
東京:東京の何百万人もの人々が資本主義の “現場 “で今日も一日働いているとき、有名なマルクス主義哲学者である斎藤幸平氏と彼の友人たちは、濁った渓流から石を除去している。
資本主義が気候変動の根本原因であり、地球を救うためには成長を追い求めるのをやめるべきだという斎藤氏の核心的主張は、世界第4位の経済大国である日本、特に若者の心を打った。
この東京大学の准教授は、最新刊が50万部も売れ、先月はザ・キラーズがヘッドライナーを務めた音楽フェスティバル「フジロック」で講演した。
彼は「脱成長」を求める世界的な運動の顔となっている。この言葉は「ある種、人々を驚かせる」ものだと、斎藤氏は首都の西郊にある集団所有の土地の手入れをしながらAFPに語った。
「特にアメリカでは、人々を納得させる最善の方法ではないのかもしれません」と37歳の彼は言う。彼のヒット作『スローダウン:脱成長宣言』は今年英語で出版された。
しかし、この言葉を使うことは、環境破壊につながっている広く受け入れられている経済原則に「挑発、挑戦」するひとつの方法だと彼は言う。
斎藤氏は日本共産党員ではなく、トップダウンのソ連型システムを否定している。
その代わりに彼は、自然とのつながりを取り戻し、民主的に運営されるコミュニティを構築する試みである「コモンフォレスト・ジャパン」のようなプロジェクトが導く草の根の変化を信じている。
「左派やリベラル、進歩的な側がもっと魅力的な未来像を提示しない限り……右派のポピュリズムはこの危機につけ込むだろう」と斎藤氏は語った。
彼はテレビニュースのトークショーのレギュラーゲストであり、最近では、オリンピックの「行き過ぎた商業主義」と、イスラエルの参加とロシアの除外をめぐる「二重基準」を理由に、オリンピックをボイコットすると発言して話題となった。
斎藤氏は、二酸化炭素排出量を削減し、過剰な消費と長時間労働から脱却することで、より少ないモノしか生産されない世界を実現しようと訴えており、日本の現状に幻滅している人々の共感を呼んでいる。
日本版『スローダウン』は、パンデミックによって多くの産業が行き詰まった2020年に発表された。
「マルクスは時代遅れで」、脱成長は「ある種の否定的な独裁」に聞こえるかもしれない。
とはいえ、1980年代の好景気をのち、成長の追求にもかかわらず、大人になった斎藤氏の世代は、数十年にわたる経済停滞を見てきた。
そのため、「この種の議論は、特に、古いタイプの日本の奇跡をこれ以上崇拝しない若者にとっては、魅力的なのです」
電気自動車や炭素回収、核融合といった新技術は、常に利益を追求するシステムでは気候問題を解決できないと斎藤氏は言う。
自家用ジェット機や「過剰な公共広告」を禁止し、「もっと根本的な富裕税を導入する」ことが、その代わりに出発点となりうる。
「しかし、脱成長とは、単にすべてを捨てて質素に暮らすことではないことも強調したい」
「人々に将来への不安を抱かせる資本主義の “欠乏感 “に挑戦することなのです。彼らはそのストレスを買い物やその他の集中的な消費で克服しようとしますが、それは逆に “地球を破壊する “のです」
山の中腹で、スリムで丸い眼鏡をかけた哲学者とその妻、2人の子供たち、そして20人ほどの人々が、ミミズや野生のキノコが生息する小川の土手を登っていった。
彼らは石や枝を動かして水が流れやすくし、地滑りのリスクを減らそうとした。
彼のアイデアは、「ほとんど資本の論理に支配されている」人々には奇想天外に聞こえるかもしれないが、斉藤はこの森林プロジェクトが「貪欲な行動がない」社会を例証していると言う。
東京で育った斎藤氏は、ハイキングはあまり好きではなく、両親も政治的な人ではなかった。
彼は10代の頃、ノーム・チョムスキーのような社会主義思想家に出会い、彼の「アメリカ帝国主義批判」に興味を持った。それから数年後、2011年の日本の津波と福島原発事故は、「人間と自然の持続不可能な関係」を思い起こさせた。
ベルリンで博士号を取得する間、斎藤氏は晩年のマルクスのノートからエコロジーについての考え方を調査した。
脱成長の考え方は1970年代に遡るが、最近では『Less Is More: 脱成長はいかに世界を救うか?』経済人類学者のジェイソン・ヒッケルのものがある。
斎藤氏は『スローダウン』の中で、今のところ彼の考えが適用されるのは、気候変動に不釣り合いな責任を負っている世界の富裕国だけであることを明らかにしている。
哲学者である彼は、地方政治を鋭く観察しているにもかかわらず、どの程度の新しいインフラが多すぎるのかといった厄介な決断は、自分にはできないと言う。
「私は政治家に向いていない。政治とは妥協の産物ですから」
AFP