
ジョージ・チャールズ・ダーレイ
リヤド:サウジアラビアはどこまでも続く砂丘やギザギザの山脈で有名だが、あまり知られていない、まったく異なる環境も存在する。涼しく、静かで、万華鏡のように美しく、動物や植物がたくさん生息している場所である。
サウジアラビアのダイバーが急増し、世界的なスキューバダイビングの目的地として急浮上しており、サウジアラビア人のダイバーも同時に急増している。
しかし、その素晴らしさと美しさゆえに、適切な訓練を受けていないダイビングは危険であり、命にかかわることもある。
ボディースーツ、酸素ボンベ、呼吸レギュレーター、マスク、フィンなどのすべての器材を揃えるにはSR(サウジアラビア・リヤル)4,000以上を要するが、これらはすべて近年設立された数多くのダイビングセンターでレンタルすることができる。
カリフォルニアに本部を置くPADI(プロフェッショナル・アソシエーション・オブ・ダイビング・インストラクター)は、訓練と認定試験を行う世界的組織であり、サウジアラビアでは数十年にわたり活動している。
リヤドを拠点に20年のダイビング経験を持つPADIのマスターインストラクターであるラウル・アウセメストレ氏は、アラブニュースに対して、認定プロセスをこう説明した。
「最初は理論的な側面である、知識の確認です」。「これは9つの章から構成されており、最後にテストがあります。テストは実地の場合もオンラインの場合もあります」
「ここまで来たら、プールでの限定水域訓練に進む資格が与えられます。ダイビング器材の組み立て方、呼吸レギュレーターの使用方法、器材の取り外し方など、合計24のスキルを学びます」
「限定水域での訓練を終えると、西海岸のジェッダか東部のアルホバールで、実際のオープンウォーター訓練とテストに臨みます。2日間で4回のダイビングを行い、水深60フィート以下で24のスキルを練習します」
「ある深さに何分間滞在できるかという計算式があり、減圧症(潜水病ともいう)を避けるためにそれを守らなければなりません。あまり深く潜りすぎて、上昇が速すぎると、血液や脳に気泡が生じ、命にかかわる危険性があるのです。最近では、腕時計のように腕にはめるダイブコンピューターで自動計算するようになっています」
訓練および資格取得の費用は、合計でSR2,000~SR3,000(500~750米ドル)だ。
ボディースーツ、酸素ボンベ、呼吸レギュレーター、マスク、フィンなどのすべての器材を揃えるにはSR 4,000以上を要するが、これらはすべて近年設立された数多くのダイビングセンターでレンタルすることができる。
近年の社会改革により、サウジアラビアの女性もダイビングができるようになったことで、同国のダイビングに関する状況は一変した。これは、ヌーラ氏にとって大きなメリットとなった(彼女は、名字を名乗ることを拒否している)。
「家族のうち数人がダイバーの資格を持っていたので、子どもの頃からスキューバダイビングに魅了されていました」とヌーラ氏はアラブニュースに語った。「さらに、私は水泳やシュノーケリングを楽しんでいたので、ダイビングをするのは自然な流れでした」
「2016年にダイビングの資格を取得しましたが、数年前までは、兄や父、夫などの男性の同伴者がいなければボートに乗ることができませんでした。なので、私は陸上からダイビングをするしかできませんでした。もっと沖の方に出て沈船や珊瑚礁を見に行きたかったので、かなり不満でした。でも今は、自由に行動できます」
「ダイバーとして最も素晴らしかった経験は、ジェッダでのことでした。バディと一緒に潜り、水中には他に誰もいませんでした。ちょうどタコの繁殖期で、初めてタコの生態を見ることができました。ダンスをしたり、色を変えたりする2匹のタコを見たのです。タコが自分の体を使って行う素敵なショーを目撃した、ユニークな瞬間でした」
これまでのところ、サウジアラビアは、エジプトや地中海沿岸諸国の海岸を傷つけてきたマスツーリズムを免れており、沿岸海域には透明度が高く、手つかずの海洋環境が多く残されている。
紅海沿岸のヤンブー周辺やさらに南部のファラサン諸島の岩礁は特に見事で、色とりどりのサンゴや、サメ(ほとんど穏やかである)、カサゴ、マンタ、そして時にはクジラなどの豊富な海洋生物が生息している。
同国のダイビングにはさらに重大な目的もある。現在、ある海洋考古学者のチームが、陶磁器の食器約2,000個を積んでいた18世紀の難破船を紅海で発掘中である。アウセメストレ氏は、地理学者のグループを率いてヨルダンとの国境付近の海中の地形とそこに生息する生物の調査を行っている。
しかし、海中における人間の活動が活発化すれば、海洋生物の繊細な生態系に損害を与え、サウジアラビアを著名なダイビングスポットたらしめた特徴自体が危険に晒される虞がある。
メディレン・オカンポ氏は、母国フィリピンからサウジアラビアに来たときは泳ぎ方も知らなかったが、その後、リヤドに拠点を置くRDAダイブネット(PADI認定トレーニング機関)でのダイビングコーディネーターになった。オカンポ氏は、サウジアラビアで予測されている観光客急増によって、海洋生態系が危険に晒される可能性があると警鐘を鳴らしている。
オカンポ氏は、「珊瑚は、触れたり踏んだりするだけで壊れる可能性があるということを、初心者ダイバーの多くは理解していません」とアラブニュースに語った。「どの種類のサウジアラビア観光業にとっても将来の展望は明るいですが、海を大切にすることも提唱しなければなりません」
ノーラ氏は、「ダイビングへの関心が高まるのは素晴らしいことです」。「しかし私は、海洋環境がより一層守られることも望んでいます」と語った。
彼女は、ダイビングに興味を持つ人が増加していることを「美しいこと」だと表現し、このことは水中世界の保護という点でも役立っていると述べた。
「スキューバダイバーは水中世界に投資しているのです」と語った。