
サウジアラムコは、サウジアラビアの資本市場庁の認可を受けた後、新規株式公開(IPO)のプロセスを開始して国内のサウジアラビア証券取引所「タダウル」に上場すると発表した。
調達額は$400億と予想されており、世界規模のIPOの史上最高額である$250億を上回る可能性がある。
IPOによってサウジアラムコは、巨大企業に必要な活力と効率性を確保して持続可能性を向上させるだろう。そのためには、天然資源を扱う商社として、財務諸表を発表する透明性を有し、独立した経営陣が運営・評価を行うことが必要不可欠である。
これは、経済の多様化と成長を持続させるために王国が策定した青写真であるビジョン2030の実現に向けて、サウジアラムコのIPOが重要な里程標であることを反映している。
IPOの主要な目的の1つは、透明性を導入し、サウジアラムコの動向を把握できるようにすることだ。サウジビジョン2030の主導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子はこのように述べた。これはガバナンスの重要な役割を機能させ、効率性を向上させるだろう。アラムコはすでに世界で最も収益性の高い企業であるが、その収益性はさらに改善するだろう。
どの組織にも寿命がある。100年前に米国で大手だった企業は何れも、現在存在していない。本質的に構造は経年劣化するからだ。設立、成熟、老化というライフサイクルがある。組織の巨大化が進み、やがて、変化できない段階、または周囲の変化や新たな市場要件に対応できない段階に到達するのだ。
設立から86年以上が経ってもアラムコがそのような段階に至らなかったのは幸いだ。サウジアラムコは老化することなく、活力を維持してきた。歴史を振り返ると、この巨大企業が活力と継続性を維持しようと常に刷新を図っていたことが分かる。
例えば、1993年にSaudi Arabian Marketing and Refining Co. (SAMAREC)の資産を取得することでサウジアラムコは、石油・ガス生産業者であるばかりでなく、石油精製製品の販売業者にもなった。その後、サウジアラムコは世界中で製油所を取得し、石油・ガスで世界最大の総合企業となり、世界でも最大規模の精製能力を有するようになったのである。
IPO後にサウジアラムコは、事業持続性の強化、原油とガスの生産効率向上のための技術やイノベーションの利用、信頼性と持続可能性の向上といった目的を達成するだろう。資本支出に関する包括的で規律ある手続きをとおして、サウジアラムコは長年存続してきた。
IPO後にサウジアラムコは、事業持続性の強化、原油とガスの生産効率向上のための技術やイノベーションの利用、信頼性と持続可能性の向上といった目的を達成するだろう。
ファイサル・ファエク
サウジビジョン2030は、世界の経済大国という立場に王国が将来就けるよう準備すること、また石油収入への依存を徐々に減らすことに重点を置いている。ビジョンはサウジアラムコを改革すべき点に含めた。さらに、石油収入への依存を減少させるなど、サウジ経済の幅広い変化を反映するものとなっている。
サウジアラムコのIPOは、最も信頼できる供給国および世界経済安定の要としての王国の立場を示すものだ。サウジアラムコはマーケットに対して一貫して力強い役割を果たしていかなければならない。企業の重要性を増し加え、企業規模を拡大してきたアップストリームの投資を継続する必要がある。
ビジョンが掲げる改革点として、サウジアラムコは株式のごく一部を公開する。これは、同企業が確かな未来を構築する必要のある時と重なっている。もはや外部環境から隔絶されているわけではないからだ。
「ブラックボックス」のサウジアラムコは、いよいよ開かれる。世界最大のIPOを実施することで、皇太子は約束を果たすことになる。ビジョンの深さと、経済改革への計画の礎を明らかにするのだ。
Twitter:@faisalfaeq