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今こそイラクとレバノンの宗派対立構図に終止符を打つ時だ

2019年10月27日首都ベイルートの中心部に位置する殉教者広場で、現在も進行中の反政府デモで国旗を振るレバノン人のデモ参加者。(AFP)
2019年10月27日首都ベイルートの中心部に位置する殉教者広場で、現在も進行中の反政府デモで国旗を振るレバノン人のデモ参加者。(AFP)
バリア・アラマディン
28 Oct 2019 11:10:07 GMT9

ヒズボラのハサン・ナスルッラーフ議長は抗議活動によって「混乱」または「内戦状態」を招く可能性があると断言したが、それは警告だったのだろうか、それとも脅迫だったのだろうか。この声明のわずか数分以内で、ヒズボラの支援者がバイクで隊列を作ってベイルート市内に広がり、抗議活動を散り散りにした。同日通して、抗議活動家は「ナスルッラーフ万歳」と叫ぶ仮面の男たちによって攻撃を受けた。

抗議活動家は、ナスルッラーフ議長の横柄な決まり文句、脅迫、及びいい加減な陰謀論を冷ややかに拒絶した。同議長は、抗議の背後には怪しい外国筋からの支援があったのではないかと示唆したが、それに対し市民は「私はこの革命を支援しています」と宣言している様子を自ら動画に収めた。筆者も、このように国民の間で団結心が広まっていることを、具体的に目撃している。例えば筆者の友人の何人かは、雨が降れば抗議活動家のために傘やビニールのレインコートを購入した。また、食料を配ったり娯楽を提供する人もいた。

同様の外国からの干渉に対する抗議は、今週末イラクの各都市でも展開された。アヤトラのアリー・ハーメネイー師のポスターはシーア派の聖地から剥ぎ取られ、ガーセム・ソレイマーニー将軍に反対するシュプレヒコールが聞かれ、イランの支援を受ける武装勢力の本部も襲撃を受けた。崩壊しつつあるイラク政府は殺人兵器の使用をしないことを宣言しているにも関わらず、たった1度の週末で死者数は63人を超え、2,500人以上が負傷した。南部の各町では、抗議活動家とイランの支援を受けた武装組織との間で激しい衝突が発生し、イラクには内戦が間近に迫っているという印象を拭えない。

レバノンの政治の方向性に長く失望している私たちにとっては、今回国家的アイデンティティーが強く示されたことで、大幅な変革も可能だというワクワクする希望の光が見えた形だ。抗議活動家は、冷酷なことではあるが、自分たちの要求は一夜にして実現するものではないということを理解している。しかし、国家の富を略奪しようと陰謀を張り巡らせてきた腐敗した支配層とそれに協力する層に対して、今回新たに国民の間で一致団結の精神が目覚めたのだ。特にジブラーン・バシール氏などの悪名高き人物が憤慨の対象となっている。

宗派対立に何十年も束縛されてきたレバノンでは、各宗派はこの「分断統治」の忌々しいナラティブをそれとして認識している。彼らは国民として1つに団結して道路に繰り出し、共通の希望として「尊厳」、雇用、説明責任、及びレバノンの主権の維持を求めているのである。

過去何十年間は、イランからの干渉によってどれほどの影響が生じているのか、見て見ぬ振りをすることもできた。以前までは、私たちの生活の細かいところに口出ししてきたのは、シリア人たちだったのだ。私たちはおとなしく、ヒズボラはイスラエルや最近ではISの敵対政策からレバノンを守っているのだというレトリックを受け入れてきた。しかし、ヒズボラがシリアの抵抗勢力を虐殺した時、それはレバノンを守ることにつながっただろうか。また、イラン政府をアメリカの制裁から守るために経済から国際通貨が吸い取られた時、ヒズボラはレバノンを守ろうとしていたといえるだろうか。もしくは、ナスルッラーフ議長がハーメネイー師こそ「私たちのイマーム、私たちの指導者、私たちの師であり…、イランイスラム共和国はその心柱、その中心、その最大の支援者です」と宣言した時、それはレバノンを守ることにつながっていただろうか。

ナスルッラーフ議長自身、国外からの干渉の化身のような存在であるにも関わらず、愛国心溢れるデモ参加者に対して国外からの支援を受けている旨の非難をするとは、言語道断である。同議長は、イランから武器と資金の供与を受け、イランのアイデンティティーとイランの命令の影響下にあるのだ。

「恐怖の壁」は打ち崩された。ヒズボラが望み通りシーア派から絶対的な忠誠を得られる時代は終わったのだ。子供がシリアから死体袋で帰ってきて嘆く母親がいた。イランから戦闘員に支払われる給料や「殉教者」に対して支払われる見舞金や福祉手当が急激に減少している。そのため、特に、依存の代償を究極的にはイスラエルとの壊滅的な戦争という形で支払うことになる可能性がある中、イラン政府に依存することのデメリットに人々は気づき始めているのである。

100万人以上のレバノン人が街頭で踊って歌いながら革命を求めるシュプレヒコールをあげている状況からは、ヒズボラの価値観全てに根本的に対抗する姿勢が見て取れる。つまり、貪欲な分子が、ある特定の宗派または地域に生まれたことだけを理由に、自動的に私たちの代表であるかのように振る舞う権利を独占する状況ではなく、レバノンの文化と経済の復興、そして真に説明可能で国民の声を代弁する政府のあり方などを、人々は求めているのだ。

イラン政府の悪意ある思惑がより明白に見て取れるのは、イラク政府である。イラク政府は、イラン政府から支援を受けている武装組織の影響下にあるのである。そうした武装組織は、これまでイラク人を殺害してきた。民兵隊の狙撃手によって殺された何十人もの抗議活動家もそれに含まれる。こうした武装組織はイラクで広範な地域を支配しているが、反イランの怒りが最も大きな抗議活動を呼んだのは、そうした武装組織の本拠地となっている都市だった。

シーア派のアラブ人たちは、イラン政府のアヤトラたちは巡礼者の保護や神学校の改修などの敬虔な理由で何十億ドルもの金額を寛大に提供しているわけではない、ということに気づき始めている。これは親近感ゆえの支援ではなく、あからさまな権力掌握作戦なのである。ソレイマーニー師は、アラブ諸国を支配するという目的に資するのであれば、悪魔崇拝者集団とでも無神論の革命家とでも喜んで同盟関係を結ぶだろう。先週、イランの暗殺部隊がアルバニアの反イラン活動家を標的にしていたことが明るみに出た。ここからも、イランが世界中でテロリズムの拡散と混乱の拡大に執念深く取り組んでいることは明らかだ。

誇り高きアラブ諸国をイランが永久に支配することなど不可能だ。イラン自体、外側からの圧力ではなく、内側から内破している。イラン人たち自身、強権的な政権に対して、年々果敢に異議を唱えているのだ。ムッラーによる政権は歴史的に見れば一瞬の出来事であり、国民から略奪された何十億ドルもの富を提供して外国での無政府状態を支援することをイランがやめた瞬間、イランの支援を受けた憎き武装勢力たちは一瞬で消え去るだろう。

私たちは、ナスルッラーフ議長による内戦の脅迫を真剣に受け止めなければならない。イラン政府は、その操り人形のバッシャール・アサド大統領を守るために、シリアに地獄のような内戦状態をもたらした。レバノン人は今でもまだ、30年前に終わった前回の内戦が残した激しい禍根の中で日々暮らしているのだ。

デモの現場には、騒動と暴力を煽るための分子が潜入している。これは、再度レバノン市民に「フィットナ」(反乱)の心を植え付けるための組織的な作戦の始まりに過ぎない。なぜなら、レバノン市民が互いに敵対し合えば、宗派対立によって煽られる嘘も相まって、レバノン人は力を失い、支配が簡単になってしまうのだ。

もしもレバノンの全国民が奇跡的に一致団結し続けることができれば、全てが可能になる。ここから進めるのは、対照的な2つの道だ。団結できれば、レバノンは「中東のスイス」として再度繁栄できる。分断されれば、レバノンはこのまま貧しく孤立したイランの飛び地になってしまう。

レバノンとイラクを支配する宗派主義の泥棒政治は、ガラスでできた強大な要塞のようだ。この要塞の頂点に立つ者の中には、その要塞を降りて同胞市民たちと団結する方がいいと気づいた者もいる。このガラスの要塞を粉砕させる時が来たと国民が決断した時には、未だそのギラギラ輝く塔に気取って立つ者には災いあれと言う他ない。

バリア・アラムディンは、受賞歴のあるジャーナリスト兼ニュースキャスターとして、中東及びイギリスで活動中。Media Services Syndicateの編集者であり、これまで多くの首脳をインタビュー。

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