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パンデミックは人類の最良の側面を示す機会である

24 Mar 2020
2020年3月22日、レバノン・ベイルートの教会でコロナウイルスへの予防措置として防護具を着用し消毒スプレーを噴射する自治体職員。(AP写真/ビラル・フセイン)
2020年3月22日、レバノン・ベイルートの教会でコロナウイルスへの予防措置として防護具を着用し消毒スプレーを噴射する自治体職員。(AP写真/ビラル・フセイン)
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「楽観主義は道徳的義務である」という有名な引用句がある。私はここ数日、様々な形で自主隔離を行っている友人たちと話す際、この引用句について思いを巡らせた:家に閉じ込められた48時間後には口うるさい夫を殺す準備ができたと言ってきた悩める女性から、今回のことを職業生活のプレッシャーから自分を解毒してリフレッシュする機会として受け入れた人まで、様々だ。このパンデミックが18ヶ月以上続くかもしれないと専門家たちが警告する中、私たちは私たち自身の正気のために、そして周囲の人々の正気のために、ポジティブさと楽観主義でもってこのチャレンジに立ち向かわなければならない。

50年前の検疫は、世界から絶対的に孤立することを意味した。今日では、私たちはバーチャルなコミュニケーション方法の選択肢の多さに甘やかされている。私は愛する人たちと連絡を取り合いながら多くの時間を過ごし、孫たちと毎日おしゃべりを楽しんできた。若い隣人たちは、私が助けを必要としているかどうか確認するためにドアをノックしてくれた。私たちはお互いを見守る、「我々は皆この状況に共にいる」という戦時中のメンタリティを再発見したのだ。

世界中でこれまで考えられなかったような措置が施行される中、今回の危機が私たちの社会にどれほど大きな影響を与えるか、実感は湧き始めたばかりだ。自営業者や非正規の仕事を持つ人は、突然の財政難に直面している。米国のある調査では、中小企業の半数が緊急の援助がなくては3ヶ月以内に全滅する可能性があることがわかった。各国はウイルスをなりゆき任せにするか、伝染を遅らせるため厳しい措置により経済を無期限に抑制するかという、選びようもない選択に直面している。

まもなく、自分の過失ではないのに食べていけない、または返せない借金に溺れる家族が大量に出てくる。この危機は、文化団体にはすでに悲惨な結果をもたらしており、その活動と資金源は大幅に抑制されている。いまこそ、私たちが実際のところどんな社会に住んでいるのかを発見すべき場面だ。私たちは物資を買いだめし、利己的な利益を優先するのか?それとも誰もがちゃんと見守られるよう、皆で力を合わせるのか?

私の母国レバノンはすでに金融メルトダウンの危機に瀕していた。相次ぐ融資の債務不履行が予想され、国際通貨基金の救済はますます望み薄な中、コロナウイルスはさらなるボディブローとなる。現在、貧困に暮らすレバノン人は50%を超え、25歳未満の失業率は37%超えと高い。9月以来、レバノンでは800社の食品・飲料ビジネスが事業を停止しており、さらに何千人もの失業者を生むことは確実だ。ウイルスによる不可避の経済大虐殺を完全に実感するのはまだこれからであり、これは氷山の一角に過ぎない。

一方、イラクの病院は非常に荒廃しており、コロナウイルスに感染した人は手遅れになるまで受診を避けているほどだ。そのため、最近は入院後すぐに死亡する症例が多く、ウイルスのさらなる拡散防止のための取り組みがさらに複雑になっている。

中東におけるほとんどのコロナウイルス症例が発生している隣国イランでは、公式統計によると10分毎に国民1人がウイルスにより死亡しており、最大350万人のイラン人が死亡する可能性があると警告する研究が報告されている。しかし当局はアウトブレイクを隠蔽する傍ら、地域の戦争挑発や介入を続けることのほうにより興味があるようだ。同様に、シリアの病院スタッフは、ウイルス拡散を隠そうとする官の試みに関する情報を漏らしたとして政権に拘束されたと伝えられている。

多くの湾岸諸国にとっての経験は大幅に異なるものであった。バーレーンは比較的最悪の打撃を受けており、巡礼からゴムへと戻った国民の間で症例が多発している。しかし、当局は迅速に対応し、感染の可能性がある人を追跡し、ウイルスに暴露した可能性のあるすべての人を徹底的に検査したところ、現時点ではウイルスの拡散をその場で阻止できている。私が見たあるビデオでは、バーレーンに住むレバノン国民たちは厳格な措置を称賛していた。徹底的な検査も官の透明性もなく、実際の脅威の程度を理解するのが不可能な他の場所と比べればとても安全に感じる、ということだった。

私たちのほとんどが安全確保のための抜本的な措置を歓迎するが、ロシアや中国のような権威主義国家は、国の抑制力を恣意的に拡大している。イスラエルでは、ベンジャミン・ネタニヤフ首相は選挙に負けたにもかかわらず、この危機を利用して在任を図り、その政治的キャリアをつぶし首相を監獄へと導きうる汚職容疑を無期限に棚上げすることを目論んでいる。

私たちは物資を買いだめし、利己的な利益を優先するのか?それとも誰もがちゃんと見守られるよう、皆で力を合わせるのか?

バリア・アラムディン

一方、援助機関は、収容者がシリア人、パレスチナ人、またはアフガニスタン人であろうと関係なく、人が密集する難民キャンプ内でコロナウイルスが「大虐殺」を引き起こす恐れがあると警告している。難民の多くはきれいな水へのアクセスがなく、すでに体調不良に苦しんでおり、医療支援へのアクセスも最小限しかない。

しかし、ここではっきりさせておこう。毎日25,000人が飢餓により亡くなっている―つまり毎年900万人以上だ。恥ずべきほどに高いアフリカのサハラ以南の乳児死亡率により、9人に1人の子どもが5歳になる前に死亡している。毎日約3,000人のアフリカ人がマラリアにより死亡している。なぜこれらのような極度の貧困危機も、最優先事項として扱われないのだろうか?

さらに、強制隔離は、私たちの日常生活が環境にもたらす影響を思い起こさせる。中国の都市やその他の場所での工業汚染は劇的に減少した。航空便を利用する人は大幅に減った。コロナウイルスの影響に関するニューヨークの研究では、一酸化炭素排出量(主に自動車による)が50%近く減少し、二酸化炭素汚染も同等に減少していることが判明した。

事態ははるかに悪化する可能性もある。歴史は、より致命的でより速く拡大するエピデミック(疫病)を目撃してきた。コロナウイルスは、次のウイルスの脅威に対してより大規模な準備を促すのみならず、懸案事項である環境災害に対処するために地球全体として力を合わせる必要性、また世界の多くの地域を悩ませている大規模な紛争や人道的災害に対処する必要性に気づかせるための「目覚まし」であると捉えなければならない。

このウイルスは、私たちの相互関係、私たちが統治されている方法、そして日常的な行動態度等の面で、私たち人類という種に多大なる影響を与える。治療法を特定し、脆弱な人々を守り、未来の実存的脅威に備えるために世界が一致団結したならば、コロナウイルスは真に人類の最良の側面を示したことになろう。

  • バリア・アラムディンは、中東と英国で受賞歴のあるジャーナリスト兼キャスター。彼女はメディアサービスシンジケートの編集者であり、多くの国家元首へのインタビュー経験がある
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