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アラブ人を対象とした調査で、日本の湾岸諸国のエネルギー資源への依存度が過小評価されていることが判明

2019年6月19日、湾岸地域のフジャイラ首長国の港の沖合を航行中の日本の石油タンカーKokuka Courageous号を、アメリカ海軍(NAVCENT)による案内ツアー中に撮影した写真(AFP)
2019年6月19日、湾岸地域のフジャイラ首長国の港の沖合を航行中の日本の石油タンカーKokuka Courageous号を、アメリカ海軍(NAVCENT)による案内ツアー中に撮影した写真(AFP)
28 Oct 2019 04:10:37 GMT9
  • YouGovはアラブ世界の18ヶ国で日本に関する意識調査を実施
  • 日本は1970年代からエネルギー資源を湾岸協力会議のメンバー国に高度に依存

カリーヌ・マレク、ドバイ

YouGovの調査で、アラブ人たちは一般的に、日本が輸入する石油に占める湾岸協力会議(GCC)メンバー国産の割合を過小評価していることが判明した。

アラブ世界の3,033人の回答者のうち、53%は日本は石油の40%を湾岸協力会議のメンバー国から輸入していると思うと回答した。実際は85%が湾岸協力会議のメンバー国からの輸入であり、その数字を正確に答えられたのは30%にとどまった。

経済大国での生活における石油と天然ガスの役割に関する知識が一般に浸透していないことを反映する数字だと専門家は言う。

「エネルギー安全保障に関する中東と北アフリカ(MENA)やその周辺でのほとんどのメディアの報道には… 2つの主要顧客、中国とインドしか出てきません」と、Verocyでディレクターを務めるシリル・ウィデルスホーヴェン氏は言う。Verocyはオランダのコンサルタント会社で、中東での投資、インフラリスク、及びチャンスに関して助言を行なっている。日本がかなり忘れられているのは、アラブの産油国にとって、市場として極めて成熟しているからだと同氏は付け加える。

日本との関係は1950年代まで遡ることができ、日本の石油・天然ガス関連製品の需要はほとんど変動がない。

「エネルギー資源や石油関連製品の需要は特に成長しているわけではありません」とウィデルスホーヴェン氏は言う。「日本のエネルギー需要がニュースになるのは、日本の原子力発電所で何かが起きて、その他のエネルギー源の需要が高まる時だけです」

日本と湾岸協力会議のメンバー国の間のエネルギー面での関係についてアラブ人たちの見方を変えるには、長期的戦略による結びつきや経済面での結びつきに関して、より詳しくメディアが報じる必要があるとウィデルスホーヴェン氏は言う。

アラブ首長国連邦のArkad Advisorsで業務執行社員を務めるムスタファ・ブーサイド氏は、アラブ世界では昔から、日本との石油の年間取引額を知っているのは、エネルギー市場で現役で働いている人たちのみだったと言う。その原因の1つとして、日本は特段外交上で話題になることがなく、世界的な貿易の場で目立っているわけでもないことを挙げた。

「ニュースをそれとなく読んでいるだけという人のほとんどは、アメリカがエネルギーの最大の消費国であると考え、1970年代の歴史背景や当時の貿易停止などにも鑑み、アメリカがアラブ世界の最大の顧客だと思っているのです」と同氏は『Arab News』に対して語る。

「2018年には、日本は原油の83%を湾岸協力会議のメンバー国から輸入しました。量にすれば約9億2500万バレルです」と同氏は言う。

「1970年代まで遡って、供給関係はこのような規模で推移してきました。この数字を見れば、日本は湾岸地域からの安定的な原油の供給に依存していること、そして日本は戦略的な買い手国として重要であることがわかります」

Gulf State Analyticsで上級顧問を務めるテオドール・カラシック博士は、極東に輸出される石油の行き先を正しく知らないまま知ったつもりになっている節があるという。

「ひょっとするとすぐ横に中国が大きく横たわっているので、日本のエネルギー需要の規模に関して間違った解釈がされているのかもしれません」と同博士は『Arab News』に語る。

「エネルギーの輸入と消費の実態に関して、そして日本とその他の東アジアの国々の差に関して、よりよく理解しなければなりません」

日本は、1945年から1952年の現代化の時期、その後1952年から1973年の高度経済成長の時期に、湾岸地域からの輸入量を大きく増やした。その後1973-1975年のオイルショックの時に初めて減少に転じた。

その後は多角化の時代となり、地域の様々な危機に対処する時期が1989年まで続きました。1989年からは、日本は不況に直面するようになりました。

「これらの時期を通して、石油のため、日本はエネルギーをめぐる他国との関係を注意深く調整しなければならない時もありました。湾岸地域の主要国とアメリカの間でバランスを取っていたのです」とカラシック博士は言う。

「日本がサウジアラビアとアラブ首長国連邦のエネルギー資源への依存関係をうまく管理できているのは、日本のアプローチにはその他の要因も含まれるからです。その要因として例えば、この3国間でエネルギーとその行く末に関して深い共通理解を形成できていることが挙げられます」

石油輸出国機構(OPEC)では、日本は少なくとも2030年まではその石油の需要のほとんどを湾岸協力会議のメンバー国からの輸入で満たすだろうと予測している。

サウジアラビアは2018年に、約276億ドルの石油を日本に輸出した。これは、同国の原油輸出量の約12%に当たる。同国は、毎年日本が必要とする石油の50%近くを供給するという、日本から見た最大の石油輸入元としての位置付けをキープしている。

「昨年、アラブ首長国連邦は183億ドルの原油を日本に輸出しました。両国間の貿易関係がさらに際立った形です」とブーサイド氏は言う。

「湾岸協力会議のメンバー国と日本の関係には、過去数十年の間に軸が形成されています。日本では、湾岸協力会議のメンバー国は信頼できる供給元であるとの共通理解がしっかりと出来上がっています。また逆に湾岸協力会議のメンバー国は、日本は一切の不要な地政学的な緊張の心配がない長期的な顧客と位置付けているのです」

カラシック博士は、この関係はポスト石油時代においては、天然ガスやその他の形のエネルギーを中心に展開されるようになるだろうと予測している。

「今後、エネルギー消費がよりクリーンな代替エネルギーに向かうのと同時に、国際経済の秩序は今後は自然と中国を向くようになります。そのためすでに、再生可能エネルギー分野で緊密な連携関係の構築が目指されています」と同氏は言う。

ウィデルスホーヴェン氏によると、今後の動向は日本国内での風力、太陽光、およびその他のエネルギー源への移行の進み具合によるため、予測するのは難しいとのことだ。

「同時に、日本がアジアの頂点に立つ時代は終わりました。中国、そして潜在的にはインドが今後数十年で、湾岸協力会議のメンバー国のエネルギー・石油関連の大きな顧客となり、取引額は日本を大きく超えるでしょう」と同氏は付け加える。

「湾岸協力会議は、オーストラリアなどの他のエネルギー資源産出国も同国(日本)を狙っているという状況にも対処しなければなりません」

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