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インタビュー:DAMACプロパティーズでは、仕事は家族内問題

(ルイス・グラニェナによるイラスト)
(ルイス・グラニェナによるイラスト)
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24 Feb 2020 08:02:34 GMT9
24 Feb 2020 08:02:34 GMT9

フランク・ケイン

DAMACはフルタイムの仕事です。我々は家族経営ビジネスであるため、仕事を完全に休むということがないからです。

中東における大手の家族経営ビジネスの世界では、後継問題は往々にして切迫した問題である

20年近く前にフセイン・サジワニ氏が設立して事業を営む不動産開発会社、DAMACプロパティーズの場合は、この問題についての選択肢がたくさんあるようにみえる。

フセイン氏の4人の子供たちはみなDAMACで何らかの任務に就いている。しかし長男である28歳のアリ氏が、アラブ首長国連邦の大手不動産グループのひとつである資産何十億ドル余りのDAMACグループの、確実な後継者といえそうだ。

「私も兄弟も、幼い頃からDAMACで訓練されました」とアリ氏はアラブニュースに語った。「私はわずか12歳か13歳でバランスシートを読んだり、夏休みに「仮想上の」有価証券一覧を管理したりしていました。そのトレーニングが、私の一番の助けになっていると思います」

彼は、現在はDAMACの事業部長であるが、アラブ首長国連邦および国際ビジネスの戦略全般を担当するとともに、成長維持のためには欠かせないと会社が考えるデジタル戦略の責任者でもある。

つまり、問題を抱えるアラブ首長国連邦の不動産セクターについて、彼の見解はとりわけ的を射ているはずだ。ドバイの不動産市場はDAMACのビジネスの中核であり、同社の名称は長年、アラブ首長国連邦が自国の特徴としてきた「アイコニックなライフスタイル開発」の同義語であった。

需要が落ちているにも関わらず華々しい事業が次々と着手されてきたため、ここ数年で不動産価格は下落しており、より広範囲の経済低迷につながるとの懸念が高まっている。

経済専門家たちの間では、ドバイ経済における負債の増加や、不動産価格の下落が金融業界に及ぼす影響などについて、憂慮する声もある。

「私は、今がドバイの底であり、エキスポ2020でいくらか改善されるだろうと考えています」とアリ氏は述べた。「ホテルセクターや小売りセクターはエキスポで持ち直すでしょうし、多くの観光客も流入するでしょう。そのうちのいくらかがここに留まることを考えてくれれば、不動産価格の上昇にもつながります」

ドバイ政府は、幾分かは不動産低迷への対応策として、より長期の居住ビザを発行したり、不動産関連料金をいくつか廃止するなど、不動産セクターに海外投資を呼び込むための奨励政策を導入してきた。

「それでも単刀直入に言えば、需要は弱く、かつてのようではありません。そして供給があまりにも多過ぎます。私は大学で経済学を学びましたが、すべては需要と供給に尽きるのです」とアリ氏は述べた。

市場改善への「一番の促進剤」は、新たな開発の着手件数を制限することであり、昨年、新規の開発や事業着手を規制すべく発足した高等不動産委員会に、彼はいくらか楽観できる要因があると見ている。

「あれは良いニュースです」と彼は言い、同委員会が監視する政府管轄不動産セクターによる新規の事業着手頻度が落ちてきていることを既に実感していると付け加えた。

とはいえ、アラブ首長国連邦の不動産市場には、人口動態の変化に起因する根本的な課題がいくつか存在しているとアリ氏は言う。

「循環的変化があるのです。我々は自社の中核顧客にそれを見ています。小売りセクターや飲食セクターが落ち込むと、それが一時解雇や出国を引き起こし、ホテルの稼働率にも影響を及ぼします」と彼は続けた。

「ドバイ国際金融センターのような場所でそれを見ることができます。レストランは増えていますが、中核顧客は変化しています。彼らがモール内をバックパックとバナナを持参して歩き回るのであれば、これまでのような消費力にはなりません」

しかしそれとは逆に、不動産開発業者にとって、ミッドマーケット分野に向けたビジネス機会はまだあると彼は述べた。

アリ氏は、DAMACが先頃10年来で初めての損益を発表することになったこの難局ではあっても、ドバイ市場の根本であるインフラ、インターネット接続、セキュリティーなどの分野は総じて盤石であり、それが今一度この地域の不動産投資を呼び込む磁力となるものと信じている。

DAMACは長年、ラグジュアリーなプロジェクトの販売を目的とした注目を集めるイベント、気前の良い奨励政策、包括的なメディア戦略など、新規開発事業の華々しい着手で知られていた。

それらの手法はデジタル時代において変化し、アリ氏の現在の職務の大半は、この新たな環境をDAMADが活用できるように適切なデジタルマーケティング戦略を導入することである。デジタル戦略を適切に導入すべく国際的なコンサルタントを雇い入れてきた。

「それは世代をリードするということに尽きます。最小コストでいかに正しい人物をターゲットとするかということです。データは新たな富だと言われます。しかしそれを適切に活用する能力が必要です。そこにこそ未来があります」と彼は述べた。

DAMACは、新たなデータを日々マーケティングミックスに追加し、既存顧客や潜在顧客の情報の「データレイク」を構築してきた。

しかし国内市場が厳しいのであれば、世界のほかの地域に機会はたくさんあると彼は言う。そのひとつがサウジアラビアだ。

「今後5年のサウジアラビアには、ムハンマド・ビン・サルマン王太子の指揮下で適切な要因がすべて揃っています。国を推進し、それを海外投資家に開放する明確なビジョンをもつリーダーがいるのですから」とアリ氏は述べた。

DAMACは既にサウジ市場について詳しい。とりわけサウジアラビア国民には、ドバイの不動産を購入して、アラブ首長国連邦を訪れた際のアパート式ホテルや他の施設としてそれを利用する人々が多いからだ。

その傾向は、サウジ国内で娯楽機会が増加することを考えればある程度落ち込むと予想しながらも、サウジアラビアのリヤドやジッダの既存開発事業に加わる機会があると彼は見る。

「我々は、開発業者、当局者、土地所有者など、サウジアラビアの人々とは常に話をしています。市場を積極的に探るために定期的にサウジを訪れています」と彼は言った。

欧州では、DAMACの拡張先として引き続きロンドンに焦点を向けている。テムズ川の南のナイン・エルムズの大規模開発が昨年最高潮に達し、既に約60%が売却済みだ。 

ブレグジットや、ロンドンのさらに高級な市場のいくつかでは新規計画が規制されていることにも阻止されることなく、アリ氏は、セントラル・ロンドンのその他の新規開発に目を向けている。

「ブレグジットの最大の問題は不確実性でした。今はそれももう終わり、感謝します。ブレグジットに関係なく、ロンドンはロンドン、世界の首都です」とアリ氏は言う。パリやベルリンといった欧州の「玄関都市」も考慮に入れている。

他の国際市場もDAMACの興味の対象だ。DAMACグループは現在、モルディブのラグーンを3カ所開発しており、そこに100軒ほど建設している豪華な別荘の管理について、「国際レベルの運営業者」と交渉の最中だ。

インド洋においても、セーシェル共和国の島の開発について、予備設計が合意に達している。

「我々の高級リゾート事業については好調に伸びています」とアリ氏は述べたが、バリの事業など、他に潜在している開発事業についてのコメントは避けた。「それはまだ確定していませんから」

レバノンの経済状況は「ベストではない」と彼はしつつも、オマーンとベイルートで大きなプロジェクトがあるという。

そして米国だ。アラブ首長国連邦にあるトランプ・オーガナイゼーション・ゴルフコースの唯一の運営者であるDAMACは、米国の上層部と良好な関係にあり、フセイン氏もアリ氏も、トランプ米大統領と交流しているところを写真に撮影されている。しかしそれは必ずしも、米国でDAMACプロジェクトが直ぐに実現することを意味しない。

「米国は遠く離れており、それが物流面でネックになります。必要なのは適切な機会であり、また自分たちが何を提供できるかのという問題もあります」とアリ氏は述べ、高い州税や連邦税への懸念にも触れた。

しかしDAMACグループは間もなく、トロントでのカナダ市場におけるジョイントベンチャーを公表する。同グループの北米不動産分野での初めてのベンチャー事業であり、これは大西洋の両側での利害関係の増大を示すものでもあり得る。

DAMAC以外では、車を高速で運転したり海でダイビングをするなどしてリラックスするほか、アリ氏は、アラブ首長国連邦のスタートアップ業界にも関わりを持ってきた。輸送、施設管理、接客などさまざまな業種の小規模企業だ。

「自分がグループ外で何かできると証明したかったのです。DAMACにはトップクラスの起業家精神がありますが、それと同時に会社組織的な雰囲気もあります。私は、会社組織的な環境の外で何かを成し遂げたいと思いました」と彼は述べた。

「しかし、今ではもっとDAMCに重点を置いています。これはフルタイムの仕事です。家族経営ビジネスであるため、我々は仕事を完全に休むということがないからです」と付け加えた。

「我々は夕食をいっしょにとりながらビジネスについて話し合います。週末には集まって仕事の話をします。過去に、夕食の場でビジネスの話はしないでおこうとみんなで決めたこともありますが、そうすると長い沈黙になってしまうのです。我々は子供の頃からこのようにしてきたのですから」

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