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TRSDCのエネルギー事業、サウジに大きな意義をもたらす可能性

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02 Aug 2022 03:08:35 GMT9
02 Aug 2022 03:08:35 GMT9

開発事業者としてのザ・レッド・シー・デベロプメント・カンパニー(TRSDC)は、ユニークなホスピタリティ・プロジェクト、サステナビリティの強いメッセージ性、「ビジョン2030」へのあらゆる側面への関与によって人々に知られている。

しかし、私たちにとって開発という概念は、物理的な建物という「レンガとモルタルの固定資産」をはるかに超えるものだ。公共投資ファンドによって設立された企業として、私たちが考える開発とは、単に不動産価値を生み出すだけではなく、地域社会全体に経済的、学術的、職業的な機会を提供することだ。

その好例が、TRSDCのプロジェクトにおけるモビリティの提供に対する取り組みだ。リヤドの街中はまだテスラやタイカン(Taycan)の電気自動車で溢れてはいないかもしれないが、アブドル・ラティフ・ジャミールのリビアン(Rivian)への出資からKAECの新しいルシード工場に至るまで、サウジアラビアの著名なビジネスリーダーは長年、この技術に投資してきたのだ。

同様に、創業以来の当社CEOの主軸はネットゼロ・プロジェクトであり、私たちのすべての車、船、飛行機は、可能な限り持続可能な燃料を使用することになっている。

それでは、単純に電気駆動の自動車やバス、船を買えばいいということだろうか?当社の電気はすべて自社の太陽光発電所から供給されるが、それだけに投資しているわけではないのだ。

当社はサウジアラムコによるグリーン水素への投資をヒントにして、パートナー企業とともに、プロジェクト全体でクリーン燃料輸送のアプローチの概要を示すため、フィージビリティスタディ(実現可能性調査)を実施した。

私たちは単に汚染ゼロの輸送網を提供するだけではなく、新しい燃料エネルギーシステムの管理、サービス、開発、そして将来に向けた構築に向けて、何百人もの熟練技術者、アナリスト、エンジニア、プログラマーのための新しい必要条件を示そうとしているのだ。

過去数十年にわたり、サウジが若者の技術・工学教育に着実に投資してきたことの当然の帰結として、TRSDCのような企業は自らについて、新世代の起業家が国内需要を喚起し増大させるための推進役として位置づけている。

新しい発明ではないものの、燃料としての水素とクリーンなモビリティの動力源としての電気は、従来のマーケットリーダーの立場を逆転させ、伝統よりも新技術を受け入れる流れの中、サウジの起業家たちが活躍する機会を広げているのだ。

流通やラストマイル・デリバリー(届け先までの最終1マイルの配送)の概念は、どんな製品であっても常にその成否を左右するものであり、燃料も例外ではない。例えば、欧米で電気自動車が普及したのは、人気のある駐車場に充電ステーションを設置する投資が増えたからである。結果として、電気自動車を所有することの難しさが緩和されたのだ。

TRSDCのポートフォリオにあるようなギガプロジェクトでもこの問題に取り組んでおり、将来の航空機向けの水素燃料ステーションの設置に先鞭をつけようとしている。創業の理念を守り、新規利用企業のリスクを受け入れることにより、当社はテストベッド・アプリケーションを提供しつつ、将来の燃料の供給をサウジ全体で容易に行うための基礎を築いている。

エンジニアでもロケット科学者でもプログラマーでもない私が、このような新しいテクノロジーにどう関われるのだろうか?当社のモビリティチームは、最も持続可能な海上輸送システムを提供するという使命の下、何年も費やし、当社のすべての沿岸プロジェクトにおいて、人や製品を輸送するためのあらゆる種類の船についての最善の選択肢を研究、計画、分析してきた。

私たちは国内外の企業と幅広く関わった後、水素分野の既存事業主からの支援を受け、水素燃料船の開発に着手した。最終的にサウジ国内で建造、艤装を行うことを目指している。

なぜ海外から輸入するかというと、開発にさらにもう少し時間をかければ、私たちがサウジの企業や学卒者にビジネスチャンスを提供することが可能となり、紅海沿岸の再生に一役買ってもらえるからだ。

そして、私にとってはこれこそが、当社の開発ビジョンの真の目的なのだ。新しい観光地やホスピタリティを創造し、並行してサウジの豊かな人材と起業家精神をはぐくむことにより、あらゆる分野において、海外依存や地域の輸入への依存からの脱却を図るのである。

私は、今が燃料テクノロジーとサウジにとって非常にエキサイティングな時期であると見ている。しかし、これは偶然の産物ではない。非電化地域で電力と水を供給するための技術革新の必要性から、サウジ国内の企業は何年も前からさまざまな燃料技術を改革し、活用してきたからなのだ。

これにより、TRSDCのようなプロジェクト事業体は、既存の技術プールを活用し、新しいモビリティやライフスタイルのコンセプトとの統合に自信を持って乗り出すことができるようになった。

TRSDCが、燃料も技術も国内で整備できることを踏まえ、自信を持って水素を動力源とするコミューターフェリーや電気水上タクシーに関する技術革新と投資を行えるのは、国のビジョンと方向性が定まっているからである。

革新や先進性それ自体が素晴らしいことだが、私たちの価値観が独り歩きしていないこともまた、安心感を与えてくれる。TRSDCは、観光地の再生事業を通じて、そして、新しいエネルギー供給の基礎を築き、石油をはるかに超えたエネルギー分野における世界のリーダーとしての地位を維持するサウジ王国を支援することにより、「ビジョン2030」に貢献できると考えている。

  • リチャード・ホーズ(Richard Haws)氏は、紅海開発会社(TRSDC)の海洋担当ディレクター。
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