
ロンドン/東京:ソフトバンクは約4億7300万ユーロ(5億1400万ドル)を出資し、キュービックテレコムの株式51.0%を取得する。ダブリンを本拠とするコネクテッドカー向け技術の提供元であるキュービックテレコムにとっては、アジアの自動車メーカーとの繋がりが広がる形となる。
テック投資大手ソフトバンクグループの子会社であるソフトバンクとキュービックテレコムは5日、「戦略的グローバルパートナーシップを結び、ソフトウェア定義型コネクテッドカーの未来を切り拓いていきます」と発表した。
この取引において、キュービックテレコムの評価額は9億ユーロ超となっている。
「『Beyond Japan』の戦略的成長イニシアチブの下、キュービックテレコムと提携し、急成長するコネクティビティ市場に本格参入できることを大変うれしく思います」ソフトバンク最高経営責任者(CEO)の宮川潤一氏は声明でそう述べた。
今回の投資取引完了後も、バリー・ネーピア氏がキュービックテレコムのCEOおよび取締役を続投する。
ソフトバンクから3人がキュービックテレコムの取締役に就任し、残りの取締役3人はフォルクスワーゲングループのソフトウェア部門であるカリアドおよびクアルコムをはじめとする既存株主からの人選が維持される。
インターネットに接続できるコネクテッドカーは増えており、今後電気自動車(EV)への移行によって飛躍的に増加するだろう。EVの本質は車輪の付いたコンピューターだ。これにより、自動車メーカーはワイヤレスで自動車をアップグレードできるようになり、「ソフトウェア定義型車両」という業界用語が生まれた。
コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2030年までに世界で販売される新車の95%がコネクテッドカーになると推定している。
さらにこの業界は、高度な地図や燃費機能など、車内サービスから収益を生み出すための新たな方法も模索している。
ネーピア氏はロイター通信に対し、キュービックテレコムのソフトウェアはこうしたことを実現させるためのパイプラインとなり、自動車メーカーに190カ国のモバイルネットワークへのアクセスをもたらすと語る。このソフトウェアはインフォテイメント機能へのアクセスを可能にし、自動車メーカーはどの機能が利用されているかを把握することで、提供する機能を調整していくことができるとネーピア氏は言う。
キュービックテレコムのコネクテッドカーは現在1700万台を超えており、同社は組み立て段階から一生涯に渡って自動車のアップデートを行うことができるとネーピア氏は話す。
「私たちは製造ラインで車をアップデートし、輸送時の船の中でアップデートし、車がどんな場所に行き着いてもアップデートすることができます」ネーピア氏はそう語る。
「ソフトバンクとの関係を築けたことで、アジアのメーカーとスムーズに繋がることができるようになります。これはアイルランドの1企業が独力で実現させるのは難しいことです」ネーピア氏はそう付け加えた。
この取引は、2018年の上場以来ソフトバンクにとって最大の海外投資となる。だが、親会社のソフトバンクグループとその投資手段であるビジョン・ファンドが行ってきたいくつかの取引に比べれば、はるかに穏当なものと言える。
同社らは、広範に渡るソフトバンクグループ全体で「機会を活かして」いきたいと述べた。
キュービックテレコムはソフトバンクの連結子会社となり、取引は2024年上半期中に完了予定となっている。
今回の取引ではキュービックテレコムのリード・ファイナンシャル・アドバイザーをジェフリーズが担当し、ソフトバンクのリード・ファイナンシャル・アドバイザーをPJTパートナーズが務めた。
ロイター