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米国と中国: 親密だが複雑な関係

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18 May 2020 12:05:31 GMT9
18 May 2020 12:05:31 GMT9

危機には、人々と国の両方で最高か最低のどちらかを引き出す傾向がある。中国と米国の関係は元より険悪ではあったが、COVID-19のパンデミックは間違いなく最悪の事態をもたらしている。

ドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスに就任して以来、特に貿易問題をめぐって、世界の二大経済大国の関係は悪化する一方である。大統領は中国に対し、公正な取引慣行の遵守、知的財産権の尊重、投資市場の開放を要求してきたが、どの要求に関しても北京は前向きに取り組んでいるとは言えない。

パンデミックによって、発言の過激化が進んでいる。トランプ大統領は、中国が当初アウトブレイクを隠蔽し、拡散を抑制するのに役立った可能性がある情報を隠していたとして非難しているが、この点に関しては他からも非難が集まっている。しかし、彼が明らかな証拠もなく武漢の研究所でウイルスが発生したという憶測を広めたことで、北京は激怒している。

しかし、こうした険悪な雰囲気にもかかわらず、関係が改善される兆しが現れた。トランプ政権は2年以上前から中国と新たな貿易協定を結ぼうと取り組んできている。合意への第一段階が実りつつあるようで、中国の劉鶴副首相とスティーブン・ムニューシン米財務長官は、直近の「バーチャル」な交渉で前向きな進展があったと語っている。

先週、非常に劇的な形ですべてが崩壊した。トランプ大統領が、習近平国家主席と話す気がないというだけでなく、中国との関係を完全に断つことも考えていると宣言したのだ。これらは厳しい発言であり、米中関係をもっと詳しく見てみる必要がある。

バイデンとトランプの大統領選挙キャンペーンでは中国を非難するために競い合っているが、そこには米国の世論が反映されており、また世論によって強化されている。最近の世論調査では、人口の3分の2が中国を批判的に見ていることが示唆されている。

そしてこの問題は貿易面だけにとどまらない。米国は、中国のテクノロジー企業であるファーウェイ(Huawei)が米国の通信ネットワークに機器を供給すること、またその逆も規制しており、同盟国にも同様の措置を取るように促している。GoogleのモバイルOS「Android」などのソフトウェアを自社の携帯製品に使用することを禁止されたファーウェイだが、あっさりと自社のOSを開発し、長期的には中国での地位をさらに強化していくだろう。

危機には、人々と国の両方において最高か最低のどちらかを引き出す傾向がある。中国と米国の関係は元より険悪ではあったが、COVID-19のパンデミックは間違いなく最悪の事態をもたらしている。

コーネリア・マイヤー

そして、アジアの同盟国である米国にとって特に重要となるのが防衛の観点である。中国は南シナ海の領有権を主張し続け、攻撃性を高めている。

土曜日にロンドンのタイムズ紙に掲載された報告が、北京の自信についての部分的な説明になっているかもしれない。そこでは、国防総省の「戦争ゲーム」によると、米国の海軍が中国の海軍に敗れ、台湾の独立を侵略から守るのに苦労することになるだろうと明かされている。習近平は2050年までに台湾を「一つの中国」の一部とすることを望んでおり、台北は懸念しているに違いない。

こうした状況から、これは新たな冷戦だと多くの人は言うが、必ずしもそうだとは限らない。安全保障アナリストであり、作家であり、元外交官でもあるアニャ・マニュエル氏は、私たちが向き合っているのは新たな冷戦ではなく、世界の二極化であると主張している。ソ連の経済は内向きで、貿易の相手はワルシャワ条約機構外の数カ国とその他のいくつかの同盟国のみだった。中国は経済的にもっとも外向きな国の一つであり、一帯一路のような野心的な構想や、アジアインフラ投資銀行といった機関を持つ貿易国家である。

マニュエル氏は、米国の対中政策はあまりにも否定的であり、中国企業の米国市場へのアクセスの制限や、学生が米国の大学に入学するのを拒否することによるメリットはほとんどないと考えている。彼女は、米国が同盟国と協力して戦略的分野の研究開発に取り組み、必要に応じて中国の戦略的独自技術の購入を禁止するという、より建設的な態度を提案している。

COVID-19は世界的な問題であり、エボラ出血熱やSARSと同様に、二つの主要経済国が協力してこの問題に対処することは世界にとって有益なことである。米中の経済・安全保障関係全体としては、長期的に経済の安定と平和を維持するために、慎重かつ十分に考え抜かれた政策と行動が重要である。

米国と中国は、私たちの新しい二極化した世界のそれぞれの極であるかもしれないが、世界は彼らだけのものではなく、その大きさと力のために、彼らの行動は私たちにも影響を与える。力には責任が伴う。支配的な二大勢力がそのことを忘れないように期待したい。

  • コーネリア・マイヤー、ビジネスコンサルタント兼マクロ経済学者で、エネルギー専門家である。ツイッター:@MeyerResources
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