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歌舞伎の子どもたち:日本の伝統演劇の子どもたち

この写真は2023年5月1日に、東京の歌舞伎座で稽古中の10歳の日仏歌舞伎俳優、寺嶋眞秀君を撮影したものである。(AFP)
この写真は2023年5月1日に、東京の歌舞伎座で稽古中の10歳の日仏歌舞伎俳優、寺嶋眞秀君を撮影したものである。(AFP)
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03 May 2023 08:05:54 GMT9
03 May 2023 08:05:54 GMT9

東京:日本の多くの10歳の子どもたちと同じように、寺嶋眞秀君も野球とテレビゲームを楽しんでいる。しかし最近は、歌舞伎の初舞台に向けて、剣術や振り付け、扇子踊りの指導も受けている。

今週、東京の伝統芸能で有名な歌舞伎座で、日仏にルーツを持つ寺嶋君が新しい芸名「尾上眞秀」で初舞台を踏み、喝采を浴びた。

数百年の歴史を持つ日本の歌舞伎役者たちの中で、寺嶋君はほんの一握りの子供たちの仲間入りをしたのである。

「練習は大変です」と穏やかな口調の寺嶋君は、放課後に何時間も練習することのない友達を羨ましく思うこともあるという。

「振り付けやセリフを間違えたり、殺陣のシーンの動きを忘れたりしないように気をつけなければなりません」

学校と歌舞伎の両立は「大変」だと彼は続けた。「でも、頑張ります」

歌舞伎の歴史の起源は日本で一連の内戦が終結し、商人階級が誕生した17世紀に遡る。

踊りと演劇と音楽が融合した演劇で、役者はたいてい豪華な衣装、かつら、厚化粧をまとって、精巧なセットで古い言葉で演技をする。

寺嶋君は、最初は少女に変装している若武者を演じる今月の公演に向けて、懸命に準備を進めている。

ある日の午後は、経験豊かな俳優振付師の指導のもと、木刀で一騎討ちを行い、その後、歌舞伎の踊りで使われる装飾性の高い扇子の扱い方を学んだ。

「主役を演じているので、たくさん演技ができます…ワクワクしています」と、リハーサル用にカジュアルなストライプの「浴衣」を着た寺嶋君は殺陣の練習を終えて語った。

早稲田大学で歌舞伎研究を専門としている児玉竜一教授は、他の古典芸能と同様、「歌舞伎は子どもの頃からの稽古が必要」と語る。

「彼らは伝統的な技術を身につけ、ある種の伝統的な雰囲気を醸し出すことを学びます」と児玉教授は語った。

「そうやって彼らは(歌舞伎の)世界で生きているのです」

子役の歌舞伎役者の多くがそうであるように、寺嶋君もまた、一族の伝統を受け継いでいる。祖父の七代目尾上菊五郎は、国から「人間国宝」に認定されているほどの歌舞伎界のスターである。

しかし、歌舞伎の血筋は母・寺島しのぶに受け継がれている。しのぶ氏は女性であったため、父の跡を継ぐ資格はなかった。

「もちろん心配はしました、というのも、(歌舞伎役者は)父親を見て育ち、父親をカッコイイと思い、父親のようになりたいと思うからです」としのぶ氏はAFPに語った。

「私にはその役割を果たすことができません」

彼女自身、映画やテレビの女優として活躍しており、息子には早くから歌舞伎の世界を伝えていた。

2歳になっても、小さな寺嶋君は昼も夜も歌舞伎座で過ごすことを喜んでいたという。
「普通、幼い子は飽きるものですが、彼は動こうとしませんでした」

今週、初めて正式な芸名で公演を行ったが(歌舞伎役者にとって人生の節目となる行事であり、正式なデビューとされる)寺嶋君は4歳の頃から、これまで何度か舞台に立ったことがある。

歌舞伎はもともと男女で演じられたが、風紀を乱すとして幕府に禁止され、女性の役が男性に引き継がれるようになり、現在に至っている。

現代では高尚な芸術として評価されているが、「歌舞伎は常に庶民階級の娯楽であった」と児玉教授は語った。

しかし、現在では観客の年齢層が上がっており、観劇のチケットは4,000円から20,000円(30ドルから150ドル)程度で販売されている。

歌舞伎役者のすべてが、古くからの演劇界の家系というわけではない。しかし、かつては優秀な人材が集まったものの、第二次世界大戦後に西洋の芸術が台頭し、歌舞伎は衰退した、と児玉教授は語った。

そのため、歌舞伎の家系では、息子たちが父親の跡を継ぎ、スターとしての血筋を受け継いでいくことが重要であった。

寺嶋君は、現在12歳以下の歌舞伎役者10人(全員、歌舞伎の家柄)のうちの1人で、二重国籍者として初めて正式に歌舞伎役者として認められた。

「大げさな言い方かもしれませんが、彼は歴史を作っているんです」と寺嶋君の母・寺島しのぶ氏は語った。

「今がとても大切な瞬間だと思います」

1878年に歌舞伎の家系に養子に出された俳優の市村羽左衛門は、父親がフランス系アメリカ人であったと言われているが、公式には複数のルーツを持っていたことは認められてはいない。

寺嶋君の母とアートディレクターである父は、息子には比較的普通の子ども時代を過ごし、大人になってから自分の道を選んでほしいと考えている。

「彼がタクシードライバーになりたくても、私は応援します」と、父親のローラン・グナシア氏は言った。

フランス人であるグナシア氏は、妻・寺島しのぶ氏との結婚前は「歌舞伎が何であるか知らなかった」と告白しているが、今では息子に「大きな誇りを感じている」のだという。

そしてグナシア氏は、寺嶋君が日仏にルーツを持つことを理由に、閉鎖的な歌舞伎界から拒絶されるのではないかと心配したことはないという。

「彼らは舞台の世界の人たちです。彼らは…アーティストであるがゆえに、オープンマインドを持っているのです」とグナシア氏は語った。

今のところ、寺嶋君の夢は歌舞伎役者で、フランスで公演して祖父のように有名になりたいという。

「目指しているものがあります」と彼は言った。

AFP

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