



ラワン・ラドワン
ジェッダ:1970年に国連総会で「先進国は国民総所得(GNI)の0.7%以上を途上国に援助する」という決議が採択されて以来、世界の人道・開発援助のニーズは増え続ける一方である。
国連が発行する最新の「グローバル人道支援概観」では、2億3,500万人の人々が支援を必要としており、不確実な未来に直面していること、新型コロナウイルス感染症の大流行が「1930年代以来の深刻な世界不況」を引き起こしたことが指摘されている。
しかし、明るい面を見れば、過去20年間に多くの援助会議や募金活動が行われ、援助提供者の数も着実に増加している。サウジアラビアが単独で提供している人道的・開発的援助は、明確な政策、効率性、その透明性と相まって、外国の援助が被援助国の人々の生活に大きな影響を与えていることを物語っている。
2020年、国連人道問題調整事務所(OCHA)の財務追跡サービスによると、サウジアラビアは世界で最も寛大なドナー国の6位で、世界の人道援助の3%を提供している。2021年10月には、王国は同ランキングの第3位ドナー国となり、人道支援に占める割合は5%に上昇した。
しかし、サウジアラビアの支援は長い間メディアに取り上げられることもなく、国際的な支援プラットフォームで目立つこともなかった。また、サウジアラビアの文化や、イスラム教では慈善活動の際に相手の尊厳を守るという習慣があるため、サウジアラビア自身も海外援助に関するデータや報告書を公表せず、目立たないようにしていた経緯もある。
しかし、今回『世界はなぜサウジアラビアとのパートナーシップを必要としているのか:サウジアラビアのグローバルな人道的・開発的援助について(英題: Why the World Needs Partnership with Saudi Arabia: Saudi Arabia’s Global Humanitarian and Development Aid)』と題した研究論文が発表され、サウジアラビアが世界の開発途上国に提供している支援が、開発途上国の幸福に大きく貢献していることを明らかにした。
キングファイサル・イスラム研究・学習センターが発行したこの論文では、サウジアラビアの人道的・開発的アジェンダが詳細に示されており、援助のさまざまなカテゴリー、国や地域ごと援助の分散先、対象となるセクター、そして時系列での発展の様子が紹介されている。また、国連の持続可能な開発目標の達成に向けた途上国への支援、新型コロナウイルスパンデミックへの対応、国内の難民への支援などについても紹介している。
この論文を執筆したサルマン国王人道援助救援センター(KSRelief)の研究・情報部長であるマーキ・ハミッド氏によると、サウジアラビアの主要な開発援助機関であるサウジ開発基金は、保健、農業、灌漑、電力、交通などのさまざまな分野のプロジェクトに、長年にわたり多くの国で惜しみなく資金を提供してきたという。
「サウジアラビアの開発援助は、補助金や通常より低い金利での融資(Concessional loans)の形で提供されており、多くの中低所得国の中央銀行に予算や預金として多額の資金を提供してきました」と同氏はアラブニュースに語った。「このような予算支援や預金は、これら被援助国における経済の強化と向上に貢献しています」
論文が指摘するように、サウジアラビアは、自然災害に見舞われた途上国や、緊急支援を必要としている国に援助を行ってきた歴史がある。同国は、2018年にKSReliefが代表に就任した経済協力開発機構開発援助委員会(OECD-DAC)の参加メンバーとなるまで、長年にわたって援助データを同委員会に集計データとして報告していた。
KSReliefは、OCHA財務追跡サービス、OECD-DAC、国際援助透明性イニシアチブを介した海外援助を進めるために、王国のさまざまな援助機関からデータの収集を始めている。
現在、サウジアラビアは、いくつかのカテゴリーの政府開発援助を提供している。例として、緊急時に行われる人道的援助、開発途上国の経済的・社会的福祉の向上を目的とする開発援助、モスクの建設やハッジ巡礼の支援など、文化的・宗教的な目的で行われる慈善的援助が挙げられる。
サウジのODAは、資金援助または物品やサービスの形で、被援助国の組織や国に提供される。これには、食糧援助、車両、物流サポート、医療・医薬用品、医療機器などが含まれる。援助は、サウジ開発基金、KSRelief、および2018年に国王令によって設立された統一データベース「サウジ援助プラットフォーム」に登録された他のドナー団体を通じて行われる。
さらに、サウジアラビアは、各国政府や国内外のNGOを通じて二国間で、または関係する国連機関や赤十字・赤新月社などの機関を通じて多国間で援助を提供している。
戦略的パートナーシップを通じて、国連創設メンバーであるサウジアラビアは、さまざまな国連機関に対し総額52億ドルの資金援助を行っており、国際連合世界食糧計画(WFP)に関しては最も多い19億ドル、次いで国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)には9億5550万ドルの援助を行っている。
「サウジアラビアは、援助を受ける資格のある国や機関に対し、積極的なニーズ評価に基づいて二国間援助を行っています。人道的・開発的なプロジェクトは慎重に協議され、資金提供が決定される前にリスク評価が行われます」とハミッド氏はアラブニュースに語っている。
「また、資金は明確な成果に連動し、分割して支払われます。援助が受益者に届き、意図した通りの効果を上げていることを確認するために、プロジェクトの実施期間中にモニタリングと評価が行われます」
サウジアラビアの数多くの実績の中でも、2015年の、2030年までに貧困を少なくとも50%削減することを主な目的とした国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の策定において重要な役割を果たしたことは特筆に値するだろう。2016年から2021年10月までに、王国は低・中所得国が国連の持続可能な開発目標を達成できるよう、240.4億ドルを提供している。
国連開発計画(UNDP)の2016年の報告書によると、2005年から2014年の間にサウジアラビアが提供した援助は、ODA/GNIの1.9%を占め、単一のドナー国が達成した割合の最高記録を更新した。
2020年11月、サウジアラビアはリヤドで開催されたG20サミットの議長国として、新型コロナウイルスのパンデミックに国際的に対応するため、ドナー国を動員し、まとまった資金を約束させることに成功した。ハミッド氏の報告書によると、王国のコロナウイルスに関する国際対応の費用はKSReliefが管理する8億2,500万ドル以上にのぼり、33カ国を対象に、ワクチン、医薬品、医療機器などが提供された。
さらに、世界保健機関(WHO)の「連帯基金」に1,000万ドル、ワクチン研究に約3億ドルの資金援助を行っている。
これらの記録を見ると、建国以来、イスラムの教えに基づいて政策を行ってきたサウジアラビアは、1975年〜2021年の46年以上にわたり、総額657億ドルの援助を通じて、150カ国以上の国々の幸福に大きく貢献してきたといえる。
「王国は突然現れた新しいドナー国ではありません。これまでも世界の多くの国に多大な人道支援や開発支援を行ってきました」とハミッド氏は述べ、サウジアラビアの援助供与国としての突出した貢献を評価した。
「とはいえ、近年では、サウジアラビアが提供する援助は体系的に記録され、国際的な援助プラットフォームに登録されています。また、パンデミック対策やイエメン、ソマリア、シリア、パレスチナなどの国への緊急支援も大幅に増加しています。これらの要因が、サウジアラビアの世界的な人道的ランキングの上昇につながっているのでしょう」
最後となるが、同論文によると、サウジアラビアは世界で6番目に多くの難民を抱えている。近年、サウジアラビアが受け入れている107万人の難民は、同国の人口の5.5%に相当する。
難民を特別なキャンプに収容する他国とは異なり、サウジアラビアは難民を訪問者とみなし、入国料の免除、子どもの医療費や教育費の無料化、就労許可などを与えている。