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アラブ人とイスラム教徒はパレスチナのために立ち上がらねばならない

カイロのアラブ連邦本部でアラブ連邦緊急会議が召集され、米国が仲立ちをする中東の対立抗争への仲裁提案について議論が行われた。(AFP)
カイロのアラブ連邦本部でアラブ連邦緊急会議が召集され、米国が仲立ちをする中東の対立抗争への仲裁提案について議論が行われた。(AFP)
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12 Feb 2020 04:02:37 GMT9
12 Feb 2020 04:02:37 GMT9

ラムジー・バラウド

パレスチナ−イスラエル間の対立を交渉によって解決するという考えは、少なくとも歴代の米国政権によって思い描かれてきた方法ではあるが、それは拒否された。今やパレスチナ人民とその同盟国は、米国政府を介入させない解放への新たな道を模索する必要がある。

米大統領の娘婿ジャレッド・クッシュナーのように、パレスチナとイスラエル間の正当な和平への機会を一人で勝手に握りつぶした人間たちをやり玉に挙げ、全てを現在の米国政権のせいにするのは簡単だ。しかし、その真実は、都合よくぴたりと型にはまった憶測とはかけ離れたものなのだ。米国が擁護する「和平プロセス」は、2014年の最期の交渉以来決裂している。先月のドナルド・トランプ大統領による「世紀の取引」発表の何年も前から、イスラエルはパレスチナ人に決して彼らの独立国を持たせないようにするため、ありとあらゆる手段を講じてきた。イスラエルの高官たちは、占領地の大半を不法に併合しようという願望をおおっぴらに 語ってきたのみならず、イスラエル政府は数え切れないほどの手段を使ってユダヤ人の不法居住地区の拡大を進めてきた。

イスラエル政府が、パレスチナ人民に最低限の尊厳と自由と正義を保証するような正当の和平について、ほんのわずかであっても関心を示したことが過去にはあった、などと考えるのは、よく言えば世間知らず、道義的には盲目と言わざるをえない。

しかし、皆が協力するふりをしてきたのだ。イスラエルは和平交渉に手を貸す協力者がいないと不満を口にしながら、一方では、その軍事占領を固めると同時にその植民地体制を拡大していった。マーマウド・アバス大統領下のパレスチナ自治政府(PA)は常に現実味のない脅迫を口にしている。米国は両国に対して「無条件交渉」へ立ち返るよう呼びかけながら、その一方でイスラエルの軍隊と経済に年38億ドルという資金提供をしている。 国連と欧州連合は、米国よりは若干穏健なありきたりの政治台本の通りに動いてきたが、イスラエルがこれ以上国際法に違反しないようにさせるための有効なアクションは何一つ取らずにいる。

目下、アラブ連邦とイスラム協力機構(OIC)は、より確固たる一貫したパレスチナ同盟者だが、今現在もほとんど関与を示さず、全関係者の中でも一段と距離を置いて静観している。パレスチナ人民への支援とイスラエルによる占領への非難を示す声明が時々出されるが、何のかわり映えもしない無力なものとなっている。アバス大統領と彼の率いるPA を除けば、一般のパレスチナ人民はほとんど一度も実体のあるアクションに結びついたことのない口先だけの支援に、何の価値も見出していない。

どういうわけか、この歪んだパラダイムが何年もの間続いている。その一つの理由として、イスラエルによるパレスチナ人民の従属や屈辱が続いていくことは、パレスチナ人民を除く他の全関係者にとって都合が良いからだ。

トランプ政権後の状況を定義しようとすると、現在、対立する二つの潮流がある。一つはイスラエル-米国連合で、この体制はトランプの計画をすみやかに撤回不可能なものとするためのアクションを取るべく手ぐすねを引いている。イスラエルはウェストバンクとヨルダン渓谷 (ウェストバンクのほぼ30%)にある不法定住地区を米国の支援を受けながら併合することを強く望んでいる。さらに、米国政府はアラブ諸国とイスラエルの間の国交正常化を目的とする内密の働きかけを積極的に進めることによって、実際に協定を取り付け、最終的には完全外交関係へとつなげていきたいのだ。

もう一つはPA、欧州連合、国連、アラブ連邦、OICを包括するグループで、このグループはイスラエルとパレスチナ間の取引の失敗を望む。しかし、これらの組織にはそれにとって代わる方法がない。彼らは国際法の尊重を強調し、実行不可能な二国間での解決を何としてでも支援しようとするが、実際の戦略は何もない。ましてやそれを実行させるような強制力のあるメカニズムを持ち合わせないのは言うまでもない。

親PAキャンプは矛盾に満ちており、アバス大統領下のPAの矛盾と何ら変わるところがない。アバス大統領下のPAは「大衆による抵抗」を代弁する一方で、イスラエルの占領に対抗しようとする動きを、イスラエルと一緒になって抑圧しているのだ。このキャンプの矛盾の最たる例として、アラブ連邦がトランプの取引を拒否する声明を出したわずか2日後に、スーダンの最高評議会のアブデル・ファッター・アル・バーハン議長が右翼のイスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフとウガンダで会見をしている。アル・バーハン議長はイスラエルとの国交正常化と引き換えに、米国の支持を目論んでいるのだ。

もう一つの例は、アバス大統領自身の行動だ。彼は2月1日、いわゆる安保連携体制をはじめ、イスラエルとのあらゆる接点を断つと宣言した。この安保連携体制はオスロ条約の主要な柱となっており、イスラエルの占領地区の防衛のために現実としてPA防衛軍を出動させるというもの。アバス大統領がこの手の大胆発言を持ち出したのは今回が初めてではなく、一度もその約束を実行に移したことはない。今回ばかりは違うと信じる理由はどこにもない。

親PA キャンプは、現行の政治構造を見ればわかるように、トランプの取引を本当に反故にすることができるとは思えない。

カイロで行われたアラブ連邦サミット、そして2月1日と3日にジッダで行われたOIC サミットから出された最終声明は、それぞれ過去の幾多というサミットからの声明内容をただ繰り返したものであり、その中で約束がかかげられ非難が浴びせられてはいるが、フォローアップの行動は何もないのだ。

アラブ人とイスラム教徒たちが米国-イスラエルの策略に対抗したいと心から望んでいるなら、彼らはこの非現実的な政治ゲームの息の詰まりそうなパターンを打破しなければならない。米国政府の策略を拒否し、イスラエルの行動を非難するだけでは事足らない。勇気を奮い起こして自分たちの声明を一致団結した戦略へと変え、可能なありとあらゆる手段を使ってその戦略を実行に移していく必要がある。アラブ諸国は米国政府や世界全体に対し、大きな経済的政治的影響力を持っているのだ。パレスチナとその人民を守るためにそれを利用しないのなら、それらの影響力に一体何の価値があろうか?

米国とイスラエルは、アラブ人やイスラム教徒たちの間のトランプの取引に対する怒りがいずれおさまるという事実をあてこんでいる。トランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムと公認し、米国大使館をそこへ移転させた後の状況と全く同じように。

アラブ人やイスラム教徒たちがパレスチナを再び見捨てれば、その時は再びパレスチナ人民がこの死闘において孤立化し、妥協するしか道はなくなる。そして、パレスチナが立ち上がる時には、いや、間違いなくそうする時が来るが、その時にはイスラエルのみならず、イスラエルによる占領を何年もの間許して何も手を下さなかった中東全体および国際機構に対して挑戦を挑むことになろう。

ラムジー・バラウド(Ramzy Baroud)はジャーナリスト、作家、そしてパレスチナ・クロニクル紙の記者。彼の最新出版書は「最後の地球:パレスチナ物語」(プルート・プレス、ロンドン)。バラウドはエクセター大学でパレスチナ研究の博士号を取得。           ツイッター:@RamzyBaroud

お断り:この記事の筆者の考え方は彼独自のものであり、必ずしもアラブニュースの観点を反映するものではありません

 

彼らは勇気を奮い起こして自分たちの声明を一致団結した戦略へと変え、その戦略を実行に移していく必要がある。

ラムジー・バラウド

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