Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

中東の来るべき新たな夜明けを作る複数の要素

シリア北西部のイドリブ県から南東6キロにあるカミナスのトルコ人兵士たち(2020年2月10日)(AFP)
シリア北西部のイドリブ県から南東6キロにあるカミナスのトルコ人兵士たち(2020年2月10日)(AFP)
Short Url:
14 Jun 2022 05:06:30 GMT9
14 Jun 2022 05:06:30 GMT9

中東はもう10年以上の間、困難な時期を経験しているが、この混乱が収まった暁には、まったく新しい状況が現れると考えてもよいのだろうか。

中東が抱える問題の一部は、数十年前、あるいは数世紀前に端を発するもので、即座の解決は望めないかもしれない。

アメリカのトランプ政権は、イランとの間で結ばれた「包括的共同行動計画」(JCPOA)として知られる多国間の核合意から一方的に離脱した。この合意には、他の6つの大国と組織、中国・フランス・ドイツ・ロシア・イギリス・EUも参加していた。アメリカは現在、二つの選択肢に焦点を合わせている。1つ目はイランに圧力をかけて自らが破棄した合意に戻らせること、もう1つはこの合意が維持不可能だと認めることである。

アメリカ政府はまた、JCPOA を度外視するというまったく別のシナリオも視野に入れている。他のJCPOA参加国を説得して、イランに核兵器を入手させないようにするというものだ。しかしこれは言うは易く行うは難しであって、実際、ドナルド・トランプ氏による合意の破棄通告は裏目に出て、イランは所有する核分裂性物質の量を制限するという義務を放棄した。したがって、アメリカのイランへの圧力を当てにするのは、あまり安全ではないだろう。

中東が抱えるもう1つの難題は、イスラエル・パレスチナ紛争である。ここにはより多くの不協和の種が含まれている。アメリカの一方的な肩入れによって、イスラエルは責任を問われることなく占領地で行動している。二国家解決は、ある時には支持されまたある時には拒絶されるが、それでも最もよくできた包括的提案である。だが、イスラエルはこれを受け入れない口実を探し続けている。2017年に、アメリカはエルサレムをイスラエルの首都と認めることで和平交渉を台無しにした。これによって、アメリカ政府は1947年に国連総会がエルサレムを「コーパス・セパラタム」(分けられたもの、特別都市)とした決議に同意した際に自らが下した決定を否定したことにもなる。 言い換えれば、イスラエルのアメリカ大使館は、イスラエルではない土地へと移動したのだ。

イスラエルの元首相ベンヤミン・ネタニヤフ氏が行った、ヨルダン川西岸地区での新入植地建設という政策は、状況をさらに悪化させた。パレスチナ人の大半、そしてガザ地区のパレスチナ人の大部分が、パレスチナの地における、自決権を含む自分たちの不可侵の権利を主張し続けているのだ。ヨルダン川西岸地区の入植地は、イスラエル政府にとってこの先も悩みの種となるだろう。私は外交官としての40年のキャリアの中で、パレスチナ問題を注視する機会を得た。イスラエルは一手ごとにパレスチナの領土を奪ってきたが、これまでのところパレスチナの人々のために譲歩したことは一度もない。これを見れば、パレスチナの大義にどんな未来があるか、およその見通しはつくだろう。

以上の長期的な問題は別にして、中東には明るい展望もある。アメリカが仲介したアブラハム合意により、UAEは同じアラブ諸国であるエジプトとヨルダンに続いて、湾岸協力理事会(GCC)で最初にイスラエルとの間に正式な外交関係を樹立した国となった。

以上の長期的な問題は別にして、中東には明るい展望もある。

ヤサル・ヤキス

おそらくはアメリカの意向で、アラブ諸国の一部はシリアの復帰に対して態度を保留しているものの、シリアをアラブ連盟に呼び戻そうという努力が続けられている。

2か月前には、エジプトが調停役となって、国連の特別顧問であるステファニー・ウィリアムズ氏を議長としたリビアの憲法上の枠組みについての協議が行われ、トブルクを拠点とする下院と国家高等評議会のメンバーが出席した。この協議により、リビアで選挙の実施が遅れている行き詰まりの状態が打開されるかもしれない。

トランプ政権が突如としてアメリカ軍をシリア領内のユーフラテス川東側から撤退させたことと、ロシアが対ウクライナ戦争に注力していることで、イランはシリアのいくつかの重要地域に向けた動きを見せている。これにより、シリアにおけるイランのプレゼンスが高まり、レバノンにおける同国の影響力がさらに強まるかもしれない。

トルコは新たな軍事作戦をシリア北部で行うと表明しており、これはクルド人民防衛隊のクルド兵を主力とするシリア防衛軍がシリア政権側と同盟を結ぶきっかけとなるかもしれない。ロシアはこのような展開を喜ぶのかもしれないが、アメリカがこの同盟を潰そうとする可能性がある。これは、シリアでの事態の動向に大きな影響を与えるだろう。

アラブの春以後の中東における、新たな安全保障の枠組みは、以上に述べた以外にも、多くの要素によって形作られるだろう。

  • ヤサル・ヤキス氏はトルコの元外相で、与党AK党の創設メンバー。ツイッターで発信している。 @ yakis_yasar
topics
特に人気
オススメ

return to top