

香港:より深刻かつ大規模な戦争が起こる可能性が増々高まっているという複数の兆候が有り、10月19日のアジア市場は、イスラエル・ハマス危機が中東において一層広範な紛争へと拡大し得るとの懸念から急落した。
ガザ地区への地上侵攻に先立ってベンヤミン・ネタニヤフ首相が兵力の大規模増強を進める中、イランは先制攻撃の可能性を警告し、イスラエルに対する石油禁輸を求めた。
ジョー・バイデン米大統領は、連帯を改めて強調するために10月18日にイスラエルを訪問し、米国の全面的なイスラエル支援の表明を目的とした、この危機についてのテレビ演説を同日に行う予定だった。
しかし、ガザ地区の病院に対する死傷者多数となった攻撃を受けて、ヨルダンのアブドッラー2世国王やパレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領はバイデン米大統領との会談を取りやめた。
惨劇となったこの攻撃については、イスラエルとハマスの双方が互いの責任であると主張している。バイデン米大統領はイスラエルの側に立っている。こうした緊張の高まりを受けて、イランが支援するレバノンのヒズボラ運動は、この日を「怒りの日」とすることを呼びかけた。
他方、イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相は、「イスラム諸国によるシオニスト政権への即時かつ完全な禁輸、イスラエル政権に対する石油の禁輸」を求めた。
アミラブドラヒアン外相は、また、この危機について話し合うためにサウジアラビアで行われたイスラム協力機構の首脳会議におけるコメントの中で、イスラム諸国に対して自国に駐在するイスラエル大使を追放することを求めた。
ラボバンクのジェーン・フォーリー氏は、「病院爆破事件についての最新の報道により、状況がさらに激化する可能性が高まっています」と述べた。
「明らかな激化があれば、市場ではリスク回避の動きが強くなると考えられます」と、フォーリー氏は付け加えた。
ニューヨーク市場の3つの主要指数はすべて赤字で終了し、アジア市場もその後を追った。香港や東京、シドニー、ソウル、シンガポールの各市場では1%以上の下落となった。
上海やマニラ、ジャカルタ、ウェリントンの各市場でも損失が出た。
「中東での戦争の拡大を回避するための外交的解決を図る余地は無くなりつつあるようです」と、RBCキャピタル・マーケッツのヘリマ・クロフト氏は語った。
「特にイスラエルがハマスを壊滅させるための地上攻勢に全力を挙げようとしていることから、地域規模での危機が最も可能性の高い展開だと考えられます」
全面戦争となる可能性があるとの見方により、10月18日の原油価格は押し上げられたものの、ベネズエラ産原油に対する制裁の一部を一時的に停止するという米国政府の決定により価格上昇は抑制され、アジア市場ではいずれの取引でも価格は小幅安となった。
米連邦準備理事会(FRB)が再び利上げを行うか、少なくとも長期にわたって利上げを継続するのではないかとの懸念から、トレーダーらの間ではリスク回避指向が強まった。
こうした状況により米10年国債の利回りは、2007年以来始めて4.9%を上回り、取引立会場における不安感はさらに高まり、FRBのジェローム・パウエル議長が同日にニューヨーク経済クラブで行う講演会に注目が集まった。
これは、もしFRBがインフレ率を目標とする2%に戻したいのであれば借入コストを「暫時」抑制し続ける必要があるとの、ニューヨーク連邦準備銀行のジョン・ウィリアムズ総裁による発言を受けてのことである。
そして、FRBのクリストファー・ウォーラー理事は、「政策金利の方向性において決定的な措置を講じる前に、経済がどのように変化するのかを精査し理解する時間が私たちにはあると確信しています。今日の時点で判断をすることは拙速です」と述べた。
豪コモンウェルス銀行のキャロル・キング氏は、「金利についての『長期にわたる上昇』というメッセージが繰り返されることで、米国の利回りが現在の水準かそれ以上で維持され、米ドルの水準も保たれ続ける可能性があります」と語った。
AFP