
ヌーア・ヌガリ (Noor Nugali) リヤド
毎年 5 月 9 日、欧州連合に加盟する 27ヵ国は、欧州大陸の統一、多様性、そして数十年におよぶ平和を称え、ヨーロッパの日を祝う。この日は、サウジアラビア、バーレーン、オマーン担当 EU 大使パトリック・シモネによれば、欧州大陸にとって、激動の過去と現在の課題を顧みる機会であると同時に、未来を見据える好機でもある。
「この日はいつも、私たちが平和と統一のありがたみを思い出す機会なのです。平和と統一、それはまさしく欧州という事業の根幹を成しているのです」、とフランス人外交官は、アラブニュースへの独占インタビューで話した。「それは、私たちの遺伝子、個性に内在するもので、ヨーロッパを現在の姿になしえているものなのです。」
この日は大切な一日だ。それは、1950 年のこの日に、かつて敵同士であったフランスとドイツがシューマン宣言の下に手を取り合い、欧州石炭鉄鋼共同体の前身を作ったからだ。欧州石炭共同体は、現在 24 の言語を話す、4 億 4,800 万人を擁する貿易圏、今日の EU の礎を築いた合意であった。
「ヨーロッパの日は私たちにとって、二度にわたる世界大戦と統一に向けた決断を経て、私たちはどこから来たのか、そして今日私たちはどこにいるのかについて目を向ける日です。ヨーロッパは現在悪い状況にはない、と私は考えています。私たちには多くの課題が山積していますが、大きな計画もあります。ヨーロッパの日は間違いなく未来に目を向ける日、子供たちにヨーロッパとして何を残してあげられるか、このパンデミックにどのように取り組むか、気候変動にどう取り組むのか、そうしたあらゆる問題について目を向ける日なのです。」
EU と王国は、精力的な協力関係を創り出す、同じ前向きな精神をお互いに持ち合わせています、とシモネ大使は考える。彼は、欧州グリーンディール ( 2019 年 12 月に始まった EU の持続可能性構想 ) とサウジアラビアのビジョン 2030 行動計画における重要な開発目標を比較する。ビジョン 2030 とは、王国の経済を石油から脱却して多様化し、住民を支援し、観光客と投資家への開かれた環境を促進する計画である。
「すべてを実行するにはあと 10 年かかりますが、ビジョン 2030 の五周年をお祝いすることができ、今週私は本当に幸せです」、とシモネ大使はアラブニュースに話した。「これは大切な構想です。ヨーロッパの誰もがそう話すのを耳にするかと思いますが、私たちは、これは注目に値する行動計画だと心から考えています。この行動計画では、欧州グリーンディールの局面のいくつかについて数多く触れられていますが、ヨーロッパにとってビジョン 2030 もまた同じことなのです。」
「これは非常に野心的です。地域の多国にとって刺激となります。経済的協力という観点から、私たちにとって、これは優れた基盤であると考えています。一緒に取り組むことができそうな、共通の利害分野が数多くあります。」
現在、サウジアラビアの輸入全体のおよそ 28 パーセントはヨーロッパからによる。このため、EU は王国にとって第二位の貿易相手となっている。将来の貿易で特に有望な分野の一つは、クリーンエネルギー生産だ。
「消費する種類の燃料をよりクリーンなものとするべく、私たちが、ヨーロッパとして取り組んでいる現在、サウジアラビア王国からヨーロッパへの水素の輸出には、大きな可能性があります」、と彼は話した。「主導的な水素輸出国の一つとなる王国の大きな目標 ( は )、それがブルーであれグリーンであれ、私たちにとって本当に非常に重要です。これによって、私たちが自分たちの気候に関する目標へ到達する一助となり得るからです。」
シモネ大使は、サウジおよび中東グリーン構想の支持にまわっている。この二つの計画は、今年 4 月に着手され、二酸化炭素の排出削減、再生可能エネルギー源の促進、エコシステムの保全、王国および中東広域にわたる地域の森林再生をその目的としている。
彼は、4 月に始まったアル・ウラー開発計画といった、ビジョン 2030 の観光事業への積極的関与については、個別に賞賛することを差し控えている。もっとも、そうした計画は海外の投資を呼び込み、サウジの文化の多様性と豊饒さを世界と共有することなるだろう、と彼は話す。
「観光施設という観点からのこの国の大きな可能性、大きな発展に、私たちはただただ感心するばかりです」、とシモネ大使は話した。「観光事業という言葉では簡単すぎます。それは、多様性に関することであり、文化に関することであり、伝統、自然に関することであり、、革新に関することでもあるからです。」
「つまり、文化の多様性を披露するだけではないのです。革新を通じてそれをなすのです。王国は、地域の拠点、世界の拠点となる大きな可能性を本当に備えており、投資家また観光客双方の多くの関心を確実に惹くことでしょう。」
サウジと EU の関係を支えるのは、対テロ対策、麻薬との戦い、イエメン情勢といった共通する安全保障上の多くの関心事である。
「イエメンは紅海に位置しています。紅海を通じて、ヨーロッパとの貿易全体の 20 パーセントが行われています。そのため、紅海で何か起こる場合、別 ( の交易路 ) を見つける必要があり、完全に混乱をきたします。だから私たちは、安全保障に強く関心を示すのです」、とシモネ大使は話し、3 月に発表されたサウジの平和構想に肯定的な反応を示した。
「航海の安全、安定、テロ行為との闘い、過激主義、麻薬との闘い、これらすべてが私たちに共通する安全保障上の協議事項であり、私たちが政治上の協議や双方向における訪問を数多く行う必要がある理由なのです。」
「これは、私たちの協力関係に向けた本当に強力な基盤です。」
Twitter: @NoorNugali