イラン核合意(Joint Comprehensive Plan of Action)の復活交渉には、中国、ロシア、イギリス、フランス、米国、イラン、ドイツの7カ国が参加している。しかしこの交渉には、米国とイラン・イスラム共和国という特に重要な2つのプレーヤーが存在する。
イラン政権が本当に望んでいるのは、米国政府がイランのエネルギー、銀行、海運セクター、IRGC(イスラム革命防衛隊)、コドス部隊に対して課している制裁の解除であるという事実を、バイデン政権は認識する必要がある。
つまり、米国が核協議に応じない限りは、イランにとって他の当事国のスタンスはさほど重要ではない。結局、世界の金融システムにおいて重要な役割を担うのは米国なのだ。
もし米国の対イラン制裁が継続されるならば、イラン政権は新たな核合意を締結しても利益を得ることができない。多くの企業や法人が、制裁の影響を恐れてイランとの取引や貿易に消極的になるからだ。米国での事業が危険にさらされたり、主要な国際金融機関の利用が危険にさらされたり、さらには米国司法省による制裁を受ける可能性も考えられる。
米国の株式市場の時価総額は、イラン・イスラム共和国の株式市場の約50倍であることには注目すべきだ。イランの株式市場の価値が約1兆ドルとされるのに対し、米国の株式市場の価値は49兆ドル近くに上り、この数字は世界の株式時価総額の約41%を占めている。
つまりバイデン政権は、ボールがイラン側ではなく米国側にあることを認識する必要がある。もし米国政府がイラン政府と恒久的かつ効果的な核合意を行ってイランの核開発を抑制し、同政権が中東にもたらす脅威に対処することを本当に望むのであれば、米国議会の承認を求めるべきである。
また、イランの核開発とは無関係の人権侵害、弾道ミサイル計画、テロリズム、IRGCとコドス部隊に対する制裁を解除することは控えるべきである。
バイデン政権は結局のところ、米国の国際テロ組織リストからIRGC(イスラム革命防衛隊)を削除しないだろうと報じられていた。しかし、米国イラン特使のロバート・マレー氏は先週の上院公聴会で、テロ組織リストからIRGCを削除する可能性は全くないわけではないと示唆した。マレー氏は「イラン核合意に関係がない件、例えば国際テロ組織の指定について譲歩を求めるなら、我々の懸念に応えるような相互的な対応が必要だとイランに明言した」と述べている。しかしマレー氏は、IRGCの制裁登録を解除するためにバイデン政権がイラン政権に何を要求しているのかについては明言を避けた。
バイデン政権は核合意の最終案を議会に提出し検討を行うと、マレー氏は示唆した。しかし、これでは不十分である。米国政府は、イラン側の首脳陣だけでなく、米国の議員に対しても、議会が正式に承認するまでは核合意を進めないことを明確に示す必要がある。思い起こせば、オバマ政権は2015年の核合意について、議会で検討する機会を持つと述べていたが、結局オバマ大統領は議会の承認なしにイラン政権との合意に踏み切った。
米国は、核問題と関係がない対イラン制裁を解除することも控えるべきである。
マジッド・ラフィザデ博士
残念ながらJCPOAは米国議会の承認を受けずに大統領令によって締結されたため、オバマ大統領の後継者であるドナルド・トランプ大統領は議員に相談することなく、JCPOAから離脱することができた。今回も同様のことが行われれば、再びJCPOAは崩壊する可能性が高い。3月、米国の上院議員49名が共同声明を出し警告した。「あらゆる点から見て、バイデン政権は大盤振る舞いをしているように見える。政権は、イランが核活動を行っているために課された制裁ではなく、継続的なテロ支援や人権侵害を理由に課された制裁を解除することに同意したようだ。議会で超党派からの強力な支持を得られない重要な合意は、継続させることはできないだろう。」
もしバイデン大統領がイランとの核合意の再建を望むのであれば、承認を受けるために議会へ提出する必要がある。