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100年の伝統を受け継ぐサウジの三日月観測者一族

サウジアラビアは三日月の観測を非常に重んじており、最高裁判所は主に健康診断や視力検査等いくつかの基準を用いて三日月観測者の信頼性を確保している。(SPA)
サウジアラビアは三日月の観測を非常に重んじており、最高裁判所は主に健康診断や視力検査等いくつかの基準を用いて三日月観測者の信頼性を確保している。(SPA)
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12 May 2021 05:05:53 GMT9
12 May 2021 05:05:53 GMT9
  • サウジアラビアは月観測の科学的過程を非常に重んじる

メッカ:三日月観測者のなかでも、何光年も先を行くサウジ人一族がいる。 

非常に良好な視力を誇るアル・バルガーシュ一族の人々は100年以上にわたり毎月、望遠鏡などの近代的な装置を使わずに月を観測してきた。

この伝統はリヤドから北西に140キロのサウジ中部の町トゥマイルで、一族に代々受け継がれてきた。

「私たちが楽しみ、そして子どもたちに受け継がれる、親や先祖から引き継がれた神様からの贈り物です」と、ムタイブ・アル・バルガーシュ氏はアラブニュースに語った。

父親と友人らがよく観測塔に上ってはラマダンやイード・アル・フィトル、ドゥ・アル・ヒジャの三日月を観測したものだとアル・バルガーシュ氏は言う。

「父が私や兄弟に三日月の観測を教えてくれて、情熱を注ぐようになりました。観測場所として開発を続けるうちに、今では三日月観測を学びたい人を迎える観測所になりました」

「三日月観測の技」の訓練・教育を行う目的は、イスラム教徒に、ラマダン月に三日月が観測されたら断食を始め、シャウワールの三日月が観測されたら断食を止めよと指導した預言者モハメッドの言葉に従うためだとアル・バルガーシュ氏は語る。

アル・バルガーシュ氏の祖父イブラヒムは非常に視力がよいことで有名な聖職者だった。「私の父アブドゥルラーマンは祖父からこの才能を受け継いだのです。一族全員視力がよいことで知られていました」

アル・バルガーシュ氏は自身も兄弟たちも全員三日月観測の達人で、観測を邪魔するものは雲だけだったと指摘する。トゥマイル、ハウタスダイール、シャクラの観測所はそれぞれ天候状況が異なるときがある。

この3カ所は高原に建ち、空が澄んでいるために三日月観測に最適な場所なのだとアル・バルガーシュ氏は言う。「16年間、毎月高原に登り、月ごとの三日月を見てきました」とアル・バルガーシュ氏は続ける。

技術の発展により三日月観測者が不要になる可能性について、アル・バルガーシュ氏は、古い手法と新しい手法は互いに補完し合う関係だと語る。

「息子たちが毎月同行してくれて、科学的に正しく理解することを助けてくれます。また、トゥマイル観測所で未来の観測者を養成すべく5人以上の人に訓練を行っています」と、アル・バルガーシュ氏は付け加えた。

ムタイブ・アル・バルガーシュ氏

サウジアラビアは三日月観測を非常に重んじており、最高裁判所は主に健康診断や視力検査等のいくつかの基準を用いて三日月観測者の信頼性を確保している。それらの結果が法務省関連の特別な委員会に提出されたのち、国王令により正式に認定される。

委員会での作業についてはサウジ法務大臣のワリド・ビン・ムハンマド・アル・サマーニ博士が引き継ぎ、監督する。

サウジ全国の観測所で観測者に同伴する判定者が割り当てられ、政府当局の代表者とともにキング・アブドゥルアズィーズ科学技術都市(KACST)の三日月観測・天文学専門家が参加し、監督にあたる。

天文学者は現在、三日月観測において変動要素を正確に特定するためにコンピューターを用いている。

KACSTのザキ・ビン・アブドゥルラーマン・アル・ムスタファ教授

地理的、科学的、天文学的基準に基づいて、適切な観測所が選ばれる。KACSTの天文台は三日月観測用に最先端の装置、望遠鏡、双眼鏡、サーマルカメラが装備され、最高裁判所に動画が生配信される。

最高裁判所は月の動きと各観測地の天候条件に関する政府機関発行の天文学・数学レポートを精査しながら、三日月観測のプロセスに密着する。

発表が行われるのは、観測者が委員会の尋問を受けて観測の有効性が認定されてからとなる。

KACSTの国立天文学航海学センターの天文学教授ザキ・ビン・アブドゥルラーマン・アル・ムスタファ氏は、天文学者は現在、三日月観測において日の出、日の入り、月の入り、日の出・日の入りの位置、太陽との角度、輝度、三日月の軌跡等の変動要素を正確に特定するためにコンピューターを用いていると語る。

同センターは三日月観測の領域で世界をリードしており、業界誌で多数の科学論文を発表するとともに、関連データを収録したブックレットを毎年製作している。アル・ムスタファ教授とチームは高感度カメラを使って日中に数回三日月を観測するとともに、日の入りまでの月の動きの追跡に成功した。

同チームはこの科学的偉業により特許を2件取得し、特殊なフィルターの設計により厳しい天候状況においても観測を可能にする技術を開発中だ。

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