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イラン体制が国内で革命に直面しているのは驚きではない

イランのマフサ・アミニさんの地元に数千人が向かう中、自動車の上に立つ女性。(AFP)
イランのマフサ・アミニさんの地元に数千人が向かう中、自動車の上に立つ女性。(AFP)
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12 Dec 2022 08:12:58 GMT9
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マジッド・ラフィザデ博士

イラン体制は1979年の確立以来、主にその革命の理想を国境を越えて輸出することに集中する一方で、国民のニーズを無視してきた。

体制を創設した最高指導者のホメイニ師が「我々の革命を全世界に輸出する」と宣言したことはよく知られている。イラン体制のこの重要な使命は憲法にも盛り込まれており、次のように明記されている。「本憲法は、国内外での革命の継続を確実にするために必要な基礎を提供する。特に、国際関係の発展において、他の民衆運動と共に、単一の世界共同体を形成するための道の準備に努める」

革命を輸出するためにイラン体制が採用してきた主要な戦術のうちの一つは、他国のコミュニティを扇動して国家に対する蜂起を起こさせることでイラン体制が利用できる混乱を作り出すやり方だ。例えば、ホメイニ師は権力を掌握した直後に、自国政府に対して蜂起するようイラク国民に直接呼びかけた。その時の言葉は次のようなものだった。「尊敬すべきイラクの人々よ。あなた方は英国をイラクから追い出した人々の子孫だ。立ち上がり、あなた方の国から犯罪者の手を切り落としてしまいなさい。この腐敗した体制があなた方の全てを破壊してしまう前に。おお、ユーフラテスとティグリスの諸部族よ。国民全員で一致団結しこの腐敗の根を断ちなさい。機会が失われてしまう前に」

革命を輸出するためにイラン体制が用いるもう一つの戦略は、他国の中に代理勢力を確立し支援することで、自らの宗教的・イデオロギー的利益を推進するというやり方だ。例えば、イスラム革命防衛隊およびその精鋭部隊であるコッズ部隊はレバノンに潜入してシーア派民兵組織を確立し、それがやがてヒズボラの創設につながった。イラクでは、イランは民衆動員部隊として知られる民兵組織集合体を支援している。シリアでは、イラク、パキスタン、アフガニスタン、レバノンから来たシーア派部隊・民兵組織を集めて連合軍を作った。イエメンでは、レバノンでヒズボラが行ったのと同様に、フーシ派を通して政治的現実を作り出すことを目指している。

他国に民兵組織あるいはテロ組織を確立することができない場合、イラン体制は代わりにテロリストの小集団を確立するか暗殺者を雇うかして、テロ攻撃を実行させたりジャーナリスト、政府関係者、反体制派を暗殺させたりすることを試みる。例えば、体制の外交官の一人であったアサドラ・アサディ氏は、2018年のテロ計画に関与したとしてベルギーで20年間の禁固刑に服している。同氏は、パリで行われるイラン人反体制派集会の会場を爆破する目的で爆発物を共犯者に届けたとされる。この計画が実行直前に発覚していなければ、国際的な要人や多くの欧州議員を含む数百人が犠牲になっていた可能性がある。

若い世代は体制にうんざりしており、現在の政治体制のもとでは進歩の見込みはないと思っている。

マジッド・ラフィザデ博士

イラン体制は、他国に革命を輸出するために自国のリソースを費やし続け、多大な政治的・経済的資本を投じる一方で、自国民の繁栄を無視し、体制を批判する者の口を封じている。また、国民の言論・報道・集会の自由を抑圧している。

イランでは多くの人が政治的不満を抱えているが、今も続いているデモにおいては悲惨な経済状況も重要な役割を果たしている。経済への対応や、体制が国のリソースを外国の代理勢力に流出させていることに対し、大きな不満を抱える人々が増えているのだ。イラン通貨の相次ぐ切り下げは彼らの生活水準に悪影響を与えており、人々の購買力を大きく下げている。イランの平均月給は約350万リヤル(100ドル)だ。そのため、都市部における平均家賃はフルタイム労働者の給与を上回ることが多い。食費、医療費、交通費、学費などの他の基本的な必要出費を考慮に入れなくてもそうなのだ。

若い世代は体制にうんざりしており、現在の政治体制のもとでは進歩の見込みはないと思っている。例えば、テヘランのソヘイラさん(22)はこう語る。「私の父は学校の教師です。父は毎日、学校が終わってからもスナップ(配車サービス企業)の運転手として働いています。私の母は工場で働いていますが、そのシフトが終わると住宅のクリーニングをしています。二人とも1日に約15時間働いているのです。私たち(子供)は両親とめったに会えません。一生懸命働いているのにやりくりできません。(ムッラーの)体制には希望はありません」

したがって、40年以上にわたって他国に革命を輸出することに集中する一方で自国民を無視してきたイラン体制が、現在国内で危機に直面していることは何ら驚くべきことではない。

  • マジッド・ラフィザデ博士はハーバード大学出身のイラン系アメリカ人政治学者。ツイッター:@Dr_Rafizadeh

 

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