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国連のイスラエル入植地に対する「ブラックリスト」によってボイコット運動がさらに過熱

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16 Feb 2020 04:02:00 GMT9
16 Feb 2020 04:02:00 GMT9

国連人権理事会(UNHRC)がようやく先週発表した、ヨルダン川西岸と東エルサレムのユダヤ人入植地で事業や運営しているイスラエルや国際的な企業112社をリストアップした報告書の発表に対し、イスラエルとアメリカは即座に非難するコメントを発表した。

国連人権理事会は委託によって報告書とデータベースの作成をしたが、パレスチナと人権団体は2016年、この報告書とデータベースを直ちに「ブラックリスト」だと反応していた。

ドナルド・トランプ大統領が中東和平案を発表してから2週間後にこの報告書が発表され、イスラエルとアメリカの指導部は怒りを露わにした。トランプ大統領の計画では、西岸地区にある150以上の不法入植地を併合する権利を、イスラエルが持つことになっていた。ただ、これは明らかに国際法に違反した内容である。国連人権理事会の報告書は、トランプ大統領が提案した和平案が違法であることと、一部の国ではこの和平案で取引を得ている企業が国際法や国内法の下で処罰を受ける可能性があるという事実を改めて強調したものとなった。

これに対し、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、ユダヤ人入植地で活動する企業のデータベースに関する情報を提供するつもりはないと述べた。「この報告書は、国連にはびこっている執拗な反イスラエルの偏見を裏付ける以外に意味を持つものではない。」ポンぺオ国務長官は昨年、アメリカの和平案に国際法に抵触している部分はないと主張しているが、同国の数十年来の政策とは一線を画している。

バラク・オバマ大統領が政権を担っていた2016年12月、アメリカは国連安全保障理事会がヨルダン川西岸、ガザ地区、東エルサレムのイスラエル人入植地が違法であるという見解を持ち、拡大の中止を要求する決議を採択することを支持した。

2018年にトランプ政権は、イスラエルに対する根強い偏見があることに抗議をして国際人権理事会から脱退した。さらに今回の報告書の発表を受けてイスラエル外務省が先週、国連機関との連絡をすべて絶つという声明を出した。

ドナルド・トランプ大統領が中東和平案を発表してから2週間後にこの報告書が発表され、イスラエルとアメリカの指導部は怒りを露わにした。

オサマ・アル=シャリフ

発表されたデータベースの内容は基本的に、パレスチナ、特にBDS(ボイコット、資本引き上げ、制裁)の活動に軍配が上がった形となったが、報告書をまとめ発表した国連人権高等弁務官事務所(UNHCHR)は先週、このリストには司法や法律における権限は持たないとコメントし、また、ブラックリストではないとしている。

BDSは、ユダヤ人入植地で作られた製品や、そこでビジネスを行っている企業をボイコットする草の根運動であり、世界的な広がりを見せており、アメリカを始めとする欧米諸国を中心に賛同する人が増えている。

国際人権高等弁務官事務所のこの報告書の発表は、パレスチナ、アラブ、イスラム諸国が受け入れを拒否した「アシンメトリック」なトランプ案に対して送った、イスラエルの賛辞を消沈させるものとなった。ネタニヤフ首相は「私たちに対してボイコットすれば、かならず自分たちがボイコットされる方に回るだろう。」とコメントし、対立候補であるベニー・ガンツ氏も、報告書の発表を非難し、国連人権理事会は「影響力を持たない偏見に凝り固まった組織」と述べている。

とはいえ、この報告書が西岸地区の入植地併合を支持するイスラエルの指導者たちを揺さぶる内容だったことは間違いない。

何よりも危惧すべきは、このリストがイスラエル経済に悪影響を及ぼしかねないということだ。個人や国がペナルティを科すようになれば、そこには、Motorola Solutions、Expedia、Airbnbなど、世界中で大きなビジネス上の利害を持つ112社に対するボイコットや訴訟も考えられる。すでにすべての入植地にイスラエルの法律が適用されているため、西岸と東エルサレムで違法な前線地となっている土地における経済を、イスラエルから離すことがほぼ不可能であるという問題が存在する。

2015年、EUはイスラエルの入植地で製造された製品が明確にわかるようにするガイドラインを発表し、そのような製品の輸入を全面的に禁止する圧力を強めているが、成功する見込みは薄い。オスロを含むノルウェーの6都市は、すでにイスラエル入植地からの商品やサービスを禁じている。BDSをはじめとする人権団体は、ヨーロッパ、カナダ、アメリカで消費者意識向上キャンペーンに積極的に参加している。今やイスラエルにとってBDSは、イラン、ハマス、ヒズボラをはるかに上回る、最も深刻な脅威な存在だと言っても過言ではない。イスラエルがアメリカやヨーロッパの同盟国に対し、イスラエルのボイコットは犯罪であると定める法律を成立させるよう圧力をかけているのはこのためである。アメリカ、フランス、ドイツの国内には、イスラエルの政策が反ユダヤ主義と変わらないと批判する声もある。アメリカ議会では共和党が反BDS法案の可決に向けて動いている。

皮肉なことに、イスラエルとアメリカがパレスチナに対して、抑圧、脅迫、征服を目的として、経済ボイコットという武器を使い続けていることである。先週、イスラエルはパレスチナ自治政府が徴収する税金の没収に加え、パレスチナ人によるヨルダン経由の農産物輸出を停止した。アメリカは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、パレスチナ自治政府、そして東エルサレムのパレスチナ病院に対するすべての援助を停止した。

国連の報告書によって、国際法に照らしてイスラエルの違反行為や戦争犯罪と戦うパレスチナ側に理があることを明らかにしている。これから長く険しい道のりが続くが、国際社会においてイスラエルに説明責任を負わせるために、パレスチナ自治政府はあらゆる法的選択肢を模索すべきだ。

  • Osama Al-Sharif:アンマンを中心に活動するジャーナリスト・政治評論家
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