
日本政府の顧問はハーバード大学の基金運用ファンドに対し、東芝の定期株主総会での議決において大学側が東芝の経営陣に対立する内容の議決権行使を行った場合、大学は規制当局の調査の対象となる可能性があると述べたと4人の関係者が語った。
その結果、ハーバード大学は議決権行使を棄権したと情報提供者の3人が語った。後になって、調査対象となる根拠がないことが分かったと、そのうちの2人は語った。
経済産業省の参与を務める水野弘道氏による今回の発言は、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の強化を推進する日本の取り組みとは相反するものであり、株主からの苦情が寄せられている会議に注目が集まっている。
『フィナンシャル・タイムズ紙』は以前、水野氏が経営陣に反対する議決を行えばハーバード大学の評判が下がると当大学基金に対し伝えたと報じている。水野氏がハーバード側に調査対象となる可能性について言及したことなど、大学とのやりとりの詳細な経緯が報じられるのはこれが初めて。
水野氏は、ロイター通信が書留郵便と水野氏が積極的に活用しているTwitterアカウントにダイレクトメッセージの両方で送付したコメントの求めに応じていない。
経産省の担当者は、同省はこの件についてコメントする立場にはなく、水野氏に東芝の株主に連絡を取るよう依頼したことはないと述べた。
水野氏は、日本の1.4兆ドル規模の日本の年金積立金管理運用独立行政法人の元最高投資責任者を務め、現在は米電気自動車大手であるテスラ社の社外取締役を務めている。ロイター通信は水野氏と東芝との関係を断定できなかった。
東芝の広報担当者は、同社はコメントする立場にはないと述べた。ハーバード・マネジメント・カンパニーの広報担当者はコメントを控え、同社のN・P・ナーベカー最高経営責任者はコメントの求めに応じなかった。4人の情報提供者は、この件が非公開であることから、自身の身元を明らかにすることを断った。
堕落
水野氏は7月31日の株主総会の数週間前に、ハーバード大学が東芝の企業統治に不満を持っていることを知り大学側に接触したと、関係者の2人は語った。東芝は会計問題に悩まされ、1月に再び決算報告書を修正した。
ハーバード大学の410億ドルの基金は東芝の議決権の4%以上を保有し、シンガポールのアクティビスト・ヘッジファンドであるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントに投資している。エフィッシモ・キャピタル・マネジメントは東芝の筆頭株主であり9.91%の株式を保有していると情報提供者は語った。
水野氏の最初のアプローチは友好的だったが、メールや電話を介したナーベカー最高経営責任者と水野氏とのやりとりは、外国投資家が代理人に議決権行使の内容を指示する期限が迫る中株主総会の前の週末に悪化したと、情報提供者の2人は語った。
4人の情報提供者によると、ある電話で水野氏は、複数の外国人投資家が合意し、上場企業の議決権を共同で行使する場合、議決権の合算が10%以上だと届け出をしなければならないとする規定に言及し、外国人投資家による保有規制の問題を提起した。
2人の関係者によると、水野氏はやりとりの中で、ハーバード大学基金とエフィッシモ・キャピタル・マネジメントとの関係性や、ヘッジファンドが提案した取締役候補者に対する議決を主に取り上げたという。
水野氏は、ハーバード側が東芝の経営陣の利益と対立する議決権行使を行った場合、規制当局の調査を受ける可能性があるとの見解を示したと4人の関係者は述べた。そしてハーバード大学は最終的に議決権行使を棄権したと、3人の関係者は述べた。
ロイターは、ハーバード大学とエフィッシモが議決権を合算することに合意したかどうかを判断できなかった。エフィッシモはコメントを控えた。
悪化
東芝の経営陣に反対する人々は、57%の賛同を得て取締役に再任された車谷暢昭社長の下では、ガバナンスの欠如を感じていると訴えてきた。通常CEOが圧倒的な支持を得る日本において、昨年の99%から比較された。
エフィッシモの提案した取締役候補3人の選任はいずれも経営陣の反対により否決されたものの、1人は44%の賛同を得た。
以来エフィッシモは、一部の株主の議決権が侵害されたと主張し、調査を実施する弁護士チームを設立するために臨時株主総会の招集を求めている。
ロイター