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海洋に関する合意に続き、最優先されるべきは気候変動への取り組み

長く、深く成長した南極半島ラーセン棚氷の裂け目。(ロイター)
長く、深く成長した南極半島ラーセン棚氷の裂け目。(ロイター)
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13 Mar 2023 08:03:13 GMT9
13 Mar 2023 08:03:13 GMT9

先週、降って湧いたように、今日ではめったにない大きな朗報が世界中で見出しを飾った。国際社会は、20年にわたる骨の折れる交渉の末、地球上の生物多様性における最も重要な側面である海洋生物多様性の保全に関する歴史的な合意に到達することができた。

メディアの注目がずいぶん前にこの話し合いから逸れていたこともあり、今回の合意は意外なものであった。話し合いは非常に長い時間をかけて行われ、他の多くの長期にわたる交渉と同じように、時には歴史のゴミ箱に向かっているように思えた。

公海における海洋生物多様性に関するこの条約は、海洋の健全性について規定された最も重要な合意の1つとなる。海洋は、その膨大な鉱物、植物、動物資源に対する重大な誤用と乱用により、何十年にもわたって危機的な状態に陥っている。全体として、公海に関する新条約では、世界の海の約30%を国際法によって管理される保護海域に転換することを模索する。これら海域はこれまでどこの国にも属さず、ゆえにさまざまな企業やコミュニティーによるあらゆる種類の大規模な乱獲の対象となっていた。

過去20年間、公海は無法地帯となり、誰もが何の罰も受けることなく何でもすることができていたので、この条約の締結は大いに喜ばしい。世界は、石油や希少鉱物から海洋動植物に至るまで、資源に対してより貪欲になるにつれて、そのような規制されていない産業によってもたらされる長期的な被害を少しも考慮せずに、海底から資源を採取し始めた。

かつて海に影響を与えていた人間の活動といえば、ほとんどは漁業に関するものであったが、近年の技術の進歩により、資源の採取目的で海底を深く掘り下げることができるようになった。また、電気自動車や半導体の時代が到来し、これら資源を以前よりもはるかに大量に必要とする新しい製造プロセスが登場したことで、陸上では希少な鉱物や金属に対するニーズが高まっている。

この合意が、直近3か月という期間でまとまった生物多様性を対象とする2つ目の主要な取り決めであるということもまた喜ばしい。12月に国際社会は、陸生生物多様性の保護を目指す昆明・モントリオール生物多様性枠組を採択した。

海洋と陸生の両方の生物多様性がこれまで何十年にもわたって危機に晒されるなか、この2つの合意は早期に実現することはできなかった。しかし、今後の長期的な成功は多くの要因に左右される。何よりもまず、各国は約束したことを実際に実行する意思があるかということだ。特に富裕国は、貿易から気候変動などに至るまで、幅広い国際協定での約束を果たした実績が乏しい。

気候変動とその地球への影響により、数百万とは言わないまでも数千の動植物種が絶滅することになる。

ランヴィル・S・ナイヤー

貿易において、富裕国はドーハ開発ラウンドの下で発展途上国のニーズを促進することを約束したものの、最終的にはラウンドが決して完了していないとし、むしろ今や崩壊寸前となっている世界貿易機関の合意に違反してきた。気候変動交渉についても話は同様かさらに悪く、先進国は排出量の削減から発展途上国のニーズに対する資金提供に至るまで、繰り返し取り決めに違反し、約束を果たさずにいる。

したがって、どちらの生物多様性に関する合意も、富裕国による同じような振舞いの犠牲になる可能性がある。金銭的ならびに能力開発に関連する追加のリソースがなければ、それら合意は効果的ではないであろう。

しかし、これら2つの合意に対するさらに大きな脅威は、気候変動をめぐる交渉の失敗である。地球温暖化が悪化し続け、異常気象が世界中でますます頻繁に発生するなか、陸上および海洋の生物多様性に対する脅威が増大している。サンゴ礁の死滅、海洋生態系の回復不能な被害、産業や農業目的での大規模な伐採による森林、特に原生林の犠牲など、世界ではすでに生物多様性の大規模な被害が生じている。

国際自然保護連合ほかさまざまな組織は、気候変動とその地球への影響により、数百万とは言わないまでも数千の動植物種が絶滅することになると繰り返し警告してきた。言うなれば、生物多様性の保全に関する2つの主要な合意の成功は、世界、特に富裕国が気候変動に緊急に取り組む真剣さの度合いに完全にかかっている。

この点では、富裕国のこれまでの行いが、地球温暖化が急速に進行し、日を追うごとに地球への影響がより致命的かつ広範になりつつある、極端な気象現象の頻度が増え続けている主な理由となっている。

国際社会が、過去3か月間に生み出された勢いを利用し、最近の気候変動交渉の度重なる失敗と決別することが重要である。世界の国々、特に先進国が、気候変動の交渉において、これら2つの合意の成功に向けた交渉で示したものと同じ精神と姿勢を示すことができれば、世界に変化をもたらし、持続可能性に関する限り、これまでとは違う地球を確保することが可能となる。

自然に対する協力とコミットメントの精神は、生物多様性に関する合意の到達で示された。そして、この勢いが消滅または散逸することがあれば、それは残念極まりない。

アラブ首長国連邦が今年後半に開催されるCOP28気候変動会議のホスト準備を進めるなか、主要な利害関係国・機関に連絡を取り、世界の温室効果ガス排出量に関する実行可能かつ真剣な合意に到達するために、世界が何をする必要があるかについて、何らかのコンセンサスを構築し始めることで、同国は重要な役割を果たすことができる。各国はまた、生物多様性に関する合意到達に費やされた何十年にもわたる懸命な努力を守る必要がある。

期待薄のときに成功がもたらされることがある。アラブ首長国連邦と国際社会がこの待望の良いニュースを発信し、世界が2030年までの国連の持続可能な開発目標の達成に向けて動き続けるために必要な3つの合意を完成させる時が来たのかもしれない。

  • ランヴィル・S・ナイヤー氏はメディア・インディア・グループの編集責任者である。
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