
ヌール・ヌガリ
ジェッダ:ジョー・バイデン米大統領がサウジ指導部との会談のためにジェッダに到着した数時間後、同国のアーディル・アル・ジュベイル外務担当国務大臣は、今回の訪問は大成功だと語った。
アル・ジュベイル大臣は、米大統領一行とサウジ高官らの会談が詰め込まれた1日を終えた金曜日の夜、アラブニュースによる多岐にわたるインタビューに応じ、歴史的関係の重要性を強調した。
「歴代の米大統領によるサウジアラビアは全て成功であり、歴代のサウジ国王や皇太子殿下による米国訪問も全て成功だ」と、同大臣はアラブニュースに語る。
「両国は80年来の同盟国でありパートナーだ。多大な利害関係があり、多大な課題に両国が協力して取り組んでいる」
ジョー・バイデン大統領を歓迎するサルマン国王。2022年7月15日、アル・サラム宮殿。(SPA)
バイデン大統領の訪問は「関係の重要性、米国および世界の平和・安全保障にとってのサウジアラビアの重要性を明確に象徴している」という。
金曜日の午後、サルマン国王との首脳会談の直後、バイデン大統領とその顧問らは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下および閣僚らとの実務協議に望み、今後の関係の基調を定めた。
同大臣は、協力の例を多く挙げながらこう語る。「両国は、エネルギー安全保障、気候変動対策、食糧不足に苦しむ国々への食料安全保障の提供などに関して非常に緊密に連携している。世界的な供給の物流を確保するためにも協力している」
同大臣は、技術・インフラ・医療サービスに関する新たな協力の枠組みを特に熱心に強調する。
「両国は、5Gや6Gによる接続性の強化・向上や宇宙探査に共同で取り組んでいる」という。「また、パンデミックへの対処においても協力している。将来のパンデミックに効果的に対処するための仕組みを確保しようとしている」
このような協力の精神は外交や人道支援の領域にも当てはまると、同大臣は強調する。
「両国は、イランへの対抗とイラク支援、またシリア、レバノン、イスラエル、パレスチナ、イエメン、アフリカの角、リビア、G5サヘル諸国の危機への対処など、政治的・軍事的問題に関して連携している」
「両国はアフガニスタンと協力して、同国がテロリストの避難場所にならないように、また普通の男女が普通の生活を送れる普通の国になれるように取り組んでいる」
しかし、以上のような共通の利益や課題という域を超えて、80年前に確立されたサウジと米国の関係の強さは、その長さだけでなく両国が共有する原則にかかっているという。
「これからの80年を見据えて、どのような道を進みたいのかというビジョンにしっかりと基づいた関係を確保したい」
バイデン大統領のサウジアラビア訪問に先立って懐疑的な意見が多く上がった理由について、同大臣はこう語る。「懐疑的な人々は芝居やドラマを求めているのだろう。しかし、現実には両国の関係は非常に強固だ。この関係は非常に重要であり、ますます成長・強化を続けている」
実際、米国とサウジの指導者による相互訪問は確立された伝統だ。
「アブドルアジーズ国王の時代から、米大統領とサウジ国王の首脳会談が行われてきた。2015年のキャンプ・デービッドでのバラク・オバマ大統領(当時)との会議から始まり、米大統領と湾岸協力会議(GCC)諸国との首脳会議も行われている」
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下と会談するジョー・バイデン大統領。(SPA)
「2017年にはトランプ大統領(当時)との会談が行われた。明日(土曜日)にはバイデン大統領との会談がある。だからなぜ人々が懐疑的なことを言うのか分からない。それは彼らの問題だ。私が言えるのは、現実には、先ほど話したような両国が連携する課題や分野は全て途切れること無く続いてきたということだ」
金曜日の重要な進展の一つは、サウジアラビアが初めてイスラエル発着の商用航空便に対し領空を開放する決定をしたことだ。バイデン大統領は、テルアビブ近郊のベン・グリオン空港からジェッダのキング・アブドルアジーズ国際空港に飛んだ初めての米大統領となった。
アル・ジュベイル大臣は、バイデン大統領が金曜日に「歴史的」と評したこの動きについて、サウジアラビアを地域の移動ハブにすることを目指す同国の社会経済改革計画「ビジョン2030」に沿ったものだと述べた。
「ビジョン2030の一環として、サウジアラビアは経済多角化を目指している」という。「多角化を目指す分野は、娯楽、エンターテインメント、輸送などだ」
「サウジアラビアはアジアとアフリカと欧州の間にあり、自然にハブとなる位置にある。世界の海上交通の14%は紅海を通っており、サウジアラビアはこれらの三大陸を結ぶ航空輸送ハブになり得る」
「1944年のシカゴ条約に従って第三国が我が国の領空を飛行する権利を持たない限り、ハブになることは不可能だ。サウジアラビアは、海運のハブとなり得るのと同様に、地理的位置によって本来的に自然に航空ハブになるだろう」
実際、サウジアラビアが国際スポーツイベントの世界的な開催地になることを望むのであれば、「全世界に向けて開かれなかればならないし、イベントへの参加から一部の国を排除することはできない」という。
「これは全て、我が国がスポーツや娯楽イベントの開催地になることや、三大陸を結ぶ輸送・物流のハブを目指すことの一環だ」
ウクライナ侵攻とそれに伴う欧米のロシア産石油・天然ガス禁輸が世界的なエネルギー価格高騰をもたらしていることから、バイデン大統領のサウジアラビア到着に先立って、石油生産の問題が首脳会談の主だった議題になると予想されていた。
「サウジアラビアの石油政策は、エネルギー市場が十分に供給され不足が発生しないように、市場におけるバランスを保とうとしてきた」とアル・ジュベイル大臣は言う。
「地政学的要因あるいは石炭や天然ガスなど他のエネルギー価格の変動のために石油市場において価格変動が起こる場合については、それらの価格が高騰して原油価格を吊り上げたとしても、他の要因と同様に原油不足には何の関係もない」
「米国におけるガソリン価格には精製能力の不足が関わっている。米国は40年以上前から製油所を作っていないが、それは規制環境と関係がある。その規制環境のために、米国では地域によって多くの異なるガソリン混合が行われており、そのために米国市場へのガソリン供給が複雑になっている」
したがって、「米国への原油供給を増やしても問題を軽減できない。しかし、世界情勢に目を戻すと、サウジアラビアの政策は市場に十分な供給ができるようにOPECおよびOPECプラスで取り組むことであり、我々はそれを行ってきた」
「バイデン政権は我々が行ってきたことを認識していると思う。昨年だけを見ても、サウジアラビアは定期的に石油を増産できている」
バイデン大統領一行とムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下およびサウジ高官らの実務協議では、数多くの合意が結ばれた。2022年7月15日。(ロイター)
市場の需要を満たすため、サウジアラビアは「市場のニーズの評価とそれに応じた決定を継続していく」
アル・ジュベイル大臣は、1990年に米国がサダム・フセインのイラクを隣国クウェートから撃退するために軍を派遣したことなど、サウジアラビアと米国の歴史的友好関係に言及しながら、同じ安全保障協力の原則が現在にも当てはまると言う。
「米国は湾岸およびサウジアラビアの安全保障に関与している。フランクリン・D・ルーズベルト元大統領が故アブドルアジーズ国王と会談した時からそうだ」
「歴代の米大統領はそれを明言してきた。また、1990年に50万人の米軍を展開し、クウェートを侵略したイラクによる侵攻からサウジアラビアを守り、サダム・フセインをクウェートから追い出し同国を解放したことに、それは非常に明確に示された」
「サウジアラビアおよび湾岸に50万人の米軍兵士(を送ったことは)、湾岸の安全保障への米国の関与を示す強力な証(だった)。米国はサウジアラビアおよび大半の湾岸諸国への防衛装備の最大の供給国であり、地域において最大のプレゼンスを示している」
「共同演習も行っている。共同で技術移転も行っている。我が国およびGCC諸国と米国による共同作戦も行っている。地域の安全保障を強化するために、それらを全て拡大・深化・拡張しようと努めている。問題は現在進行形であり、今後も増え続けるだろう」
しかし同大臣は、サウジアラビアは防衛や抑止力をできる限り自国でまかなう独立国家であると強調する。
「サウジアラビアは、軍に最適な装備に応じて様々な供給元から防衛装備を獲得することに積極的だ」
「我々は米国と広範囲にわたるプログラムを行っている。『我々』とはGCCのことだ。これらのプログラムには、弾道ミサイル防衛システム、地雷除去作戦、特殊部隊の活動が含まれる」
「これらの多くは2015年のキャンプ・デービッドでの米・GCC首脳会議後に設立・開始されたことが分かるだろう。同会議後に全ての項目を記載した最終共同声明が出されたが、それらは全て現在進行中だ」