トロント:スタジオジブリの伝説的監督、宮崎駿氏(82)はまだ鉛筆を置かない。8日、日本の同アニメーションスタジオの幹部が、トロント国際映画祭のオープニングで待望の長編映画『君たちはどう生きるか』が公開された後に語った。
今回の映画祭には出席しなかった宮崎氏は、共同創設したスタジオジブリで『千と千尋の神隠し』、『となりのトトロ』、『ハウルの動く城』など、人気の手描きアニメ作品を手掛けてきた世界的監督である。
8日、ジブリの国際配給担当ヴァイスプレジデントの西岡純一氏は、ロイターの取材に対し、「この20年間、映画を作り終えるときまって『辞める』と言っていましたが、今回は引退については何も言いませんでした」と話した。
「まだ具体的なことは何も決まっていませんが、新しいものを作りたいと意欲を見せています」と西岡氏は言った。宮崎氏は毎日スタジオに出社しているという。
最新作は7月にごくひっそりと日本公開された。秘密めいた謎の映画に仕立てようとしたスタジオの試みで、宣伝素材がまったくと言っていいほど公開されなかったからだ。
西岡氏によると、映画を宣伝しないというアイデアは、プロデューサーの鈴木敏夫氏が、子どもの頃に映画を見に行ったときの体験を取り入れたいという意向によるものだ。日本でのこれまでの観客動員数は500万人を超えているという。
トロント映画祭で日本のアニメ映画がオープニングを飾ったのは初めてで、映画マニアやファンが同作を見ようと列をなした。
「素晴らしい映画でした。ものすごく期待していましたが、それをはるかに超えていました」。7日のプレミア上映に出席したガブリエル・マス氏は言った。
この映画は、宮崎氏が子どもの頃に読んだ1937年刊行の吉野源三郎氏の小説『君たちはどう生きるか』の脚色である。第2次世界大戦中に母親を失い、非現実の世界に足を踏み入れた11歳の牧眞人の旅の記録だ。
宮崎氏自身が戦後に感じたこと、母親の喪失に向き合った経験も映画の中に活かされている。
2013年の『風立ちぬ』公開から10年ぶりの復帰でアニメファンを喜ばせた宮崎氏は、自分がどのように生きてきたのか、そして人は生き方をどう考えるべきかについて若い世代にメッセージを伝えようとしている。
「本作は個人的な映画であり、彼(宮崎氏)がどのように生きたのか、どのように生きるべきだったのかを描いて、観客に『君たちはどう生きるか』と問いを投げかけています」と西岡氏は述べた。
ロイター