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取引を超えたサウジアラビアと米国のパートナーシップ

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20 Jun 2022 12:06:42 GMT9

ホワイトハウスは、ジョー・バイデン米大統領が今年7月にサウジアラビアを訪問することを明らかにした。バイデン氏がアラブやイスラム教国を訪問するのは初めてであり、今回の海外訪問はこれ以上ないくらいタイムリーだ。米国の指導者がジェッダでサウジアラビアの指導者と会うことによって、米国で最も古くそしてかつてないほど必要とされている同盟関係を再活性化できるのである。

政策担当者の関心はおもに、世界的な石油供給、ウクライナにおける戦争、イランとの包括的共同行動計画あるいは核取引の行方などに限られているのかもしれない。ガソリン価格が記録的な高騰を続ける中、米国人がガソリンを入れるたびに財布の痛みが気になるのは理解できる。同様に、サウジアラビアがビジョン2030の素晴らしい機会を優先していることや、近年、人口密集地や民間インフラを繰り返し標的にしているフーシ派のドローン攻撃に起因する安全保障のニーズを優先していることも、理にかなっている。

しかし、バイデン氏がサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下に会うときに、こうした安全保障と経済問題に対して米国の社会や国民の視野が狭いことが、両国、地域、そして地球にとって機会損失になると思われる。

米国とサウジアラビアの80年以上にわたるパートナーシップは、決して取引だけではなく、単なる石油や防衛の必要性だけに関するものでもなかったことを忘れてはならない。グローバルな共産主義との戦いからサダム・フセインの撃退、そしてアルカイダとダーイシュの鎮圧にいたるまで、その中核をなす関係は、より安全で安心できる、より豊かな世界を形成することにあった。

サウジアラビアが最近になって、近隣諸国をより良く変え、豊かでまだほとんど開拓されていない可能性の空間を切り開いた一つの方法は、宗教間対話によるものである。

現代の中東を大きく揺るがした寛容と理解の飛躍的進歩の多くは、サウジアラビアが開拓してきたのだということに、米国人はほとんど気づいていない。

この取り組みは、2008年にアブドッラー国王が世界的な宗教間会議を主催したことに始まり、その数ヵ月後には国連で宗教間イニシアティブの演説を行った。私はマドリードとニューヨークで開催された両会議に参加できたことを、大変光栄に思っている。
4年後、サウジアラビアの指導者たちは、宗教間の開かれた対話のための国際機関であるアブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センターを立ち上げた。この国際センターは国王の没後も引き継がれ、世界の寛容の声を強化するために日々活動している。
今日、もっとも刺激的な変化のいくつかは、サウジアラビア自体の内部で起こっている。

寛容の風はかつてないほど強くなっている。そしてその中心はサウジアラビアである。

ラビであるマーク・シュナイアー氏

ビジョン2030の変革計画は、経済の多角化に焦点を当てているが、それだけではない。文化観光産業の発展、女性の自由の拡大、そして私の分野に近いところでは宗教的寛容の拡大など、社会の全面的な変革を求めているのだ。

サウジアラビアは、反ユダヤ主義的な文献の遺産が残らないように、教材の改良に多大な資源を投入してきた。政府は国中で憎しみの伝道者に対する不寛容政策を実施することに成功した。かつて悪名高かった宗教警察も無力化された。

海外では、非政府組織でありながらサウジアラビアが主導するムスリム世界連盟が、イスラム教徒だけでなく、キリスト教徒、シーク教徒、仏教徒を相手に裁判を開いている。また、ユダヤ人とも深く関わっており、アウシュビッツでホロコーストの惨禍を記念することさえあった。私は、サウジアラビアの全世代が歴史の改ざんから解放されて育っていることを心強く思っている。

このように新しい多元主義を受け入れることで、経済協力だけでなく、民族間の友情と愛を育むたくさんの新しい機会が生まれる。皇太子の発言には、国際社会がパレスチナ問題を公正かつ公平に解決するのであればイスラエルを「潜在的な同盟国」とみなすという、非常に楽観的な見方が含まれている。たとえ大きな課題が残されていたとしても、将来のある時点における国交樹立を想像することは、もはやまったく非現実的なことではなくなっているのだ。

バイデン氏は、サウジアラビアのこのような考え方の進化に敬意を表し、現在存在する新たな可能性の領域を活用する方法を探すべきである。もちろん、バイデン氏が地政学的に最優先事項としているのは、中国とロシアの閉鎖的な社会との協力よりも、米国をはじめとする西側諸国との緊密な協力関係を確保することであり、これは理にかなっている。

しかし、サウジアラビアが新たなコミュニティを開拓し、異文化理解の道標になろうとする決意を固めたことは、長年にわたって紛争や争いが絶えないこの地域において、さらに広範囲な利益をもたらすことが証明されるかもしれない。

異宗教間レベルにおける米国とサウジアラビアの新たな同盟関係は、紛争解決から中東全体の少数民族の保護にいたるまで、あらゆるものに波及効果をもたらす可能性がある。そしてイスラム世界におけるサウジアラビアの指導的役割を考えると、このパートナーシップはさらに遠くまで及ぶ可能性がある。

私は、長年湾岸で宗教間外交に携わってきた者として、寛容の風はかつてないほど強くなっていると言うことができる。そしてその中心はサウジアラビアである。米国を味方につければ、サウジアラビアは精神的、道徳的な指針を求める何億人もの人々に、良い意味で強力な影響力を行使することができる。これは、米国の指導者が無視すべきではない機会である。

 ラビであるマーク・シュナイアー氏は、民族理解基金の会長である

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