、この問題に関してアラブに広がる不信感の根底にあるのは、ロシアによるプロパガンダの成功もさることながら、過去20年にわたり着実に失われてきた欧米への信頼感だ。
この地域とそこに住む人々は、イラクの「解放」が引き起こした苦難と、それに続くダーイシュの台頭、シリア国民への裏切り、アフガニスタンを放棄してタリバンの手に渡したことなどを、目の当たりにしてきた。先週、ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会でマリアムフォーラム財団の共同設立者であるカーレド・ジャナヒ氏も指摘したように、イラク国民はいまだに、米国が「実質的な機能不全国家」にして去っていった復興政策の失敗によるつけを支払わされているのだ。
また、アラブ地域の視点から見れば、NATOと現在バイデン大統領が象徴している米国とは、実質的に同じ一つのものであるということも物語っている。
欧米や欧米が唱える動機への不信感も、おそらくは今回の紛争に対するアラブ人の明白な無関心の原因となっているのだろう。そうは言っても、これほど大きな国際的事象に関して66%もの大多数が無関心であるのは、この紛争がより広い世界に莫大な結果を及ぼすことを考えれば、今日のグローバル経済における持続不可能な孤立主義へと向かう憂慮すべき傾向を示していると言える。
今回の調査で、我々アラブニュースの心に触れる一つの事柄が浮き彫りになったのだが、それは今回の紛争を扱うメディアへの信頼度だ。嬉しいことに、27%の回答者が、アラブのメディアが最も信頼できると回答し、欧米メディアへの信頼度21%を僅差で上回った。しかし、情報過多でフェイクニュースが横行する時代にあって、回答者の3分の1が今回の紛争に関していかなるメディアも信用に当たらないと表明した事実は、あらゆる報道機関への危険信号と捉えるべきだろう。
これまで以上に今日、メディアの信用は与えられるものではなく、努力で獲得していくものでなければならない。
ツイッター:@FaisalJAbbas