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アラブ、北アフリカ、サヘル諸国に対する現実的な危険をはらむスーダン危機

2023年5月15日、ダルフールから来たスーダン人難民。チャドのクーフルンにて。(ロイター)
2023年5月15日、ダルフールから来たスーダン人難民。チャドのクーフルンにて。(ロイター)
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15 May 2023 08:05:41 GMT9

スーダンの地政学的な立場から、同国の危機がサヘルおよび北アフリカ諸国をはじめとする地域に波及するのはある程度避けられないと考えられている。これらの国々は、特に共通するアラブの文化的および政治的結びつきを考えると、現在進行中の紛争の影響を受けないはずがない。

スーダン危機と同じようなことが北アフリカ諸国で起こる可能性によってもたらされる危険は、他のアラブ諸国にとって最大の懸念となっている。この認識は、地域的にいかなる影響があっても、自分たちは無傷でいられると考えていた人々の間で特に高まっている。「無傷でいられる」というのは、2011年と2018年の反政府運動の波から逃れてきたというかなり誤った考えに基づいたものであった。実際には、それら暴動から被害を免れた国はひとつも存在しない。

そして、スーダン危機がこの地域全体に衝撃を与えることは間違いのないことだ。状況や関係する組織が異なると考えられるため、スーダン危機とは異なる結果になるという結論は避けるべきである。

リビアは、東西間の権力闘争から抜け出せないでいること、さらには敵対する勢力おのおのに、スーダン危機に関わっている組織との複雑な関係が存在することを考えると、最も憂慮すべき状況にある。

次に懸念されるのは、チャドの政治情勢への潜在的な影響と、それに伴うマリやニジェールを含む他のサヘル諸国に起こり得る安全保障や人道上の問題である。チャド政府は、自国の反政府武装勢力がスーダンの即応支援部隊と何らかの形での同盟を模索する可能性があることをおそらく当然のこととして懸念している。

また、チャドとリビアの政治的脆弱性の増大によって、外国の軍事介入につながり、さらなる問題を引き起こす可能性がある。このような混乱はテロ集団に絶好の活動の場を提供し、サヘル地域における自由な移動を可能にする。これらグループは、2011年の反政府運動とその後の地域全体の治安の欠如によって勢力を増した。「アラブの春」の反政府運動後にこの地域の治安が比較的改善され、それに伴ってさまざまなテログループの活動が減少したことはおそらく言うまでもない。

スーダン危機によって、チュニジアとアルジェリアの国境地域でもテロ組織が活動を活発化させる可能性がある。これらグループは、チュニジアのシャンビ山およびマリ北部に続くアルジェリアとリビアの国境地域全域を拠点としている。このような状況下で、2013年にアルジェリアのティゲントゥリン地域にある軍事基地を狙ったような攻撃が起こる可能性が高まっている。

その作戦におけるテロ組織の武器発射台は、ニジェールとリビアの国境地帯であり、彼らはフランスによるマリへの軍事介入を攻撃の正当性の理由として挙げた。アルジェリアは、外国の軍事介入を回避するようなスーダン危機の解決策が必要であるとの正論を繰り返し述べている。外国の軍事介入が、この地域におけるさまざまな危機激化の主な理由の一つであると考えているのだ。

スーダン危機を受けて、チュニジアとアルジェリアの国境地域でテロ組織が活動を活発化させる可能性がある。

モハメド・アル・スラミ博士

さらに、北アフリカ諸国は、不法移民を乗せた船がヨーロッパに向かって出航する地中海の南側に位置しているため、不法移民、亡命希望者、あらゆる形態の組織犯罪によってもたらされる安全上の脅威を懸念している。近年、サヘル諸国の状況悪化により、北アフリカ諸国に向かう亡命希望者や不法移民の数が急増している。

北アフリカ諸国は、以前は単なる移民の通過点であったが、不法移民の流入に対するヨーロッパの規制が強化されるなか、現在はヨーロッパへの不法な入国を試みる者たちのハブとなっている。これにより、北アフリカ諸国ではいくつかの国内問題が起こっており、直近ではアフリカ人難民や移民に対するチュニジアの扱いを理由に、人種差別をしているという非難が同国に浴びせられた。これを受け、チュニジアの大統領はそのような非難を退けるための釈明を発表するまでに至った。

最後に、数十年前から囁かれるサヘル諸国の構造的な問題が、解決困難と思われるスーダン危機の自国への波及を防ぐ能力を低下させる可能性がある。紛争が続けば、地域全体がいわゆる「アラブの春」の第一波に先立って広がったような状況に陥る可能性がある。

これら国々にとって、スーダンの平和的解決に向けた国際的な取り組みに貢献するとともに、自国の安全と安定を維持するための努力を強化することが今や不可欠となっている。

  • モハメド・アル・スラミ博士は、国際イラン研究所 (Rasanah) の所長である。ツイッター:@mohalsulami
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