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アフガニスタン、イランにタイムリーに現実を突きつける

警備にあたるタリバンの戦闘員。イランとアフガニスタンの間のイスラム・カラ国境検問所。(AFP/ファイル)
警備にあたるタリバンの戦闘員。イランとアフガニスタンの間のイスラム・カラ国境検問所。(AFP/ファイル)
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08 Jun 2023 12:06:18 GMT9

イランはここ数ヶ月で、アフガニスタンとの今後の二国間取引においてタリバンが自己主張を強めるであろうということに気づいた。誰が見ても、アフガニスタンの押しの強いアプローチは、同国のパキスタンに対する行為からすれば一貫しているように見える。イランがタリバンに我慢できなくなっているのは、自国の影響力を過大評価した結果だ。

ヘルマンドとバルーチェスターンの境界線沿いで最近発生した武装衝突により数人の死者が出た。イラン側で少なくとも2人、アフガニスタン側で1人の兵士の死亡が確認されている。この激しい戦闘には自動機関銃、迫撃砲、ロケット砲などが使用されたほか、イラン側はガンシップヘリコプターやドローンを使用するまでに至った。タリバンはイランの国境検問所を少なくとも1ヶ所占拠したが、その後高官の命令で明け渡した。

イランメディアの推計では、2020年以降アフガニスタンとの国境沿いで散発的に発生している衝突により、イラン側では軍人と民間人を合わせて50人以上が死亡している。今回新たに戦闘が発生した結果、イランは上級司令官(イラン法執行部隊副隊長ガセム・レザエイ准将およびイラン陸軍地上部隊隊長キオマール・ハイダリ准将)を、アフガニスタンのニームルーズ州に接するスィスターン・バルーチェスターン州に派遣した。イランは衝突の現場ではなく、両国間の通商の主要な経路であるミラク・ザランジ国境検問所を閉鎖した。

アフガニスタン側から侵入しようとしていた密輸業者に対しイランの国境警備隊が発砲したとイラン側は主張したものの、数十年来の緊張や衝突の真の原因は、イランが水資源を継続的に求めていることだ。アフガニスタンは近年、ヘルマンド川にダムをいくつか建設している。直近に建設されたカマル・カーン・ダムは、2021年の米軍撤退の前にアシュラフ・ガーニ大統領(当時)によって落成された。イランは外交レベルおよび政府報道官経由で正式に懸念を表明した。アフガニスタンの強硬な姿勢と激しいレトリックによって、その懸念はさらに高まった。2021年3月の同ダムの落成の際、ガーニ大統領は次のように述べた。「アフガニスタンはもう誰にもただで水を与えない。イランは水と引き換えに燃料をアフガニスタン国民に提供すべきだ」

1973年のヘルマンド川水利協定により、アフガニスタンはヘルマンド川の水を年平均毎秒22立方メートル+4立方メートル(「善意と兄弟の関係」による追加分)の速度で流すことに同意した。ヘルマンド川はイランに入ると同国南部の最も厳しい乾燥地帯を流れる。

イランのイブラヒム・ライシ大統領は5月18日、スィスターン・バルーチェスターン州を訪れた際に、アフガニスタンの支配者らは「我々の要求をいつものことと見なすのではなく非常に真剣に受け止めるべきだ」と述べた。隣国同士である両国の間には外交的接触があるが、イランは依然としてタリバン政権を正式に承認していない。

イランの見方では、今のタリバンは、9.11以前にヘラートでイラン人外交官8人を殺害した時のタリバンとは違う。長年の物的・経済的支援や避難所提供のおかげで、タリバン指導部はイランに対して、非常に友好的ではないにしても、より実利的なアプローチを取るようになった。

最も水不足が深刻な国の一つであるイランは、緩和策を講じるには既に手遅れな状態だ。

モハメド・アル・スラミ博士

20年後、タリバンはアフガニスタンでのアシュラ(シーア派の祭日)の行進を許可し、そこで説教を行い、ついにはシーア派の閣僚・顧問を数人任命した。アフガニスタンのシーア派聖職者らは様子見のアプローチを取った。アフガニスタンのシーア派がタリバンに我慢できなくなったのはつい最近で、イランで情勢不安が高まりタリバンに対する姿勢が変化し始めたのと同時期のことだった。

最も水不足が深刻な国の一つであるイランは、緩和策を講じるには既に手遅れな状態だ。トルコやパキスタンなどの隣国とは異なり、国の数多くのアジェンダの中に気候変動への適応は含まれていない。

イランが得る権利のあるヘルマンド川の水資源のシェアをアフガニスタンが与えていないというイラン側の主張は本当に正確なものだろうか。両国間で1973年に結ばれた協定では、その後に起こる気候変動もアフガニスタンのニーズも見込まれていなかった。

同様に、タリバンは米国からの支援を受けていた以前の政府とはあらゆる点で反対の立場を取っているが、イランとの水資源共有協定は例外だ。1973年の協定では、アフガニスタンはイランに向けてヘルマンド川の水を年平均毎秒22立方メートルの速度で流すものとされている。これは年平均8億2000万立方メートルに相当する。同協定の第5条は「アフガニスタンはヘルマンド川の水の残量に対する全ての権利を保持し、自国が選択した通りに水の使用または処分を行うことができる」として、アフガニスタンに残りの水資源に対する完全な権利を認めている。

第5条の最後の部分ではイランの水資源の権利が8億2000万立方メートルに制限されているものの、この時点では持続的な干ばつやアフガニスタン国民による水消費量の増加は想定されていなかった。イランは1970年代後半からカマル・カーン・ダムが稼働する2021年までのほとんどの間、国内の紛争を理由に、ヘルマンド川協定で認められている量を超える水を受け取った。国際法もアフガニスタンに有利だ。アフガニスタンは過去40年間、国内紛争のせいで身動きがとれなかったため、その権利を行使することができなかった。

アフガニスタンによるダム建設はイランの怒りの原因かもしれないが、現実にはアフガニスタンからイランに流れる水量を測定するための流量観測所が十分にないのだ。両国は協定に従って、協力して共同流量観測所の建設場所を決定する必要がある。

興味深いことに、イランは共同流量観測所に反対する一方で、水供給が減っていると激しく不満を言っている。平和的な解決に至ることができなければ、イランはカマル・カーン・ダムを破壊するという遠回しな脅迫を実行に移すかもしれない。アフガニスタンはそれを宣戦布告と考えるだろう。イランは湾岸諸国との関係を修復したかもしれないが、北西部のアゼルバイジャンとの国境の情勢への対処に格闘しつつ新たな前線を設ける余裕はないはずだ。

  • モハメド・アル・スラミ博士は国際イラン研究所(ラサナ)の所長を務めている。

    ツイッター: @mohalsulami
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