
フロリダ州ケープカナベラル:火星を周回する探査機から、「赤い惑星」の小さな衛星のかつてないほど鮮明な写真が送られてきた。
アラブ首長国連邦(UAE)の探査機「アマル」がダイモスの100km圏内を飛行し、間近で撮影した写真が24日に公開された。
探査機「アマル」(アラビア語で「希望」)が撮影した写真の一部には火星も写り込んでおり、一石二鳥の成果が得られた。アマルは、約50年間でダイモスに最も接近した探査機となった。
多数のクレーターに覆われた、この奇妙な形の衛星(大きさは15×12×12 km)の裏側は調査が進んでいないが、アマルはそちら側の観測にも成功した。
もう1つの衛星フォボスは大きさがダイモスの2倍近くあり、軌道も火星に近い(6000kmほど)ため、理解が進んでいる。フォボスは太陽系の中で惑星に最も近い衛星だ。
ダイモスの周回軌道は2万3000kmあるが、これはアマルの内側の軌道に近い。「だからこそ、ダイモスの観測はとても魅力的なアイデアだったのです」と、ミッションの主任科学者であるヘッサ・アル・マトロシ氏は言う。
「これまで、ほとんどの注目はフォボスに注がれていました。今度はダイモスの番です!」と彼女はメールに記している。
UAE宇宙庁に勤務するアル・マトロシ氏や他の科学者は、今回得られた画像を見ると、「ダイモスは遥か以前に火星軌道に捉えられた小惑星である」という従来の有力説が揺らぐと語る。
彼らの説明では、ダイモスの起源は火星にあり、より大きな衛星か火星自体から誕生したと考えられるという。
こうした知見は24日、ウィーンで開かれた欧州地球科学連合の総会で発表された。アル・マトロシ氏によると、アマルは今年もダイモス付近を航行し続けるが、3月10日のような距離まで近づくことはない。
1977年、米航空宇宙局(NASA)の「バイキング2」がダイモスの30km圏内を通過した。それ以降、ダイモスを撮影した探査機は他にもあるが、アマルに比べてかなり遠い距離だった。
アマルは2020年7月19日に火星に向けて飛び立った。この日付は、アポロ11号のニール・アームストロング氏とバズ・オルドリン氏による、人類史上初の月面着陸の50周年と1日違いだった。
AP